脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

ガンバが勝ったのでもっとバカになります ~3節 VS東京V~

2008年03月30日 | 脚で語るガンバ大阪
 
 雨天の中、待望のリーグ初勝利はやはりホーム万博!1-1の同点で迎えた76分にルーカスの左足から放たれたシュートが見事にゴールに突き刺さる。13分の播戸のビューティフルな先制ボレーが決まってから63分間、我々サポーターは追加点を信じて止まなかった。今季FC東京より移籍してきた器用な新エースが見事その期待に応える。熱狂するゴール裏。昨季11/10の千葉戦以来、約5ヶ月ぶりに万博で味わう勝利の味は皆をバカにしてくれた。

 終わってみればシュート数はG大阪が19本、東京Vがわずか5本と完全に内容では圧倒した試合と言っても良い。13分の播戸の先制点は、ACLの全南戦の勢いそのままに鮮やかなジャンピングボレーで右足を一閃。東京Vが攻撃に転じようとしたところにおいて船越のトラップミスをそのままマイボールに、そしてパス10本を繋いだ後に生まれた鮮やかな先制点だった。この日右SBに入った橋本が絶妙なアーリークロスを配給したのもそうだが、やはり播戸のストライカーとしての嗅覚が光った一瞬だったといえる。ケアに入ったDF土屋が自分の頭を蹴られたというようなアピールをしていたが、既にその前から東京Vの最終ラインが播戸とバレーを警戒するあまり、遠藤とルーカスがくさびで連動するスペースが充分に生まれていた。立ち上がりの時間にこの展開を作れたことは、絶対に“勝利”を得るための重要な一戦の入り方としては上々だったろう。しかし、依然急ブレーキのバレーがそのシュートコースを完全に切られ、次第にGK土肥が当たり出すなど、簡単に追加点を奪うのは難しくなってくる。

 東京Vは中盤でMFディエゴを軸にボールを回していくが、ほとんど前線のスペースにボールを出せず、単純なプレイヤー同士のパス交換に終始する展開。G大阪にとっては“リスクの番人”明神がボールを奪い、この日ボランチに入った遠藤へとすぐに繋げられるため、攻守の切り替えが良く循環できていた。27分にはその充分なプレースペースを与えられた遠藤、二川の展開から右サイドから橋本がルーカスにドンピシャのクロスを合わせるものの、当たり出したGK土肥がその前に大きく立ちはだかる。その直後のCKからカウンターを食らう派目になるが、ここもディエゴを自由にさせすぎたことで、東京Vに完全に点を取る形を作られた。中澤がディエゴのシュートをブロックに行き、山口がレアンドロ、富澤のケアに入ったところで、中央の船越が明神と競り合いながらその体躯的有利を生かしてゴールにねじ込む。富澤のシュートコースに船越が入っていたこともあり、東京Vは同点に追いついたが、一瞬の油断を突かれたも同然のこの失点でG大阪がリズムを崩さなかったのは大きかった。

 撃ち合いの様相を呈した展開だが、土肥を中心とした東京Vの必死の守備と、バレーのブレーキで追加点はなかなか奪えない。これで遠藤がキックの精度も含めて本調子に戻ってくれていたら・・・と思う場面も度々あったが、その遠藤の分も攻守に奔走したルーカスの懐の深さは際立った。ミドルゾーンで展開の軸になり、自分でもアタッキングゾーンに持ち込めるルーカスのプレースタイルはG大阪のリズムをキープさせる要因となった。
 後半、集中力の切れた東京Vはさらに中盤のプレスが弱まり、バレーも次第に思うようにシュートを飛ばせるようになってくる。そして76分には最終ラインから左に展開、緩慢な相手プレスの隙を突いて中央からフリーでサイドに顔を出した明神がエリア内に放り込む。土屋のクリアミスはルーカスの下へ。こうなれば決められない訳がない。目の覚めるようなゴール上部に叩きつける追加点を決め、勝利を確実にした。

 最後までリズムはキープできたものの、対峙した東京Vは、やはり経験豊富な福西あたりのマリーシアが流石。セットプレー時も駆け引きの中で挑発的にバレーに不可解な警告を出させることに成功すれば、後半には、堂々と主審の目の前での裏拳一発。度を超えたこの福西のプレーにそのままプレーオンした扇谷の目は疑って極まりないが、福西が改めてそのキャリアを共に“ヤクザ度”を増していることも実感した。そう考えれば、ベテラン勢が多く揃う東京Vには、エネルギッシュな機動力は欠けていたと言えるだろう。時折ディエゴが見せるプレーに警戒を必要としただけで、守護神土肥のおかげで“惨敗”だけは免れたも同然だ。
 とは言うものの、G大阪ももっと得点が奪えたことも事実。ACLも含め、未だパンパシ以外の5試合無得点のバレーと司令塔であるべき遠藤の不調は目を覆う時もあるほど。ルーカスの存在が大きいが。今日のような中盤のヌルいプレスの中では、遠藤にはもっと“魅せて”もらいたいものだ。特に目立ったのはセットプレー時のキックスピード。コースは割と文句無いのだが、いかんせん本来のスピードが無いために相手GKは対応が容易い。72分に土肥のセーブに遭ったシーンなどはまさにそれを裏付ける。ここからまだ1ヶ月に8試合という強行日程が続く。メルボルン遠征も入っている。練習時間は限られるだけに、何としてでも本来の“勘”を実戦をこなすことで取り戻してもらいたい。

 とにもかくにも、ようやくリーグは光明が差してきた。先週の全南戦の勝利が火を付けたのかもしれない。勢いは出てきた。さぁ、まだまだこれからだ。これから今日の勝利以上に毎試合毎試合、俺たちをバカにしてくれ。