脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

08’ACLアウェイ道中膝栗毛① 韓国光陽・全南戦

2008年03月20日 | ACLアウェイ道中膝栗毛
 異国の地で味わう劇的な逆転劇の歓喜は、夜空に放たれる何発もの花火に込められた。敵地光陽で、全南と戦ったACLグループリーグ第2節。取られたら取り返す、そんなG大阪の真骨頂の復活を感じさせてくれた爽快な勝利だった。

 釜山に着いてからのアクセスをどうすべきか最後まで考えていた筆者であったが、関空のチェックインカウンターで馴染みのゴール裏仲間と遭遇。なんとBB(Black and Blue squad)の催行するアンオフィシャルツアーが、この12:55発のKE便でも企画されていて、釜山空港からもバスをチャーターしていることが判明。すかさずそのバスに便乗させてもらうことに。これは本当に幸運であった。
 14時過ぎに釜山空港に着後、一行でバスに乗り込み光陽へ。大阪は雨が降っていたが、釜山はそんな天気ではなかった。海外と言えども日本からそこまで時間のかかる訳ではない釜山。しかし、肌寒い気温が少し日本とのギャップを感じさせる。
 さすがにバスだけ便乗するので、ガイドに便乗代金を払い(40,000ウォンと言われたところを30,000ウォンにまけさせる)、一路光陽へ。最初のアナウンスでは3時間かかるなどと言われたため、高速バスで単身乗り込まなくて良かったと胸を撫で下ろす。延々渋滞とは無縁の高速道路をひた走り、1時間半ほどでサービスエリアに。周りの風景は山地と田園風景が目立つ。特にこれと言って眺めるものも無かったが、東光陽のインターで高速を下り、光陽市内へ入ると高層マンションと小さな商店が混在する街並みに。ガイド曰く、やはりソウルなどの北部に比べて、こちらは開発が進んでいないとのこと。観光箇所となる場所も無いし、Posco(旧浦項製鉄)の鉄工所が立ち並ぶがゆえ、その関係者の住居と生活圏内となっている。東京駅からカシマスタジアムへ向かう道中を思い起こさせる風景だ。

 高速を降り、15分ほど走ればスタジアムに到着。向かう道中の歩道橋などに段幕が掲げられ、ACLの盛り上がりを助長しているが、バスから降りてみると閑散とした雰囲気に軒を連ねる屋台の数が目立つ。挙句の果てには全南のグッズショップすらシャッターが閉まっている。まだキックオフ1時間半前ともあって、全南サポーターらしき人たちの姿もない。しかし、スタジアムは古いながらもその雰囲気は十分で、アジアのアウェイに来たことを実感させる。
 前乗りしていたサポ仲間と合流し、しばし屋台のメニューっで腹ごしらえ。屋台によって同じ商品でえらく値段の違う店もあったが、ようやくG大阪サポも全員集合という感じで、メニューを物色しながら皆で談笑。虫のさなぎ(?)のごった煮のようなものがポピュラーメニューらしく、食わされる(笑)。現地のおばちゃんも実に明るい。スタジアムのバックスタンド側後方には土のグラウンドとテニスコートがあり、子供たちがテニスに講じている。そこだけ見れば日立台のアウェイゴール裏のような雰囲気もあった。

 スタジアムはかねてからの情報通り、ゴール裏に出入口はなく、バックスタンド側の出入口から入退場する。さすがに観客席を見れば、全席独立席でありながらその老朽化が目立つが、もちろんサッカー専用、そしてピッチが近い!スタンドの傾斜はきつく、非常にサッカーを通常アングルから静観するには良い感じ。雰囲気は三ッ沢(現ニッパツ三ッ沢)と聞いていたが、まさにそれにふさわしい歴史の重みを感じさせるスタジアムだ。
 まだ、スタジアムはガラガラだったが、我々の準備は万端。海外ならばお約束(?)の発煙筒と15連発の花火も大量に用意されており、日頃日本ではご法度のカルチョの雰囲気を演出して味わえるというものだ。段幕を張る関係で、少し高い位置に陣取ったが、踊り場みたいな場所があって、そこを中心に固まることができる。中にはバスターミナルから徒歩で5km歩き、スタジアムに辿り着いた者も!そして翌日のフェリーの欠航が決まり日本に帰れない者も!総勢100名ほどのG大阪サポーターが一同に介した。あとは勝利を見届けるのみ!

