脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

スペクタクル溢れた90分 ~ACL 準決勝1stleg VS浦和~

2008年10月08日 | 脚で語るガンバ大阪
 G大阪が浦和をホーム万博で迎えた2008AFCアジアチャンピオンズリーグ準決勝1stlegは1-1のドローで終了。次戦の22日アウェイ2ndlegで、G大阪は“勝利”が必須になった。

 

 退屈とは無縁のスペクタクルに富んだ90分。スタジアムは興奮の坩堝と化した。万博記念競技場を真っ二つに割った青と赤の光景は、試合前からただならぬ熱気を放ち、それはウィークデイの光景には見えなかった。

 
 対面するアウェイゴール裏はぎっしりと浦和サポーターで埋め尽くされた

 G大阪は2トップに播戸と山崎を起用。鹿島戦での動きがチームにフィットしていなかったロニーはサブに。復帰したルーカスはベンチにも入らなかった。中盤からDFラインはここ数試合の陣容と変わらず。“ホームでの得点”という目標が明確な中で、どれだけ浦和の堅守をこじ開けられるかが課題となった。

 開始早々の6分に遠藤のFKから播戸が振り向きざまにシュートを放つが、浦和DF阿部の体を張ったクリアに遭う。この播戸が前線でポストとして機能したG大阪はリズムが良かった。浦和のエジミウソン、高原が下がってボールを持ったところを遠藤、明神、橋本がプレスをかけて効果的にボールを奪えるシーンも幾つか見られる。その2トップよりも、左右に神出鬼没のポンテ、そして左サイドで積極的に仕掛けてくる相馬をどうケアしていくかがG大阪の生命線になった。

 
 セットプレーでも要警戒のポンテ 最も怖い選手だ

 
 先制点のお膳立ては22分、この相馬の突破から

 22分に試合は動いた。浦和の右CKをG大阪がクリアしたところを坪井が相馬に繋ぐ。左サイドでボールを持った相馬はそのまま対面の二川を抜きにかかり、ドリブルで中に切れ込んで角度の無い地点からシュート。これを明神が体に当ててクリアしたが、そのこぼれ球に反応して細貝の放った針の穴を通すようなミドルシュートによって先制点を奪われた。G大阪に“アウェイゴール”を献上した重圧がのしかかる。その直後には橋本が不用意にボールをポンテに奪われてゴールを狙われるシーンも見られ、明らかにG大阪は浮き足立ってしまった。先制点を奪った浦和は守備意識を深め、その包囲網をG大阪はなかなか崩すことができない。25分の遠藤のFKは惜しくもサイドネットに逸れてしまう。

 
 驚異的な浦和サポーターのプレッシャーを受けながらも・・・

 
 25分、遠藤のFKがゴールを狙うが惜しくも決まらず

 ポゼッションは圧倒的にG大阪に分があった。低い位置でマイボールにして攻撃に繋げる浦和に対して、鹿島戦から好調の守備陣がしっかりと対応して、これを高い位置でブロックし続ける。最早浦和の2トップに脅威は感じなかった。そして、ロニー起用時よりもダイレクトパスが見られた前線が、浦和の厚い守備を崩してくれるだろうという期待感を持って後半に臨むことはできた。

 
 競り合う播戸 前線を活性化させた点では存在感は十分

 
 ハーフタイムも浦和サポーターの大きな声援は止むことがない

 後半も攻め立てるG大阪、守る浦和の構図は変わらない。よりポゼッションと攻撃の推進力を上げるべく54分に二川に代えて佐々木が投入される。その直後には明神がミドルシュートをクロスバーに当て、そのこぼれ球を遠藤が繋いで加地が再びミドルシュートを試みるなど更に攻撃は加速。そのプレーで得たCKから播戸が惜しいシュートを放つなど、チャンスを再三掴んでいくG大阪。浦和は執念の守備を見せるが、CKを与えたり、不用意なファウルで前半の相馬に続き、細貝もノックアウトステージ2枚目の警告を受けるなど焦りも確かに見えていた。

