ありゃりゃサンポ

近現代の建築と一日八千歩の散歩の忘備録。美味しいご飯と音楽と。
東京都全域を徒歩で塗り潰す計画進行中。

市谷の杜 本と活字館

2021年09月05日 | 美術館と博物館
2020年の11月に開館した印刷がテーマの博物館「本と活字館」を初訪問。

牛込神楽坂から市ヶ谷方向へ。
あの時以来の4年前ぶりの二十騎町を経由して安藤坂の上。あまりの風景の違いに驚きました。ちょっと前はこんな眺めでした。

こちらが本と活字館。大正15年に大日本印刷市ヶ谷工場の正門近くに建てられた営業ビル。
建築から95年の間に増改築を繰り返した建物を徹底的にリフォームして竣工当時の姿に再現したものです。

入り口の庇越しに現在の本社ビルを臨む。日本独自のモダニズム建築を切り開こうとした分離派建築界の特徴を有する名作として建物自体の価値が評価されています。

内部も当時の資料を基に再現。鉄筋コンクリートの構造は長い間天井板とパネルで隠蔽されていました。

天井板を剥がして数十年ぶりに現れた天井の装飾。

床のモザイクタイルも新しく作り直していますが、一部で建築当時のものをそのまま活かしています。(周囲より色の薄いところ)

重要なテーマである活字がモチーフのサイン。

活字デザインのベンチ。

入り口から奥に向かって活字が作られる工程を展示しています。こちらは文字の原板ともいえるパターンと呼ばれる金属板。

パターンの輪郭をなぞるとこの上にある小さなドリル刃が文字の形に小さな金属ブロックを彫ります。
彫られたところに溶けた鉛を流し込むことで一つの活字が出来上がるという仕組み。
私はこの業界で40年近く勤めた者です。活字を使っての印刷が表舞台から消えていく過程は見ましたが活字自体の製造について見るのは初めてでした。

活字を鋳造する機械。まさかここで実際の鋳造は無理だろうと思いながら見ていてふと機械の上を見るとしっかり換気設備が用意されていてびっくり。
さすがに人体と環境への悪影響が大きい鉛を使うことは無理のようで、現時点では違う合金で再現できないか検討中とのこと。さすが大日本。本気です。

コンパクトな施設ですがきちんとしたカフェが併設されています。

印刷の原色CMYKにちなんだ色のシロップで作るアイスフロート。

アイスティーをいただきましたが丁寧に入れられていてとても美味しいです。しかもたったの200円。

2階は現代の印刷機をいろいろ揃えた制作室と、企画展が行われる展示室。展示室では今はこの建物をどのように当時の姿に復元したかを展示しています。
ここでちょっとストリートビューの画像で復元前と後を見比べてみましょう。

こちらが2015年の姿。元々はかなり長い建物だったのですが、時計台より後ろを取り壊し。昭和27年に増築した3階を部分を撤去。外階段を撤去。
取り壊しで空いた土地に曳家で40m下げてから元の土地を前の道路の高さにまで3m以上盛土。最終的に道路から10m離した位置に再び曳家。

そういったあれこれを経て、こちらが2021年のストリートビューです。すごいとしか言いようがありません。
この建物の7年後に建てられた凸版印刷の超モダン時計台がまもなく地上から姿を消すことを思うと少々複雑な気持ちです。

「印刷」と「建築」の二つがテーマの博物館。スペースとしてはコンパクトなのですが全ての展示物が興味対象。ほぼ2時間滞在しました。
案内してくれた方たちもよく学ばれていていて対応も素晴らしかった。引退した印刷親父に付き合ってくれてありがとう。本当に楽しい所でした。

地階のトイレ。右がWomen。左がGender Neutral。そういう時代なんですね。
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2 コメント

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Bさん (moto)
2021-09-05 12:42:21
こんな立派な施設ができていたんですねー!
知らなかった・・・。
2枚目の写真を見ても、あの建物だったとはわかりませんでした。
こんな風にリフォームできるなんて、ホントすごい!
今度行ってみようかな。
2時間は滞在しないと思います(笑)

あの時以来とは、あの時ででしょうか!
もう4年前。怖い~!
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motoさん (B)
2021-09-06 08:11:56
ネットで簡単な事前予約が必要ですが、ほぼガッラガラですので一度覗いてみてください。
2階の小さな活版印刷機を使って自分で栞を作ったりするイベントもあるようです。

200円のアイスオレンジティーは麻布十番あたりのカフェだったら720円くらいしそうなちゃんとした奴でした。
その他コーヒー160円、紅茶は140円ですので缶コーヒー買って白銀公園で飲むのと変わりません。
あの時はもちろんあの時です。
牛込第三中学の裏手を通りかかった時にぎゅんっと記憶が蘇りました。
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