美術館にアートを贈る会

アートが大好きな私たちは、
市民と美術館の新しい関係の構築をめざしています。

高橋信也氏 講演「都市とアートの新しい関係」 (要旨 2)

2021-08-08 12:19:01 | Weblog

2、美術館の機能と役割

1)美術館の仕組みと役割、機能を整理する。

・美術館は博物館法の適用対象施設。
 登録施設、相当施設、類似施設の3つに分類される。
・作品の収集、保存、調査・研究、教育、展示等の事業を基本機能とする。
・広くあまねく入場料を頂き、当代にとって有意義なアートを展示。
 美術館の展示は、マーケット動向とは直接リンクしない。マーケットに乗っても乗らなくても価値のある作家、美術・美学的背景は事実として認めていく立場をとるので、公共性の担保とはなる。
・価値の創出を目指す。それに対応する部門の運営。
・昨今、エリア マネジメントや都市機能との連関にも焦点が当たる。 

2)ミッション・ステートメント

美術館には、それぞれ狙いや機能を設定した「ミッションステートメント」がある。それは各美術館の立ち位置を明確にすると同時に、公共性の証でもある。
例えば、森美術館では「Art & Life」。このミッションステートメントに叶ったプログラムを企画する。
それを支えるふたつの組織がある。「理事会」や「評議員会」である。

・「理事会」は、応援団に近い団体で、資金的な援助や美術的な援助を含めて話し合う組織である。
・「評議員会」は、ミッションステートメントに照らして館として適切な活動ができているかどうかを評価する機関である。


3)美術館の機能

● キュラトリアル(学芸部門)

・収蔵作品を美術館のミッションに照らして展示、展開する。
・自主企画展の企画を、企画立案する。
・大きな美術館ほど細分化される。
 =コーディネーター、コンサベーター(修復)、レジストラー(記録)
 =コレクションマネジメントなど。
・展覧会事業:アートと人間、社会、美術、美学。認識と革新。 
・コレクション マネジメント:
 何を集めるか?なぜ集めるか? (収集)
 集めたものの維持、管理。 収蔵庫、設備。定点観測(保存、修復)
 所蔵品の価値と教育、普及(継承)

● ラーニング(相互学習):教育普及 ・ 幼児、学生、社会人、シニア。

・各年齢層にあった細分化したプログラムの実施。
・ダイバーシティ、相互学習。
 専門家が一方的に教えるのでなく、専門家と素人がコーディネーターといっしょに考えて実践する相互学習プログラム。
・「ターン(TURN)」の事例:日比野克彦さんが中心になって展開しているプロジェクト。東京オリンピックのリーディングプログラムでもある。

● 広報:広報も細分化している。

・広告、パブリシティ、プロモーション、制作物(ポスター、チラシなど)
・SNS、WEB、動画等 

京都市京セラ美術館は、85年ぶりのリニューアルで、一地方都市の美術館のリニューアルであるにもかかわらず、多くの新聞一面や雑誌表紙で取り上げられ、主観広告、客観広告、パブリシティ、ウェブ、SNSなどを組みあわせてアプローチし、大成功した事例である。
展覧会は一応の広報予算もあり、アピールして来ていただくことが熱心に行われている業界である。

● デヴェロップメント(営業)

・個人会員、企業会員・協賛・デヴェロップメントはキーワードの一つ。特に海外の美術館ではとても重要視され、ファンドライズスタッフを多数抱えている。美術館には経営手腕も必要である。
京都市京セラ美術館でも、経済的にある程度、自立して文化プログラムを進めていけるようにさまざまな試行が行われている。
企業に対して、美術館活動に巻き込まれていただくためのさまざまな働きかけを行っている。

 

<「美術館の機能」のまとめ> 上記のことから-

キュラトリアルを軸とし、「ラーニングによって美術館にある作品や活動を色々な世代に理解してもらい、相互学習を行う。「広報は、美術館事業を見にきていただく道筋を、どう組み立てるかを考える。「デヴェロップメントは、それらを実施するために、企業をどう巻き込み、どう社会化していくかという機構を有機的に探っている。

 

4)90年代以降のアートの流れとアートシーン

特に20世紀美術後半に関しては、アートの概念が時代とともに変遷してきた。
ことに1990年前後には、日本ではバブル崩壊、海外では東西崩壊があり、80年代にコンテンポラリーアートと呼ばれていたものが、90年代には「アート」としてより広い概念に切り替わってきた。
国と文化と人種が入り混じり、美術館のあり方が問われた時代である。
哲学として、文化学習(culutural studies、multiculturalism)が背景にあった。
例えば展覧会を中国人・フランス人・ケニア人のキュレーターが共同でキュレーションをする際、それぞれの言葉、美学、美術の感受性などを共有しながら、諸問題を乗り越えていかねばならない。それぞれの出自を学習し、尊重しあうこと抜きには国際展は成り立たない。
また分野に関してもファインアートのみならず、ファッション・デザイン・建築・写真の中にもアーティステックなエッセンスを認めていこうという動きにつながった。
日本では「横浜トリエンナーレ」のような大型国際展の形で実践されようとしていた。各地域の大規模「アート・イベント」はその流れにある。

 

<1、+2、のまとめ> 今までお話しした総体を整理すると-

業界のトレンドがあって、作品を巡ってさまざまな価値が交錯し、そこにあるアスペクトが生まれてくる。
その上に、美術館は公共性を軸に、マーケットとは異なる独自の原理で活動する。
それらが「美術状況」の総体となり、さらに社会の中での美術に対する期待や要請を踏まえて、アートと社会が作り出すもう一つの大きな状況が生まれてくる。
例えば、オリ・パラ関連のような行政からの働きかけや、都市からの様々な要請。例えばスラムクリアランスをアートに求める働きかけや、六本木アートナイトのような都市の中心部の生活者のための祝祭のようなアートイベントの要請があり、越後妻有のように過疎の村をどうしていくのかというプログラムの働きかけがある。
アートの基本機構を、社会の中でどう活かしていくのか、というのがこの20年の大きな動きだったのではないだろうか。

 

 

高橋信也氏 講演「都市とアートの新しい関係」 (要旨 3)に続く

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