 
 高原を追い詰める橋本と下平

 加地が足を痛めるアクシデントがあったが、復帰したばかりの安田理が右SBを見事に穴埋めする。65分には佐々木のスルーパスから山崎が振り向きざまに惜しいシュートを放つ。その山崎に代わって、FWの切り札ミネイロが投入され、G大阪は死に物狂いで1点を追う。
 すると、81分にエリア内で突破を試みた播戸が相馬に倒されてファウル。これで得たPKを名手遠藤が難なく決めて、待望の同点弾が転がり込む。熱気で蒸し返す万博。2ndlegに大きな望みを繋ぐこの1点を返したのは大きかった。その後も最後まで惜しいチャンスを演じるG大阪だったが、追加点は奪えず結局1-1のまま試合は終了。至極のマッチアップは22日の2ndlegに続くこととなった。

 
 81分、遠藤がGK都築の逆を突いて同点のPKを沈める

 双方のストロングポイントを余すことなくぶつけ合うこの両者の対決。最高潮の盛り上がりを見せた90分間は、おそらく国内で今季最高のサッカーが披露されていただろう。東西リーグリーダーの意地とプライドのぶつかり合いは“アジアの頂点”という栄誉が懸かっている。果たして2ndlegにはどんなドラマが待っているのだろう。

 勝つのはG大阪だ。必ず勝ちたい。アウェイでの“絶対勝利”が求められる彼らに今日のスペクタクルの続きを是非見せて欲しい。

 
 

狙うはアジア王座 ~ACL準決勝を前に~

2008年10月07日 | 脚で語るガンバ大阪
 万博グラウンドを囲む報道陣の数が明日の試合の話題性を物語る。日本勢同士の対決となったAFCアジアチャンピオンズリーグ準決勝1stleg。国内最大のライバルでもある浦和をホーム万博に迎え、G大阪は明日、今季最大の大一番前半戦に挑む。

 

 チームに頼れる男が帰ってきた。ルーカスがこの日は練習に参加し、明日の出番を窺わせた。そして右足甲の負傷で戦列を離れていた安田理も元気な姿を見せ、明日の出場が濃厚かと思われる。土曜日の鹿島戦で負傷交代したGK藤ヶ谷も順調にメニューをこなし、特に重傷でない様子をアピールした。

 
 ケガの心配は無さそうなGK藤ヶ谷

 
 いつも通り、試合前日はミニゲームがメイン 雰囲気は明るい

 
 ルーカスが鮮やかなヘディングを見せ復調をアピール

 
 隠し玉であるこの男(ミネイロ)も明日はベンチ入りが確実だ

 
 ACLといえば彼の勝負強さは注目 山崎のゴールは再び見られるか

 
 ロニーの活躍もアジア王座を目指すチームには不可欠

 
 監督の信頼が厚い寺田 スタメンか途中出場か 試合の行方を握る

 
 明日はこの男が燃えないわけがない FW播戸竜二

 
 マエストロの遠藤を中心に燃える79年世代組 チームの核だ

 
 よっしゃ!明日は頼んだぞ!!

 

こちらも敵を知れ! 全社1回戦 VS 松本山雅FCプレビュー

2008年10月06日 | 脚で語る奈良クラブ
 昨日、奈良県リーグプレーオフに勝利し、府県リーグ決勝大会への切符を掴んだ奈良クラブ。約半年に渡って続いた奈良県内の戦いはここで終了。ここからは県内を飛び出して、関西、全国レベルの相手と対峙が続く。

 府県リーグ決勝大会に進出する他府県のチーム状況は、また機会を改めて書くとして(現在の他府県の状況はこちらを是非参照あれ → 関西他府県リーグの状況 ブログ「My Heart, My Soul, SHIGA FC」より)、今回は、直近の試合でもある全国社会人サッカー選手権1回戦(10月18日)で対戦することになった松本山雅FCについて。

