脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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08-09カルチョ序盤戦に思う

2008年10月10日 | 脚で語る欧州・海外
 今季のセリエA。毎年のようにインテル、ミラン、ユベントスを中心としたビッグクラブがスクデット争いの話題を独占する中、6節を終えた序盤戦は首位を走るラツィオをはじめ、ウディネーゼ、パレルモあたりが元気だ。

 欧州タイトルとの“掛け持ち”で、ここ数年元気の無いイタリア勢は、確かにプレミアリーグの隆盛に押されている。インテルは、カルチョを3連覇しながら、ビッグイヤーには全く縁が無い。その欧州王座が良く似合うミランでさえも、昨季はその“掛け持ち”に耐え切れず、今季はまさかのUEFA杯出場とそのステータスを格下げしてしまった。ユベントスもA復帰後初年度はカルチョの成績こそ良かったが、今季のチャンピオンズリーグではまだ未知数。彼らがカルチョと欧州王座のタイトルを“掛け持ち”して苦しんでいる中で、プロビンチャたちがカルチョの主役になるチャンスは大いにあるはずだ。

 今季のカルチョ6節まで終えて、首位を走るのはラツィオ。6試合で6得点とチームを牽引するのは今季から新加入のアルゼンチン人マウロ・サラテだ。彼はメッシのと同期の21歳。今やスーパースターのメッシには大きく水をあけられてしまったが、昨季プレミアリーグのバーミンガムで14試合4得点という成績だったサラテは今季ラツィオに加入してから獅子奮迅の活躍を見せている。昨季共に14得点でチームを引っ張ったロッキ、パンデフの両エースも健在。ロッキは怪我の離脱が長引いているが、パンデフは6試合で4得点と今季もゴールを量産。新戦力のサラテと共に3人のエースがラツィオの大きな原動力になっている。

 「新たなサイクルを開く年」と公言するロッシ監督はチームを率いて4年目。エレベーターのように毎シーズン目まぐるしく変わる順位に歯止めをかけたい。昨季はチャンピオンズリーグとの掛け持ちに失敗して、最終的に12位という成績に泣いたが、今季はピンポイントの的確補強で、これまでの基本的な陣容の熟成が問われるシーズンだ。チェコ代表のロゼフナルを昨季途中から核としたDF陣は、今季新加入はスイス代表としてEURO2008に出場したリヒトシュタイナーのみ。GKにリーベルからカリーソを補強できたのは大きいが、ここまでの戦いぶりを見ると、前線のサラテに勝る補強はない。どこまでこの勢いを維持できるか、今季のラツィオは欧州タイトルとの“掛け持ち”から解放されて、大いにカルチョを盛り上げてもらいたいものだ。

 そのラツィオを同勝点で追走するのがウディネーゼ。クアリアレッラ、ディ・ナターレ、ペペというアタッカー陣が好調で、UEFA杯緒戦でもドルトムントを2-0で下した。特筆すべきはここまでカルチョ6試合でわずか3失点しかしていないDF陣だ。セルビア代表のルコビッチを旗手に、ナポリからドミッツィが加入して安定感が増した。若手のコーダもイタリア五輪代表として北京五輪に挑み、そのモチベーションそのままにレギュラーの位置を確保している。リボルノから加入したパスクアーレもしっかりチームの一員として貢献しており、この活力に溢れたDF陣は今季のウディネーゼのスタートダッシュを支えていると言えるだろう。4バックと3バックを巧みに使い分けるマリーノ監督の手腕が、今季UEFA杯とカルチョを“掛け持ち”するチームの浮沈を握る。

 インテルを挟み、4位につけるのは、先日ユベントスを破ったパレルモ。ユベントス戦の前半24分、先制点を奪ったのはミッコリだった。古巣相手に叩き込んだこの1発は今季早くも5得点目。そのユベントスに引き抜かれたアマウリに代わって、5試合で5得点とエースの存在感を見せつける彼の活躍はパレルモの大きな力になっている。加えて、A昇格後の04-05シーズンから安定して中位を維持するポテンシャルは本物。今季も陣容のほとんどが新戦力で、特にビオラから今季加わったリベラーニの存在感は大きい。リボルノからマルコ・アメリアを最後尾に補強した陣容は、A昇格後のパレルモの総決算を見せるべき充実したメンバーだろう。今季のカルチョで最もサプライズが起こせるチームではないだろうかと個人的には思っている。

 彼らプロビンチャの躍進なくしてカルチョは盛り上がらない。欧州タイトルを“懸け持ち”するビッグクラブを彼らがカルチョで出し抜いてこそ、プレミアの隆盛に押されがちなカルチョの復権は果たされるのだろう。そういう意味では、まだまだ始まったばかりのカルチョ。今季も目が離せない。お金持ちのプレミアには負けていられないのだ。


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