アートの周辺 around the art

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引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

生誕120周年記念「岸田劉生展」

2011-10-21 | 展覧会
ドドーン!!麗子、登場です。
この絵は、本当に有名ですよねえ。名前はよく知っている岸田劉生ですが、初めてその作品をじっくり拝見いたしました。
場所は大阪市立美術館、久しぶりの訪問でしたが天王寺公園の周辺は相変わらずワイルドな雰囲気を醸し出しておりました。美術館の近くに動物園の入口もあるんだけど、「泥酔状態での入園をお断りします」という看板っていったい…。

岸田劉生、日本近代美術史の屈指の洋画家。ちょうど120年前に生まれ、38歳の若さで亡くなっています。
今回の展覧会の目玉は、やはり「麗子、いっぱい」なんでしょうけど、個人的には、前半に展示されていたたくさんの肖像画に圧倒されました。1912年から14年にかけて、「岸田の首狩り」とも言われたように、だいたい同じサイズの肖像画を自他含め、ものすごくたくさん描いています。特に自画像は、作品に制作年だけではなく月日まで入れられているので、同じ角度の顔を同じ衣裳で描かれているにもかかわらず、ほんの短い期間(場合によっては2週間とか)しかあいていないのに、色の乗せ方や表現が変わっていたり、表情のとらえ方が違っていたりと、本当に自分の表現というものを飽くことなく追い求め続けていたことが見てとれて、胸に迫るものがありました。

最初の頃の作品は、ゴッホっぽくて、だんだんフォービズム的な色合いになり、そしてセザンヌを思わせる作風に…。独自の表現としてたどりついたのが、まずは重要文化財である1915年の「道路と土手と塀(切通之写生)」。これは、先日の日曜美術館でもやっていたけど、不思議な写実絵画です。この坂道の異様なほどの存在感!となりにはこの坂道を横から遠景で眺めた作品もあり、興味深かったです。

そして何と言っても「麗子像」。東洋のモナリザ、とも言われるように、麗子の表情は妖しく神秘的です。写真で見るとかわいらしいお嬢さんなのに、なぜか劉生が描くと顔が横長になるのね。立ったり座ったり分身になったり…、いろいろな麗子がいました。顔はこの世のものじゃないようなのに、着物の絞り柄とかものすごく写実的で驚きます。ついには「それはないやろ~」的な「寒山風麗子」まで…。後には麗子をトレードマークというか、アイコンのように使っていたようにも見受けられました。

関東大震災をきっかけに京都に移り住み、そこで分不相応な骨董収集や茶屋遊びにはまってしまったとのことで、それ以降は昔のような渾身の作品はあまり見られませんでした。それでも病気療養も終え、これからまた、という時の急逝。もっと長く生きていれば、どんな作風の作品を見せてくれたでしょうか。

考えてみたら、この時代のひとりの作家の作品をじっくり見たのって初めてだったかもしれません。西洋絵画に傾倒したり、日本古来の文化に魅せられたりと、この時代の「洋画家」はアイデンティティを探求し苦悩していたのだろうな、というのがよく感じられる展覧会でした。

ぜひ、麗子に会いに行ってみてください!11月23日(水祝)まで。

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