 以前もここで書いたように、正直、奈良クラブにとっては非常に厳しい組み合わせになった。今季の北信越リーグで4位に終わった松本山雅FCは、JFL昇格を懸けた地域リーグ決勝大会進出のためにも全社枠(優勝及び準優勝チームが11月の地域リーグ決勝大会へ進出)を全力で狙いに来るはず。奈良クラブに勝利すれば、2回戦では順当に行けば沖縄かりゆしFC(今季九州リーグ優勝チーム、1回戦はtonan前橋と対戦)と当たるために彼らのモチベーションは高いはずだ。
 今季の松本山雅のリーグ戦績は7勝3分4敗で勝点24の4位。しかし、北信越リーグの戦績からは何も推測できない。何せ奈良クラブにとっては、未知のレベルの対戦と表現してもいいほどの強豪。Jリーグ経験者を数多く揃える陣容は、レベルの高い北信越リーグの充実度を窺わせる。

 最も注意が必要なのは、FW柿本倫明。名前を聞いてピンと来る方も多いかもしれない。かつて湘南やC大阪で活躍した選手で、J1で26試合出場1得点、J2では129試合出場28得点を誇るストライカーだ。松本山雅入団1年目の今季も12試合出場で12得点3アシスト。184cmという長身を活かしたヘディングシュートを持ち味に、ゴール前でのその決定力は恐ろしい。そして、2トップのコンビを組むのはFW吉田賢太。Jでは京都や水戸で活躍し、JFLの栃木SCのエースとしてJFLでは66試合出場27得点という選手だ。
 この2人にアシスト役として君臨するのが、中盤の大西康平。今季は7アシストでアシストランキングの8位に顔を出している。加えて、J1大分からJFLの鳥取を経てレンタル移籍加入している川田和宏がチーム屈指のレフティーとして試合を組み立てる。
 守備陣では松本山雅の象徴的存在でもある経験豊富な三本菅崇を中心に、主将でもある矢畑智裕を軸に基本は3バックを形成している。この2人もJ1経験者で奈良クラブの攻撃陣からすればかなり手強い。
 チーム在籍25人中の11人において全所属歴がJリーグないしJFLからという屈指の陣容だ。例え主力を温存してターンオーバー編成で臨まれても苦戦は必至だろう。

 ただ、今季の奈良クラブの戦いぶりを振り返るならば、全社関西1回戦のアイン食品戦が最も試合展開として理想的だ。まず、中盤と前線を含めた全員守備の意識を徹底させ、どれだけミスを少なくカウンターを仕掛けられるか。サイドハーフはもちろんのこと、FW陣も細心の集中力が必要とされる。チャンスは逃すことができない。格上のアイン食品戦も苦戦必至の中、前半で2点を叩き込み勝負を大方決めることができた。ただ、あの時とこの試合ではレベルがかけ離れている。全員の運動量をフルに活かしたプレッシングの徹底にまずは依拠するしかないだろう。
 こちらもJリーグ経験者に加え、関西リーグ経験者の力をどれだけ発揮できるか。ベストメンバー時の連携は日増しに良くなっているだけに、サッカーの不確定要素にあとはすがるしかないのだが。

 全社の開幕まであと2週間を切った。松本からはサポーターバスツアーが催行されるようだし、2週に渡って奈良まで撮影クルーを派遣していた松本山雅の本気度は怖いほどこちらにも伝わっている。現時点でこれ以上ない経験を積める場に感謝しながら、奈良クラブもベストなサッカーで立ち向かうのみだ。この一戦の経験は必ず12月の府県決勝大会で生きてくるはずなのだから。

