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日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

メディア塾に異変

2005-07-24 23:49:31 | Weblog
 今日はメディア塾。順調に進んできたこの集まりも21日に「ヴィデオ・ジャーナリズム」講座を担当している小嶋講師から悪いニュースが飛び込んできた。小嶋氏が体調で緊急入院することになったのだ。
 小嶋修一氏はTBS社会部の敏腕記者で医療分野を中心に取材活動を行なってきている。年齢を重ねたこともあり、報道部の総合デスクやニュース番組の編集長という役職に就くようになっても「生涯一記者」の立場を貫く“昔かたぎ”の記者だ。帰宅しないこともしばしばで報道部のソーファがベッド代わりになるほどの「仕事大好き人間」だ。昨年などは会うといつも土気色の顔をしていたので、会うたびごとに「大丈夫か」とうるさいほど心配になって声をかけていた。
 今年に入ってから多少顔色もよくなったので安心していたのだが、長年の無理が蓄積されていたのだろう、今回の緊急入院という事態になってしまった。
 塾生達はそれぞれチームを組み、取材テーマを決めて「小嶋塾」を楽しみにしていたのでこれからが少々心配だ。しかし、それよりも長年付き合ってきた彼の身体の一日も早い回復が先決だし、重要だ。
 

借家物語 その1 血は争えぬ

2005-07-24 02:05:41 | Weblog
 これまでのいきさつから簡単に説明しておこう。
 私達は2年前、現在住んでいるところに入居した。契約する前に内覧をした際、前に住んでいた人たちが退去したまま通常行なわれる畳表の張替えなどの「お化粧直し」はされていなかったが、気になる汚れはなく、「退去時にそれらの改装費負担を要求しない」ことを条件に入居した。もちろんそれを文書化して契約書に書き入れてもらった。
 入居して細かい不都合な面はあったが、大家には言わず、こちらで解決した。ただ、玄関の鍵だけは、古いものでは不安が残り、取り替えるよう要求した。ところが、大家は「前にいた人は信頼できる人ですから」の一点張り。後で分かったことだが、前に住んでいた住民は、1階部分に移り住んでおり、大家と親しい関係にあるので彼女(大家)はそう言ったようだ。が、こちらとしては「はいそうですか」と言えるものではない。「だったらこちらで勝手にやりますが…」と言うと、しぶしぶ業者を呼んで取り替えてくれた。しかし、後に分かることだが、これが大家とその娘には気に召さなかったようだ。
 ここで、われわれの住居の構造を簡単に説明しておこう。2階建ての建物の半分は、大家一家が住まいにしており、残りの半分が賃貸部分になっている。1階部分に、以前2階にいた父子が住み、2階にわれわれが住んでいる。家の出入りは、外階段になっており、大家や階下の住人と顔を合わすことはほとんどない。
 入居後、大過なく過ごして来たが、一変したのは「熱愛発覚」後のことだ。向かいの家族が飼っている猫のジミーとわれわれとの“熱愛”が問題になったのだ。
 なついてくれて、遊びに来るジミーを時折り家に入れて遊ばせていたのが、大家の知るところとなり、「契約書に飼ってはいけないと書いてあるでしょ」と猛烈な抗議を受けた。約一年前のことだ。
 「いや飼っている訳ではなくて時折り中に入れているだけですよ」と言う私に、「一緒です。(部屋に)ニオイがつくし、傷が付きます」と断じ、すごい剣幕でまくし立てた。そのすごい剣幕に気圧された形で私はしぶしぶ相手の言い分を認めた。だからその後、ジミーとの「逢瀬」は、屋外に限られてしまった。
