夜のカルバドス

2019-05-03 | 日記

          

写真の瓶はカルバドスというブランデーである。貼ってあるラヴェルには下記のように書かれているので、その全文をここに紹介しようと思う。

                       Ange Giard Calvados Apple 100%

カルバドスとは林檎や洋梨から作られるブランデーのこと。この アンジュ・ジアール カルバドス は造り手や原料などが分かり、無添加・無着色で造られたこだわりのお酒。まさに “ 生産者の顔が見える ” カルバドスです。冷凍庫で冷やしてそのまま食前酒として、またお洒落にソーダやトニックウォーターで割っても気軽に楽しめます。

                       生産者  ローラン・シャル氏
                       原料比率 林檎100%
                       2012年9月20日に蒸留・オーク樽で3年熟成

フランス・ノルマンディー地方の中心地にあるシャル家の畑は、わずか6ha。その小さな畑の一角に、90本の林檎の木が植えられています。同家の本業は酪農ですが、毎年8月に蒸留業者のグヤール氏を呼んでカルバドスを作ります。薪を使った直火焚きの蒸留など、昔からの製法を頑なに守り続ける2代目のローラン・シャル氏。まろやかな味わいと柔らかな樽の香りが楽しめるカルバドスです。
ブランデー 容器の容量:700ml  アルコール分:40%  輸入業者:㈱ジャパンインポートシステム お酒は20歳になってから。


前に3月ごろだったか、ブログに東郷青児著『カルバドスの唇』について書いたことがあったが、一度、カルバドスなるお酒に触れてみたいと思っていた。そして今日そのお酒を入手したのだった。それも、ありがたいことに頂いたのである。頂いた経緯は省くことにするが、今夜はまだ手を出していない。しばらくは開けないでこの東郷の本の上にでも飾っておこうか … 。そして僕は再びここに『 唇 』から引用するのを躊躇しない。

                                          「何かめしあがる?
              「ぢゆねぱふあん
              「お菓子は?
              「のん、めるし
              「ぢや、なに?
              「おちちよ、カルバドスいれた … 」
              カルバドスはあなたの唇に七月の夜のさわやかさをもたらす。
              そして彼は囁くだらう。
              「あなたの唇はシンガポールの味がする」

              朗らかなあなたの瞳、
              くれなひの唇、

カルバドスの瓶の中のおしゃべりのように、僕にはこの会話は理解できないが、できないけど、感じることができる、ような気がするのである。ノルマンディーから届いたこの瓶の中には、アラベスクに絡み合う人生のくれないの恋愛感覚がコンデンスされている、ような気がしないでもない気がする。

 


令和元年5月1日

2019-05-01 | 日記

          

写真は4月18日午前7時半頃に撮った悠久山公園である。桜が満開の時だった。2週間前になるだろうか、今ではすっかり花は散ってしまったが柔らかい緑が気持ちいいのである。2019年の今日は元号を二つ持つことになった。今日5月1日以降を「令和」といい、以前を「平成」といった。あいにくの雨もよいの一日になってしまったが、ここに桜満開の写真を掲載して、今日という日を寿ぐことにしよう。そして『 藤原定家全歌集 上 』( ちくま学芸文庫 2017年刊 ) から、また一首ここに引用しておこう。建久二年 ( 1191年 ) 、定家三〇歳の時の歌だという。

                 久方のくもゐはるかにいづる日のけしきもしるき春はきにけり

遥か空高くに出てくる太陽のさまにも、はっきりと春は来ているのである。景色もくっきりと春になっていた。時間と空間の彼方から、やはりポエジーの微粒子は降り注いでいたのだった。定家という詩人の「触媒」によってポエジーがここに定着したのである。平成時代もいつの間にか令和時代を迎えていたのだった。季節が、知らず自然と移って行くように、時代もそのように移って行く。人もまた。