 
 全国社会人サッカー選手権本大会 1回戦
 11:00キックオフ @スポアイランド聖籠

 奈良クラブ VS 松本山雅FC

奈良クラブ、府県リーグ決勝大会へ ~プレーオフ VS JST~

2008年10月05日 | 脚で語る奈良クラブ
奈良県リーグ上位プレーオフ
10:00キックオフ @葛城市新町グラウンド

●JST(奈良県リーグ1位) 0-4 奈良クラブ(奈良県リーグ2位)○

得点
5分金城
22分金城
65分石田
67分松野正

<メンバー>
GK31松石
DF21中村(70分=3上西)、2梶村(74分=4秋本)、11松野智、20上林
MF24東、5杉田、18和阪(71分=16河合)、13金城(79分=39谷口)
FW7石田、10松野正(75分=14後山)

 

 負傷中の矢部を除き、ほぼベストの布陣で重要な一戦に臨んだ奈良クラブ。県リーグ1位のJSTを4-0という大差で下し、リーグでの引き分けのリベンジを遂げると共に、12月に行われる府県リーグ決勝大会への進出を決めた。これで関西リーグ昇格へ向けた土俵に上がったことになる。敗れたJSTは11月9日に奈良産業大学信貴山グラウンドで行われる第3プレーオフへ。対戦相手はポベニルカシハラ。勝利チームが奈良クラブと共に府県リーグ決勝大会へ臨むことになる。

 “必勝”を懸けた大一番のこの日は、右SBに中村、CBを梶村とマルチロールの松野智が務め、左SBに上林。ボランチにゲームキャプテンを務めた杉田と和阪、そして左右に金城と東の両アタッカー。2トップは石田と松野正という布陣。

 

 開始から試合は奈良クラブペース。5分に左サイドから松野正がハーフボレー気味のクロスを入れたところに合わせた金城がシュートを決めて先制する。思いがけない開始直後の先制点にチームは勢いに乗った。その後も圧倒的に奈良クラブが試合を支配し、和阪、石田のチャンスメイクから松野正がゴールを狙っていく。22分には攻撃参加した中村が強烈なミドルシュートを放つと、こぼれたところに金城が詰めて追加点のゴールを挙げる。時折JSTが仕掛けるカウンター攻撃も梶村、上林を中心とした守備陣がしっかり対応。攻守に危なげない試合運びで2-0で前半を折り返す。

 
 JSTの右サイドをほぼシャットアウトする好守を見せたDF上林

 
 前半2得点の大活躍 金城のゴールで試合の行方は決まった

 後半の開始早々、エリア内で金城が相手選手を倒してしまう痛恨のファウルでPKを献上。1度は決められたものの、相手選手がキックの前にエリアへ進入したとして、やり直しの判定。その2度目は守護神松石がファインセーブでストップし、チームをさらに盛り上げた。
 65分には左サイドでボールを受けた松野正がエリア中央へ絶妙のクロス。これに石田が頭で合わせて3点目を奪取。すると、67分には右サイドをドリブルで突破した東が中央へクロスを通すと、これを松野正が落ち着いて決めて完全に試合を決めた。
 ラスト10分で続々と控え選手を投入していく余裕の采配も見せた奈良クラブ。その後も終了までしっかりゲームをクロージングし、実質の奈良県リーグ制覇を成し遂げた。

 
 後半早々のPKをファインセーブしたGK松石 流れをJSTに傾けさせない

 
 最早チームに欠かせない2人のクラッキ(名手) 石田と和阪

 
 守備陣を統率した松野智と梶村 梶村の気合いの坊主頭が映える

 
 矢部と並びチームのバンディエラ(象徴的存在)松野正は1得点2アシスト

 これまでで最多の観客の方々が試合を見守った中、素晴らしい試合展開を見せてくれた奈良クラブ。チームが立ち上がった3月から約7ヶ月で最高の結果を県内では勝ち取ることができた。これで1歩関西リーグ昇格への道は前に進んだ。12月から関西各地で行われる過酷な戦いに勝ち抜けば来季からフィールドは広がる。全社関西をも勝ち抜いた今季の戦いぶりは、時に波こそあったが、ベスト布陣を維持できれば、おそらくその実力は関西リーグでも十分通用するはず。その試金石的挑戦としても、府県リーグ決勝大会を結果にこだわって戦い抜きたいものだ。

