ブック・デザイン

2014-04-18 | 日記

        

つい、表紙の絵に引かれて買ってしまったのが、岩波文庫の樋口一葉作 『 にごりえ・たけくらべ 』 ( 2008年刊 ) である。絵は鏑木清方 ( 1878-1972 ) の 「 たけくらべの美登利 」 を描いたもので、文庫本は1999年に改版されて清方のこの表紙になった。一葉 ( 1872-1896 ) が書く清流のような古典的文体と、清方が描くダスメッチェン・美登利の初々しい色彩が響きあって、桜の季節の下、明治の空気を吸うようである。清方は、暗誦できるほどくりかえしくりかえし読んだという一葉文学に関する絵画作品を多く残していて、晩年、「 読後の興奮を胸に懐いて、純粋なこころで画いた絵には、技ではかけない何かが宿つてゐよう 」 と自身書き残している。この表紙絵の美登利のポートレートは、大人として 「 汚れて行く 」 ホンの一歩手前の、永遠に戻らない 「 さびしく清き 」 少女像である。