アートインプレッション

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日本美術技術博物館mangghaとは?

2014-10-21 16:09:03 | クラクフポスター展
日本美術技術博物館mangghaとは?


昨日ご紹介したポスター展
「クラクフにおける日本のふるさとー日本美術技術博物館mangghaの20年」
東京外国語大学で10月15日より開催されていますが、
今日は、この日本美術技術博物館mangghaについてご紹介したいと思います。

実はこの展示のお話を頂くまで、この建物の存在は全く知りませんでした。
多分ご存知方は少なかったのではないでしょうか?
しかも、この設立経緯に、あのアンジェイ・ワイダ監督が深く関わってらっしゃったとは・・・
驚きとともに、もっとこの活動を知られるべきではないかと思ってしまいます。

日本美術技術博物館とは?
http://manggha.pl/




mangghaHPより


多分、一番気になるのは、この建物の名前「manggha」ではないでしょうか?
mangghaときいて、日本のマンガも建物の名前に名付けられる程になったのか~
と思った方もいらっしゃるかと思いますが、由来は正しくはそこではありません。
でも、全く違うとも言えないかも・・・

なぜならば・・・
日本美術批評家であり収集家であるフェリックス・ヤシェンスキという富豪からお話は始まります。

  
この写真を見ただけでもかなりの日本好き、いやフリークだった事がわかります(笑)

彼は常々フェリックス・マンガ・ヤシェンスキと名乗っていたそうなのですが、
このマンガ。
由来は北斎漫画からとっているそう。
それほど日本が大好きだったのですね。
「ポーランドにジャポニスムを伝えた人」として知られています。
海外を旅する機会の多かった彼は、日本美術に魅せられ、様々な地で日本美術品を買い付け、様々な地で展示しました。
死後は、クラクフ国立博物館に寄贈されたそうですが、膨大なコレクション過ぎてなかなか展示される機会が無かったそうです。

ただ、クラクフがドイツ占領下だった1944年にこのコレクションの一部が織物会舘というところで
展示されたそうです。
これをみたのが、当時18歳だったポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督。
彼はこれに感銘を受け、何十年も後に彼の発意によってこの日本美術技術博物館mangghaが設立されることになったのです。

監督が1987年に京都賞(科学技術、文化において著しい貢献をした人々に与えられる国際賞)を受賞された際、
兼ねてより日本美術に影響を受け、敬愛していた事から、その賞金45万ドルと13万8千人にも及ぶ募金協力。
そして、両国政府の援助によって実現にいたり、1994年に開館したものです。
これを聞いただけでも、彼の並々ならぬ思い入れと、情熱を感じずにはいられません。

ここでは、ヤシェンスキの理念に基づき、彼のコレクションである浮世絵などの日本美術の展示以外にも、
日本関連の企画催しが行われているそうです。
この催しも、驚く程幅広い
一般的に文化交流で思いつくような、茶道、折り紙、生け花、着物にはじまり、
琴、琵琶、和菓子、能、狂言、文楽、さらに、新内、落語まで。
さらには、日本のアーティスト、科学者の講演会。
日本語学校も創設。
囲碁、将棋の国際大会の開催。
教育活動にも力を入れていて、幼稚園から大学生に向けての日本昔話や、日本の祝日にちなんだワークショップの開催。
日本の前衛舞踏公演、日本人演奏家による伝統音楽から現代/西洋音楽の演奏会。
と、まあ、書き連ねてしまいましたが、かなりの充実ぶり。
形骸化している下手な交流センターとは訳が違います

そしてさらにこの印象的な建築は、世界的建築家の磯崎新氏のもの。
展示スペースや倉庫、ロビー、公演ホールの他に、メインホールには茶室やショップに、交流スペースも設けられているそう。
メインホールには、磯崎氏のデザインスケッチも展示されているそうです。

アンジェイ・ワイダ監督 Andrzej Wajda、1926年3月6日 -

写真:Japolandより

ポーランド生まれの世界的映画監督。
代表作はここでは書ききれない程あるのですが、何よりも、日本への造詣の深さは有名です。

前述したように、ドイツ占領下の潜伏時に目にしたヤシェンスキの日本の浮世絵に感動し、
北斎の「神奈川沖浪裏」や歌麿の美人画、広重の「大はしあたけの夕立」は今でも記憶に刻まれているとお話されています。

葛飾北斎「神奈川沖浪裏」


歌川広重「大はしあたけの夕立」


「あれほどの明るい色彩と秩序と調和の感覚は、それまで見た事が無かった。」
「人生においてあのとき初めて、真の芸術に出会った。」
とまでお話ししておられます。

日本の美術だけでなく精神面もとても大切にされている方で、人間国宝の坂東玉三郎や石原慎太郎などとも作品を作っています。
近年では、東日本大震災の折には日本のメディアを通して特別寄稿もしてくださっていました。
多くの映画作品は第二次大戦終結前後のポーランドを舞台に、時代に翻弄される市民を描いた作品が多く、
内容も決して軽いものでは有りませんが、ここ数年でDVD化されている作品も増えてきたので是非ご覧になってください
坂東玉三郎主演の「ナスターシャ」も小説白痴を主題にした物語ですが、その映像美は見物です


この建物が、単に政治的な意味で設立された訳ではなく、
こよなく日本を愛してくださっていた、ヤシェンスキ氏とアンジェイ・ワイダ氏によって設立され、
19世紀に伝わったジャポニスムがこんな形で受け継がれているのを目の当たりにすると、
こんな交流活動が続けられてきたのだと思うと、胸がいっぱいになりますよね。

なので、この展示は単なる活動発表をするポスター展ではないのです。
是非、こんな文化の歴史に思いを馳せながら、ご覧頂ければと思います。


ポスター展
クラクフにおける日本のふるさとー日本美術技術博物館mangghaの20年

日程:2014年10月15日(水)~11月14日(金)
場所:東京外国語大学 研究講義棟1F ガレリア特設会場
一般公開/参加費無料
HP :http://www.tufs.ac.jp/event/general/_2014v4.html

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