 
 苦しかった2008年度県リーグの集大成は最高の歓喜に姿を変えた

 
 代表、監督含め何人かの選手が宙に舞う (写真はこの日1得点の石田)
 矢部が持つのはサポーターのゲーフラ
 

 

鹿島を崩せず、鹿島に崩されず ~28節 VS 鹿島~

2008年10月04日 | 脚で語るガンバ大阪
 実力伯仲の好ゲームだった。リーグ制覇のためにも双方負けられない試合は、0-0のスコアレスドローに終わった。G大阪にとっては、この鹿島戦の勝敗がリーグ上位に顔を出すためにも重要だっただけに勝っておきたかったが、鹿島を崩すことはできなかった。

 

 両者前半からペースを分け合った。ミスの少ない試合に緊張感が漲る。G大阪はロニーと山崎の2トップが鹿島の厚い守備の前にスペースを見出せず苦しんだ。特にロニーは前半からボールに絡もうと中盤まで下がってくる傾向が顕著に。前線で張り続ける山崎との関係も乏しく、チャンスはほとんど作れない。ポゼッションの起点になる遠藤と二川が左右にボールを散らしてゲームを組み立てるが、シュートで終わる場面がなかなか見られなかった。カバーリング能力に長けた明神が出場停止明けで復帰したこともあって、橋本と共に集中して危険なエリアをケアし続けたことはDF陣にもかなり心強いものだった。

 
 司令塔の遠藤と前線でチャンスを狙った山崎

 
 日本代表にも選出された興梠を山口がマークする

 8分に山口のバックミスをマルキーニョスにさらわれ、あわや失点のピンチを迎えるが、相手のミスに助けられる。しかし、飛び出したGK藤ヶ谷がマルキーニョスと交錯した際に負傷していたのだ。痛みを堪えながら藤ヶ谷はその後プレーを続けた。
 16分に遠藤の左CKは鹿島GK曽ヶ端が触れず、ファーサイドに流れる。ここで瞬時にボールに反応して足を出したのが中澤だったが、かろうじて足を当てたボールは無情にもバーを直撃。決定的な場面だったが、得点を奪うことができない。
 その後、鹿島が徐々に攻撃の形を作り、30分に中後、34分に本山がシュートを放つなどG大阪DF陣にとっては集中の必要な展開が続いた。だが、37分に藤ヶ谷が途中交代。前回の鹿島戦に続き、またもや松代が途中出場し、これで貴重な交代カードを1枚使ってしまったのはアンラッキーだった。

 
 16分のチャンス 遠藤のCKはファーサイドに抜けていくが・・・

 
 両チームの攻撃のキーマン 二川と本山

 
 藤ヶ谷は前半終盤に無念の負傷退場

 後半、機能しないロニーを諦め、ここ数試合で調子の良い寺田を投入。中盤をさらに活性化させ、2列目からのチャンスメイクと得点を期待させた。54分に二川、58分に明神がミドルシュートを狙うが枠を捉えられず。やはり1トップにしたことによるエリア内までの攻撃の厚みが物足りない。62分にエリア内まで迫った際の攻撃の形が物語るように、MFが1人ボールを持った際に両MFは開いており、クロスまでの形は容易に作ることができるのだが、前線にスペースが無く、パスがほとんど足下に繋がるだけという場面が目立った。ボランチも含めた守備陣が素早いプレスで鹿島の攻撃を良く凌いでいただけに、何とか拮抗を打開できる1点が早い時間に欲しかった。
 71分に播戸を投入し、エリア内に向かってFWが飛び出せる形が作れるようになったが、鹿島の守備陣が集中力を切らさない。最後まで白熱した攻防は、両チームの守備が光ったこともあって、スコアレスドローで終えることになった。