 あちこちから、発煙筒の熱気と落ちてくる燃えカスの熱さに耐えながらアイーダで入場してくる選手を鼓舞。ここのスタジアムは電光掲示板がホーム青、アウェイ赤の配色にされており、試合前からツッコミどころが多く、それがサポに火を付けた(?)か、ここ数試合不甲斐無い戦績に終わっているチームに最大限のコールを送る。その統一感は少数精鋭がゆえの高まりを見せ、試合展開と共にヒートアップした。
 肝心の試合は、開始早々の4分に山口の軽率なトラップ処理をつけ込まれ、全南FWシモンに先制点を許す。27分にも右FKからファーサイドに合わされ追加点。ここまで来てまた不甲斐無い試合を見せられるのかと思ったその3分後に二川が得意のミドルシュートを突き刺す。待望の1点にゴール裏は狂喜乱舞。これをきっかけに全てにおいて後手対応となっていたチームがリズムを取り戻すと誰もが確信した。
 案の定、後半G大阪は息を吹き返し、53分に播戸がCKに頭で合わせ同点!5分後には完璧な二川→ルーカスの連携から安田理が叩き込む。完全にイケイケの流れ、本来のG大阪の持ち味を取り戻したことはその直後にPKで同点とされながらも、76分に再び播戸!安田理のクロスにGKが弾いたところをドンピシャで合わせ、決勝点を奪い取ったことがそれを裏付けて余りある。
 誰もが関係なく抱き合い、喜びに乱れ狂うゴール裏は花火と発煙筒が止まらない(笑)!待望の今季主要公式戦初勝利に最高の歓喜がゴール裏を包んだ。これぞサポーター冥利に尽きる海外敵地での勝ち点3奪取に、皆がスタジアムから釜山市内まで戻る距離の遠さを忘れてしまった。

 釜山までの帰路は、“オフィシャル”ツアーのバスに便乗させてもらう。日本人添乗員は「ここまで列車で来た方がだいたい20,000ウォンかかったとおっしゃってるんで、20,000ウォンで結構です」との一言。おい・・・最初に乗ったバスのガイドは40,000と言ってたな・・・値切ったとは言えやられた・・・なんて思いながら光陽を後にしたのだった。
 23時過ぎに釜山へ着くと、そのままルームチャージのみで仲間に確保してもらったツアーと同じ釜山観光ホテルに宿泊。BSで放送されたACLダイジェストで鹿島VSナムディンを観ながら、G大阪の結果について一言も触れないことにブーブー言いながら仲間と共に祝杯を上げたのだった。

 釜山市内をゆっくり見る間もなく8時頃ホテルを後にし、単身タクシーに乗って金海(キンヘ)空港へ。メーターは12,300ウォン!安い!20kmほど走りながら日本円でわずか1,500円にも満たない。バスに乗らなくて良かったと思っていると、チェックインすれば昨日の激戦の勇者たちが!同じ便だったのか。やべっちFCの妙技の話を「まだまだっすよ。技無いんで」と語る昨日のヒーロー安田理らと談笑しながら、サポ、選手共に日本への帰路に着いたのだった。

 とにもかくにも、チームとサポが一つとなって獲得できたACLの勝ち点3。これを機に負のスパイラルから抜け出し、リーグと共に上昇気流に乗ることを期待する。関空の入国審査の際、少し西野監督と話したが、その表情は勝ったことの安堵館感とこれからの手応えを感じているようなリラックスした表情であった。エース播戸が見せてくれたそのチームの誇りを世界の舞台で見せつけてやろうではないか。まだまだ戦いは始まったばかりである。
 
 次回メルボルン編を乞うご期待・・・