昭和17年11月20日発行 甲鳥書林刊。この本は著者のパリ滞在時の詩と短歌のアンソロジーになっている。全体が一つのロマンである。 「 タンゴ 」 という詩を紹介する。
ともし灯よ
魂はかがやきを求めず、
まばゆき光を消して
闇となれ。
巴里の空の月よ
窓よりひそかに入りて
静かに青く
ロココの広間を照らせ。
黄色の薔薇よ
人はすぎし恋を夢む、
いやたかく薫れ。
白髪の楽師よ
南の国のかの古き
ヴィオロンを執りて
( 悲哀のタンゴを ) 弾け。 (以下略)
「 人はすぎし 」 日を夢む。大晦日の夜ともなれば一層、 「 すぎし 」 日々が懐かしい。追憶に相応しい音楽は、悲哀に満ちた 「 タンゴ 」 のリズムである。大雪にもメゲズに、数時間もすると新しい年がやって来る。
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