 
 59分明神がミドルシュートを狙う

 
 播戸は途中出場で攻撃の形を作ったが・・・

 
 78分には橋本がゴールを狙うもシュートは枠外へ

 ここ数試合で、ロニーがチームに慣れてきたせいか、ボールを求めすぎる嫌いが見え、中盤との連携が良くない。遠藤とポジショニングが重複し、攻撃が停滞する場面が前半も多く見られた。単純な比較で見ても、スペースに果敢に飛び出していく後半の播戸の方が幾分か動きは良く、攻撃にリズムをもたらした。そして、寺田の動きが依然良い。視野が広く、中央に入っていってプレーもできるため、遠藤や二川がサイドに開いてクロスを供給できるなどもう少し長い時間起用したところだ。
 となれば、試合開始からの4-5-1という選択肢もあると思うが、FWがコンスタントに点を取れていない今、スタート布陣において何らかの組み換えが必要なのかもしれない。すぐ水曜にはACLの大一番浦和戦が控える。今日の鹿島戦、負けなかったことで気持ちは切れていないはず。ホームで先手を打つためにも、今日の守備陣の集中力とそれに報いる攻撃力をここで見せて欲しい。
 
 

東欧に芽生えるビッグクラブの資本力

2008年10月03日 | 脚で語る欧州・海外
 昨季のUEFAカップを制したゼニトが何かと注目を集める今季のUEFAチャンピオンズリーグ。確かにEURO2008でロシア代表の躍進の原動力にもなり、シーズンオフにはその去就がビッグクラブの間で話題になったアルシャービンがチームの核。それもやむを得ないだろう。しかしながら、名将アドフォカートが率いる07年のロシア王者は23年ぶりのこの舞台で厳しいグループ分けによる強豪との同居に苦しむ。緒戦のユベントスに0-1、そしてR・マドリーに1-2で連敗を喫し、ノックアウトステージへの突破は非常に難しくなった。

 確かにゼニトにはスペクタクルの要素が強い。R・マドリー戦でも終盤に猛攻を披露。あわやイーブンに持ち込んでもおかしくない試合ではあった。ポゼッション重視の前のめりのサッカーは、UEFAスーパーカップでマンチェスター・Uを下したことにも起因される自信に溢れている。しかし、さすがにそれだけではチャンピオンズリーグは勝てない。

 対してグループAで静かな旋風を巻き起こしているのはCFRクルージュ。予選免除で初の本選に進出した昨季のルーマニア王者だ。本選に臨む前に彼らにはゴタゴタが起こった。アンドネ前監督が国内リーグでの不振から解任の憂き目に遭い、暗雲が垂れ込めた。しかし、グループステージが始まればそんな話題はどこ吹く風。緒戦でASローマをアウェイながら2-1で下し、先日の2節では昨季ファイナリストのチェルシーに堂々の引き分けを演じて見せたのだ。特にローマを相手にファン・クリオが奪った同点弾までの流れは素晴らしい展開で、今季最大のサプライズと言えるだろう。

 そのルーマニアからもう1チームがこのチャンピオンズリーグに臨んでいるが、オールドサッカーファンにはお馴染みの名門ステアウア・ブカレスト。ガラタサライとの死闘、予備予選3回戦をトータル3-2で勝利し、3年連続のグループステージ進出を決める。緒戦のバイエルン戦は惜しくも0-1で惜敗したが、2節のフィオレンティーナ戦では何とか0-0のスコアレスドローに持ち込んだ。ルーマニア代表DFのゴイアン、ラドイを軸とする堅守は手応えを感じる。同居するリヨン、バイエルン、フィオレンティーナも足並みを揃えてまだ結果が芳しくないため、次戦のリヨン次第では、このステアウアも何かドラマを見せてくれる可能性はある。ピツルカ(現ルーマニア代表監督)を中心に欧州を制した当時と比べるのは酷だが、目標は久々のノックアウトステージ進出と胸を張ってもおかしくはない。

