長く街中で診療しているから総合病院との連携も深まりそれこそツーカーで患者さんを依頼できる先生も増えた。
我々個人医はいったん独立すれば根を下ろした場所で十年二十年診療する、中には三十年以上の医師も居る。そこへ行くと勤務医は部長クラスには長い医師も居られるが、赴任して数年程度の医師も多い。人間というのは不思議な生き物で顔見知りになることが良好なコミュニケーションに役立つ、顔見知りになると十中八九意思疎通がスムースになり、誤解や齟齬が生まれにくくなる。勿論、顔を合わせて話す機会があることが一番ではあるが、紹介状の遣り取り繰りを返すことで信頼が生まれることも多い。
病院の勤務医は年に一二回の紹介状の遣り取りで、自分のことが街中の医者に分かるはずもないと思っておられるかもしれないが、そんなことはない。紹介状の文面と患者の一言二言でどんな医師かおおよそわかる。そうやって信頼が醸成されたり、時に敬遠するようになったりする。
自分もそうだったからわかるのだが、卒後十年前後は自信が過信になりやすく、上から発言が出たりする。この治療法はよくない、こうしなさいという指導は上手に表現しないと、こちらの考えも聞かないでと嫌な印象につながることがある。先日、某病院に救急で92歳の虚血性心疾患から心不全を起こしたお婆さんをお願いした。幸い回復して退院できたのだが、持参された返事に脂質異常にプラバスタチンが投与されているが、こんな高齢者には意味がないから不要だと書かれてあった。確かに多剤投与が問題視され始め、投薬の減数が促されているので今更超高齢者にコレステロールの薬を出すのは無駄かもしれない。しかしまあ、二十年前から投与していたおかげで虚血性心疾患がありながら九十の坂を越えたかもしれないし、そこそこうまくいっていると薬を止めにくいという長距離伴走者の心理も理解して欲しいと思った。こうした先生からは取り敢えず、敬して遠ざかることになる。
勿論、例外はあると思うが、長く生きた人生の先輩には幾ばくか敬意を払った文面をお願いしたいと思う。
何度か激しい怒りを感じましたが、最近は、もうそんな人種?なんだから、しようがないとあきらめの境地です...
この距離は、縮まらないと思います。