 大家からの半ば感情的な要求はその後しばらく続いた。布団を叩く時は、事前に必ず言うこと(こちらは間違っても最近逮捕された「布団叩きおばさん」のように、ラジカセで大音響を放ちながら大声で叫んではいない、念の為)。ヴェランダに置かれたよしずは腐って排水溝が詰まる原因になるから片付けろ…等など。しかしながら、大人しくこちらが下手に出ていると高まった感情は収まりを見せた。外で会っても挨拶をしない大家と下の住民にこちらから挨拶し続けると、挨拶が返ってくるようになった。また、そそっかしい私が鍵を仕事場に置き忘れてきた時も、まあ、嫌味は言われずに合鍵を貸してくれた。
 だが、そんな平穏な日々も長くは続かなかった。ここでも以前に書いたが、契約更新を巡るトラブルが関係を急速に悪化させたのだ。
 約1ヶ月前、契約更新の意志を聞かれ、よろしくお願いしますと答えた私に数日後提示された再契約書だが、そこには値上げされた家賃が書かれていた。
 「聞いていないのですが」といぶかる私に言った大家の言葉は、
 「値上げが嫌なら退去されて結構です」。
 「値上げが絶対駄目だと言っているのではなく、先に言っていただきたかった。家人とも相談したいので契約書をお預かりしてお返事いたします」
 と言うと、差し上げられません、のひと言を残して契約書をひったくるように私の手から取り戻し、大家は階段を降りていった。私も人生経験は相当豊富だが、一方的に値上げを決めて何も事前に知らされず、契約書にサインをしろ等という話は聞いたことはない。
 数日してまずいと思ったか、自宅の留守番電話に「家賃は値上げしなくて結構です」との大家からのメッセージが残されていた。「よろしくお願いします」というこれまで聞いたこともない丁寧な表現があり、その豹変振りに驚いた。
 それからまた数日後、書き直した契約書を持った大家が現れた。署名捺印して渡すと、「20日までに更新料と8月分の家賃をお願いしますよ」と言う。「え、また条件付きか」と思ったが、それについても承諾した。
 その後、いくら待っても契約書の写しが私たちに渡されないので、大家さんに「契約を頂きたい」旨を伝えると、「更新料をもらってから渡します」との返事。
 こんな一方的な契約は許されるはずがない。消費者契約法にも明らかに違反したやり方だ。私はそこで初めて大家に抗議した。
 すると、大家は「娘が宅建(宅地建物取引の免許)を持っていますから娘に話してください」と立腹した様子。
 娘と話すといっても「娘は忙しいから明日の2時から2時半の間に電話してください」と時間限定付きだ。娘は嫁に行って別の家に住んでおり、話すといっても電話になるという。
 気の進まぬまま指定された時間に電話をすると、娘はのっけから感情的な話し方であった。どうやら母娘共非常に感情のコントロールが苦手なようだ。
 「ぐずぐず言わないで更新料を払えば契約書を渡す」と、無礼な言い方をする娘に、「借地借家法」の第26条(賃貸借契約の更新)と第28条(賃貸借契約の更新拒絶の条件)や「消費者契約法第10条」に触れ、相手のやり方に問題があると言うと、「何を法律に詳しいかのように言って。偉ぶってあなたは一体何様なの?」と電話の向こうで怒鳴り始めた。
 彼女が怒鳴っているのはそのままにしておいたが、「よくそんな事が言えるわね。アパートを使い物にならない瑕疵物件にしといて」と言われたところで、「何ですか、それ?」と口をはさんだ。
 「猫よ。猫を入れているでしょ?あれで私達はあの物件に入れなくなっちゃたじゃないの。猫アレルギーにはもう瑕疵物件なのよ」
 「しかし、私たちがジミーを中に入れたのは何回か、それも数十分ですよ」
 「それは飼った事と同じなの、法律では」
 「いや、そんな法律はないと思いますが…。それに、私達はあなたのお母さんから抗議を受けてからは一度も家の中に入れていませんよ」
 「飼ったと同じなの。そういう判例が出ているのよ。知らないの?法律に詳しそうにしてたって何も知らないじゃない」
 後日、彼女の言わんとした事が判明した。最近、大家と借家人の間で争いごとになるのが「ペットを他人から預かっているだけ」という住民がうそをつくケースで、それに対して大家に有利な幾つかの判例が出ていたのだ。しかし、私達はそのケースとは全く違う。ただ、遊びに来た猫と短い時間をすごしただけの話だ。ジミーのような外を遊び歩く猫は、“部屋の探索”に飽きるとまた外に出て行きたがるもの。長居をするわけではない。