 このゼニト、CFRクルージュ、ステアウア・ブカレストの3チームにはビッグクラブに脱皮すべき上でそれを満たす共通項がある。それは豊富な資金力だ。ゼニトは世界最大の天然ガス企業「ガスプロム」が多くの投資を惜しまず続けており、かつてサレンコ(94年ワールドカップ得点王)が在籍した20年前とは比べものにならないほど、遙かにチームのステータスはアップした。CLの舞台こそ23年ぶりだが、今後常連となるためにも現在の陣容のクオリティと結果を残していくのは至難ではないはず。アルシャービンだけでなく右サイドのアニュコフ、中盤のデニソフ、前線のボグレブニャクと若きロシアのスターたちが今後欧州を席巻する日も夢ではないだろう。
 
 CFRクルージュも5年前まではルーマニアでも2部リーグで戦う無名のチームにすぎなかったが、自動車販売会社経営で名高いアルパード・パスカニーが経営に乗り出すと一気にチームは変貌。ポルトガルのベンフィカとの提携もチームに恩恵をもたらし、現在ではグループステージ登録Aリスト22人中なんと17人がブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ポルトガルなどのの外国人選手たちになった。イタリア人のトロンベッタ監督の手腕次第では今大会でさらにサプライズをもたらしてくれるかもしれない。さらには長期的に見てもCLの常連も狙えるだろう。

 ステアウア・ブカレストも国内屈指の大富豪ゲオルゲ・ベカリの恩恵を受ける。欧州に響くセンセーショナルな話題こそ皆無だが、今季加入したセメド(←CFRクルージュ)の積極性などフィオレンティーナ戦では好材料も見えた。ルーマニアU-21代表のスタンク、コロンビア代表のモレノなど若手と新戦力が多いだけに、グループステージで粘ることは可能だ。かつてのクラブの栄光が大きすぎるだけに、今後もベカリの積極的な投資で補強を進められれば、クルージュと共にルーマニアのクラブサッカーを世界に轟かせることも夢ではない。

 たとえ、他のビッグクラブに知名度では負けようともこの3クラブには何か可能性を感じる今大会。「優勝」を具体的な目標には設定しがたいが、来季に繋がる戦いぶりを最後まで見せてもらいたいものだ。資本力がモノを言う欧州サッカーで、確実に東欧のチームにも欧州の頂を狙う意識が芽生えつつある。

粒々辛苦 ~26節 VS 柏~

2008年10月01日 | 脚で語るガンバ大阪
 7月、日立台での戦いではリーグ再開後3連勝と勢いに乗っていたG大阪をストップさせた柏。しかし、下降するその順位は現在13位。降格ゾーンにだけは足を突っ込みたくない彼らの意地と、復調気味のG大阪にとってもリーグ王座奪還のために少しでも上位陣との差を詰めておきたいという気持ちがぶつかり合った。
 
 

 日曜日に行われた前節の東京V戦から中2日というハードスケジュールの疲労感はG大阪には確かにあった。開始序盤から柏にペースを握られ、攻守に人数をかけたサッカーで勝利への執念を見せられた。柏はここ9試合で勝利が無く、前節の川崎戦では5失点を喫する泥沼の展開。特にその川崎戦では、開始21秒で先制点を許しただけに序盤の試合に入る意識は高かったと言えよう。前線のポポを活かすべく左サイドにスピードのある菅沼を起用し、トップ下にはフランサではなくアレックスが入ってきた。
 対するG大阪は前節のスタメンとは変わって、FWに山崎が先発。まだフィット感に乏しい播戸はベンチスタート。明神の出場停止により、遠藤がボランチに下がり、両SHは右に寺田、左に二川という布陣になった。

