脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

不覚のドロー ~ACL第1節 VSチョンブリFC~

2008年03月12日 | 脚で語るガンバ大阪
 
 まさかここまで苦戦するスタートになるとは・・・2年ぶりに世界へリベンジするチャンスを掴んだ今季、待ちに待ったACLグループリーグ初戦は、ファンの溜め息がスタジアムを覆いつくし、鳴り止まないブーイングが万博の夜空にこだまする中で、格下を相手にする試合前特有の余裕めいた空気が、殺伐とした雰囲気へと変わってその90分の幕を閉じた。
 リーグ戦と並行を余儀なくされるACLでは、アウェイへの過酷な移動によるコンディションの変化を考慮すれば、できるだけホームでは勝っておきたい。しかし、格下と目論んだチョンブリFCの前にこの日のG大阪はことごとく沈黙。「前半勝負」とチームは試合前に掲げていたが、ボールを支配するもののフィニッシュで全く精度を欠いてしまった。

 先日の開幕戦から明神、安田理を下げ、ミネイロと寺田を起用。中盤をダイヤモンド型に。とにかく少しでも多く点を奪って、勝ち点3ポイント奪取と共に得失点差でも少しでも優位に立つことがG大阪のプランだった。だが、そのG大阪の攻撃をタイトな守備で封じ続けたチョンブリのDF陣は数的不利を作らせないインテリジェンスなもので、「4、5点取られるかもしれない」と相手監督も語っていたように守備一辺倒になるのは予想の範疇だったろうが、予想以上にチョンブリのこのタイトな守備は機能したと言えるだろう。
 それは25本ものシュートをG大阪が放ちながら、ほとんど枠を捉えられなかったことからも、最後のプレスが効いていたと裏付けられる。GKコーシンも反射神経に秀でており、ことごとくチャンスの芽を摘んだ。59分にはファビアーノとの1対1を水本があっさり抜かれる。そしてG大阪が中央のカバーリングを欠いたことでできたエアポケットを突かれ、フリーのアルチットが先制ゴール。チョンブリは“まさか”の先制点を奪い、ゲームのイニシアチヴをスコア上で奪うことになる。

 1点を追いかける立場になったG大阪には明らかに変な焦りがあった。パスワークが昨季のそれより明らかに精度で落ち、そして攻撃のタクトを振るうべき遠藤が予想以上に不甲斐ないプレーに終始する。左サイドではパンパシでその存在感を放っていたミネイロが、ボディコンタクトで再三負けたり、ライン際のコントロールで難を見せるなどその実力が“フロック”ではと思わせる頼りなさ。これではとても世界を戦うチームとは思えない。そんな拙攻ぶりが我々の溜め息を誘った。脳裏に描いた理想形は音を立てて崩れ去った。

 スタンドからは1点のビハインドを追いかける形になりながらも、早々に手を打たない西野監督にもブーイングが飛んだが、元来、スタートからルーカスをバレーと並べFW起用することに疑問符を投げかけるべきなのかもしれない。先発でバレーを生かすべく山崎を起用し、中盤のトップ下あたりでルーカスの“ボール捌き”に秀でた長所を生かすべきだと思うのだが。彼は、かつて足元にボールを収めた瞬間にゴールへの推進力を発揮したマグノアウベスとは決定的にストライカーとしての在り方が違う。
 また、ミネイロの不出来には“失望”の色を隠せない。リーチが長いだけで、フィジカルに絶対的な強さを発揮できない短所が随所に見られ、安田理の存在感が増しただけであった。
 そして、遠藤は一体どうしたのか。プレシーズンでチームにほとんど合流できなかったことが影響しているのか。彼のようなバンディエタに限ってそんなことは考えにくいが。しかし遠藤が開幕戦に続き、非常に覇気の無い単調なプレーに終わっている。CKも有り得ないキックミスが見られ、G大阪の攻撃陣が本来持つべきソリッドさを失う要因となっている。
 
 負けをも覚悟したロスタイムにルーカスが起死回生の同点弾を叩き込んでなんとかドローに持ち込んだが、もう1試合ではメルボルン・ビクトリーが全南に勝利しており、1戦目からきっちり3ポイントを奪って幸先良いスタートを切ることができなかったのは非常に悔いが残る。このドローが後にどんな影響を与えるか。それを考えれば不安が無いと言えば嘘になる。
 とにかくハワイで見せた空前絶後の攻撃力は我々に余計なイメージの膨張を与えてしまったか。不覚の試合を続けてしまったG大阪の今後の修正が非常に注目だ。15日にはエコパ。19日には敵地光陽で全南とのマッチアップが続く。まだシーズンは始まったばかりだが、タイトルを奪うためには今日のような不甲斐無さではダメだ。
 
 もう悠長なことは言っていられない。