駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

診察室の会話

2018年05月28日 | 診療

        

 Fさんは御年八十五歳、高血圧症で15年ほど前から通院している。中背でやや小太り、薄くなった白髪少し弛んだ頬前かがみになった上体を杖で支えて、老朽船さながらふらつきながら診察室に入ってくる。

 いつの間にか年を取られたなあ、通うのが大変そうと、今日はどうやって来られましたかと聞く、タクシーとかご子息に送ってもらったという返事が返ってくると思ったら、「車だよ」とそっけない返事。「えーっ」とちょっと驚くと「100m歩くのは大変だが、車なら東京だって行けるよ。まだ免許は一年ちょっと残っている」と何か文句があるかねと言いたそうな反応だった。

 止めた方がいいですよと言うべきなのだろうが、ああそうですかと言葉を飲み込んでしまった。確かに頭はしっかりしているし、車がなければどこにも行けなくなるだろうなとFさんの立場を斟酌してしまった。

 K氏は七十二歳、昔なら立派なお爺さんだが固太りでがっしりしており、六十代前半に見える。今日は狩猟罠の許可証に必要な、精神疾患や中毒症がないという診断書を希望して来院された。

 「罠で何を獲るんですか」。 

 「イノシシやハクビシン、狸も掛かるよ」。

 「へー、獲ったのどうするの」。

 「食べるんですよ、狸は食べませんがね」。びっくりした顔をしていると「ハクビシンは旨いよ、松阪牛並みだね」。ますます驚くと「何なら今度持ってきましょうか」。イノシシはさほど好みではないし、ハクビシンは?で「いあや結構です」と言葉を濁したことだ。

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