 その辺りの違いを説明すると、大家の娘は形勢不利と取ったらしく、突然、「更新料を払うの、払わないの?」と言って来た。
 「お支払いしますが、契約書を頂いてからです。または、契約書をお持ちいただければすぐにお支払いしますよ」
 と答え、私は相手と日時を相談した。
 日時を決めた後、彼女は何を思ったか、
 「でも、退去時に畳と壁のクロスを全部換えて負担してもらいますからね。あなたたちのいる物件は、もう使えないんですから」と、言い出した。
 もうこれ以上電話で話しても時間の無駄と判断して私はそれに「承諾しかねますよ」と言い残し電話を切った。
 約束の日時が迫るにつれ、一抹の不安が頭をよぎった。相手に渡してしまった契約書に畳とクロスの事が一方的に書き込まれていたらどうなるのだろうか、と不安になったのだ。何せ、私は相手が差し出した再契約書に署名押印をしているのだ。約束の日の前日、手当たり次第に電話をかけて取材してみた。
 県や市の相談室は、まるで時間の無駄であった。特に埼玉県の相談室の担当は、威張り腐っているという表現がピッタリ。一方、市の方は、まるで頼りにならない感じを受けた。そこで、宅建協会の相談員に色々話を聞いた。ここの相談員は親切に相談に乗ってくれた。「そういう大家さんがまだいるんですよね」とこちらの立場を理解した上で、借家法や消費者契約法のこと、ペットを預かった場合の判例などを教えてくれた。私の場合、もう既にそれらのことは知っていたので参考になることは少なかったが、皆さんで同じようなトラブルに巻き込まれた場合、すぐに地元の宅建協会に相談することをお勧めする。
 契約書の効力については、結局弁護士に頼るしかない事が分かった。私は友人や知人に弁護士をしているものが何人もいるが、他人が抱えている問題であれば気楽に「無料法律相談」と称して意見を求める事が出来るが、何せ自分のことだ。ちょいと聞き辛い。
 そこで、弁護士会の電話相談に目を付けた。しかしながら、世の中問題だらけのようで、電話は話し中のまま、つながらない。仕方なしに私は友人の弁護士に電話を入れて聞いてみた。
 「それは大変ですな。でも、そんなのは気にすることはありません。契約更新をしなければ済む事です。契約書は入居した時のものがあるんでしょ?それで十分です。法定更新を取ると宣言して、毎月これからも家賃だけを払い続ければ良いんですよ。更新料を払う必要はありません」
 単純明快な答えが返ってきた。
 早速、大家の娘に電話をして言われたことを伝え、翌日の約束もキャンセルすると伝えた。
 すると、
 「何を滅茶苦茶なことを言ってるの?そんな事が許されるとでも思っているの?その弁護士の名前は?住所は?電話番号は?」と怒鳴りまくっていたが、彼女の言葉が切れるのを待ち、「大家であるお母さんに文書でお渡しします」と答えた。
 店子に“侮辱”された上、更新料を払わないと言われたショックからだろうが、私の答えに切れてしまった彼女はここでは紹介できないような口から出まかせの暴言を吐いた。私は電話を切り、その内容が名誉毀損に当たるため提訴もありうると文書化して大家である母親の郵便受けに入れておいた。
 翌日、入居時に斡旋した不動産会社(註)の若い営業マンが我が家を訪れてきた。私は、これまでの経緯を話し、もう交渉の余地はないと彼に告げた。この営業マン、中々の好青年(もちろん私に友好的だからこのようなカテゴリーに入るのだが)で友好的雰囲気の中、話を聞いてもらった。この営業マンの話ではどうやらウチの大家は、「札付き大家」で会社としても扱いかねているいるような口ぶりであった。

註:普段は更新時も不動産屋が介在するが、借家人ばかりでなく大家の側も手数料を取られるため、不動産屋に仲介を頼まなかったのが大家には今になって裏目に出たようだ。