脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

ウーヴァここに実る -地域決勝 日立栃木VS金沢-

2009年12月06日 | 脚で語る地域リーグ
 決勝ラウンド2日目第2試合は、日立栃木が金沢に3-0と完勝。真っ先に来季のJFL自動昇格を決定させた。完全に試合のペースを握った試合運びはこの大会のトップチームに相応しいものだった。

 
 松本山雅の歓喜から数分後、ゴール裏はツエーゲンレッドに。
 今日こそは90分勝利で昇格に前進したい。

 朝から曇天が広がる松本は、第2試合を前にいよいよ雨が降り出す。雨足は時間を追うごとに勢いを増すが、スリッピーなグラウンド状況とは裏腹に日立栃木の攻勢もその勢いを増していくのだった。
 日立栃木はおそらく仕事の影響で昨日は不在だった前田が中盤の底に鎮座。負傷の栗原はやはり出場せず、代役に久保井が起用される。対して不動の陣容で臨む金沢。高知から2戦連続で得点の生み出せない状況が続いている面を打開したいところであった。

 
 関東リーグの雄、日立栃木が一気に昇格を狙うべく戦いに挑む。
 昨日の鮮やかな逆転勝利で幾分肩の荷は下りたか。
 
 
 自慢のアタッカー陣で一気に試合を決めたい金沢。
 やはり古部、デニス、クリゾンに期待がかかるが・・・

 予想以上に日立栃木が前半から試合を支配した。昨日同様彼らの前線の連動は素晴らしく、中盤から森田が物怖じせずに飛び出しては三輪や高橋らへボールを供給する。ボールを奪われても素早いフォアチェックで金沢のパスコースを高い位置から消し去る場面が見られた。

 
 全社の準々決勝でも松本山雅を苦しめた日立栃木・MF前田。
 彼が加わったことで、昨日以上に攻撃の分厚さが増した。

 
 金沢は古部の爆発が期待されるところだが・・・
 18分に裏へ抜け出す好プレーもシミュレーションの判定に泣く。

 シンプルに、そしてスペースとフォロワーを使いながら金沢ゴールに攻め込む日立栃木に先制点の機会はやってきて当然だった。34分に前田が自陣から悠々とロングパスを放り込むと、三輪が金沢・DF諸江の背後を上手く取って走り込む。DFとGKを抜いた三輪は眼前のゴールにボールを沈めるだけで良かった。金沢は中盤の前田に大きなスペースを与えたことと、三輪に対するマークの甘さが裏目に出た。

 
 
 ポストプレーだけじゃない。
 前田とのあうんの呼吸で華麗に裏を陥れた三輪が先制ゴール。

 48分には左からの折り返しを受けた三輪が金沢DFを3人引きつけて冷静にバックパス。エリア内に走り込んだフリーの前田が追加点を決める。ここでも金沢は最も注意すべき前田をノーマークにしてしまった。
 止まらない日立栃木の攻撃。53分には金沢・根本の中途半端なクリアボールをダイレクトで三輪がシュート。これが決まって勝負を決定づける3点目としたのだった。立て続けに得点を量産した日立栃木はその後も攻撃の手を緩めない。65分には高橋のドリブル突破から前田へパス。そこから三輪へと絶好のパスを出すなど、崩壊した金沢の守備を完全に崩して狙い続けた。

 
 自らも得点を決めて1得点1アシストの前田。
 チームの象徴は終始余裕のプレーでチームを牽引。

 
 高橋、森田、三輪、前田だけではない。
 右SBの高木も攻撃を支えた影の功労者。相手を撹乱した。

 
 苛立ちの募った金沢のデニスは消える時間が多かった。
 上野監督と言い争う場面も見られた。

 結局、最後まで金沢にチャンスらしいチャンスを与えなかった日立栃木が勝利を収めて2連勝。一番に来季のJFL昇格を決定させた。

 
 雨の中、少人数ながら声援を送り続けたサポーターのもとへ。
 彼らにダイブで喜びを表していたのが印象的だった。

 
 高岡から松本。死闘を戦い抜いた横浜監督が胴上げされる。
 日立栃木ウーヴァSC、JFL昇格おめでとう!

 
 3点差での完封負けに衝撃は隠せない。どうした金沢!?
 明日のY.S.C.C.戦に負けると昇格は夢と消えてしまう。

 日立栃木はパスワークが冴え、見事な完勝劇を演じた。決してJリーグを狙うチームではないが、JFL昇格に最も相応しい強かなサッカーを完遂している。個人技に頼ることなく、全員が連動して数的優位な状況を作り出すその様は、まさにたくさんの粒が実っている一房の大きな葡萄(ポルトガル語でウーヴァ)を想起させてくれた。
 それと対照的に、高知の3連戦から観戦している者として気になったのは、金沢の攻撃の元気の無さであろう。どうもデニスとクリゾン、古部のアタッカー陣が連携に手をこまねいている。1次ラウンド最終戦の三洋洲本戦以来、守備にウエイトを置く戦い方が彼らの攻撃性を失わせてしまったのだろうか。前がかりになった際にフォロの動き出しが少なく、連携に乏しく前線が孤立している。広庭や山道あたりがもっと前でプレーしたいところだが、この試合ではその前に相手のフォアチェックでボールを失いすぎた。とにかく、この大会の厳しさを実感することとなった金沢。これで3日目のY.S.C.C.戦は絶対に負けられない試合となった。


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