 
 東京V戦で負傷した足を気遣う場面も見られた橋本

 推進力を奪われた試合の序盤は、加地が封じられていたことが大きかった。対面する菅沼に手を焼き、前線では流動的に動くポポとアレックスが非常に厄介だった。それでも13分、16分とこのところ好調な寺田が山崎に絶妙なスルーパスを繰り出すなど、見せ場はゼロではなかった。ハードワークをどれだけ続けられるかが鍵になった。柏はかなりタイトな守備で神経質に守ってくる。おまけに最後尾では前回再三チャンスを封じられたGK菅野がいたわけだ。前半シュートを9本放ったG大阪、流れの中で印象に残るチャンスは16分の山崎の角度のないところからのシュートぐらいだった。

 
 試合ごとに成長が見えてきた下平(右) 大先輩二川(左)も頼りになる

 
 ロニーが活きる場面は少なかった 次戦の爆発に期待

 G大阪が奪った得点は全てセットプレーだった。流れの中で攻撃に決定的なチャンスを見出せないのであれば、このセットプレーを活かせることは大きい。35分に遠藤のFKから山口のヘディングシュートを菅野が弾く、それを山崎が詰める、ここを再び菅野が弾いたところを中澤が押し込んだ。直前まで柏DF鎌田がベッタリとその高さをケアしていたが、マークが外れた途端に中澤にボールは転がってきたわけだ。守備には抜かりなしと手応えを感じていたであろう柏にとっては、この失点は痛かったはずだ。

 
 先制点となるゴールを古巣に叩き込みヒーローになった中澤

 その3分後には、左サイドの下平から二川とダイレクトパスで相手を崩し、山崎が飛び込んだところを小林が倒したとしてPKの判定。キッカーはもちろん名手遠藤だったが、この日は“コロコロ”ではなく、高速ライナーでゴール右隅に突き刺した。なかなか決定機が作れない中で効率よく得点を重ねたG大阪。柏の直近のパフォーマンスを考えれば、勝利を限りなく引き寄せるスコア展開だった。

 前半終了間際には、イライラを募らせた柏FWポポが中澤への頭突き行為で退場処分となる。おそらくその直前に中澤とポポが交錯した際に倒されたというのが引き金だろうが、これでG大阪が後半45分において人数のアドバンテージを得たとは言い難かった。

 
 44分ポポが退場 人数的にも有利になったG大阪だったが・・・

 数的有利を生かせなかった後半戦。柏のマークは前半以上に厳しくなり、必死で守る相手に対して播戸が途中投入されるも決定機をフイにし続けた。まだ復帰後、トップコンディションには程遠い。早く彼にもゴールを機に“完全復活”を願いたいのだが。その後も柏に決定的な攻撃力が欠けたためにまだ守備面では不安は無かったが、それでも1点を返されるのはどうもスッキリしなかった。
 82分に菅沼がヘッドで奪った1点は強かなものだった。スピードを活かして、囮になったニアサイドの北嶋に山口と中澤の注意が逸れたところをファーサイドで身長わずか173cmの菅沼が太田のクロスに合わせた。この時、菅沼はヘディングする直前にマーカーの加地をわずかに押して隙間を空けていた。これによって加地のヘッドの照準が狂っていた可能性は高い。集中はしていたであろうが、失点は失点。完封でしっかり締めておきたかった試合としては残念だった。

 
 意地の1発を返した柏MF菅沼 彼には勝利への執念を感じた

 
 本調子には程遠い播戸 “ゴール”というきっかけが欲しい

 
 前節の初ゴールが記憶に新しい佐々木 試合の流れを変える男だ 

 しかし、勝利したことが何よりも良薬。今は“勝つ”ことの重みと価値を歓喜に換えて選手もサポーターも実感している。つい先日まで全く勝てなかった日々が嘘のようでもある。いや、嘘ではなく、あの勝てなかった日々がこの原動力になっているのかもしれない。ハードなスケジュールに粒々辛苦にその身体をぶつける選手たちの姿が報われてきた証が見えている。続く連戦は、4日(土)の鹿島戦、そして8日(水)のACL準決勝1stleg浦和戦と、今後も過酷さと重要さを増して我々にのしかかってくる。