今回の直島への旅を2泊3日にしたのは、豊島と犬島のふたつの島も訪ねてみたかったから!特に2010年の芸術祭で行けなかった豊島美術館には焦がれてました。映画『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』で堪能した静謐な空間を、ぜひとも体験したくって。
旅の2日目の朝、まずは宮浦港から豊島へ、船で約20分間です。お昼には豊島から犬島に向けて船が出ますので、時間の節約のために、家浦港から美術館まで電動自転車を借りることにしました。約30分の道中はけっこうアップダウンが激しく、電動とはいえ、なかなか大変でした…。そして、ついに眼の前に白い繭のようなドームが。お~、これぞ母型、感激だ!
豊島美術館は、このドームの中だけではなく、まわりの環境も含めて鑑賞です。良いお天気で、空気の冷たさも気持ちの良い中、ゆっくりと小道を歩いて、ついに美術館の入口にたどり着きました。そこで室内履きに履き替え、いよいよ中へ…!床も壁も一面白い内部は、本当に繭の中に入り込んだよう。なだらかな曲面を描く材質はコンクリートとのことだが、表面は漆喰のような暖かみがあります。
天井にはふたつの大きな開口部があり、暖かな冬の光が差し込んでいる。そこからは風にそよぐ木々が見える。吊るされているヒモがふわりと揺れて風の存在を感じさせる。そして、床にはそこここに小さな穴があり、水が少しずつ湧き出して、ついに美しい水の玉となって、床をツーところがっていく。水は寄り集まって水たまりになる。観客は誰も大きな声を発することなく、静寂を楽しんでいる。差し込む光の中に座り込んで水の動きをじっと眺める。プクン、ツー、コロコロ、コロコロ。その動きがあまりにおもしろく美しく、ずっと見ていても飽きない。
スタッフの方にひそひそ声で尋ねてみると、この水の出方は、アーティストがすごく緻密に計算し、設計されているとのこと、それでもその時々の光や風によって、日々違う姿を見せてくれるそうです。まさに自然とともにある、得難い体験としてのアート。あ~、とっても良かったです。今思い出しても、心が暖まるような。
豊島美術館でゆっくりと時間を過ごし、急いで港に引き返して次に訪れたのは犬島。ここの最大の見どころは、明治時代の終わり頃につくられた銅製錬所が廃墟として残る跡地を利用した「犬島製錬所美術館」。三分一博志の建築は、風の流れや太陽光など自然のエネルギーを活かした設計。銅製錬の過程で生まれるスラグという素材を使ったカラミ煉瓦の保温効果の話はすごいな~と思いました。子供の頃はその上を裸足で走り回ってたと、地元のガイドのおばあさんが話してくれました。
美術館の中で展開されているのは、解体された三島由紀夫のお屋敷の家具や建具を生かした柳幸典さんのスケールの大きな作品。廃墟として残る近代化産業遺産に重なる三島のイメージ…。屋内の半円の大きな壁のまわりからは光が漏れ、さらにそれが床に敷かれた水に映って日輪のように円を描いているさまは、ものすごく美しかったです。
美術館を出て、跡地をぐるりと巡ることができます。当時の煙突が数本残っており、うち何本かは今にも崩れ落ちそうで、廃墟感たっぷりです。ひえ~。
製錬所美術館のほかにも、島には集落の古い家屋(跡)に作品が展示されている「家プロジェクト」が展開されています。そこで、なんと!発見!「石職人の家跡」で、淺井裕介さんの作品を、初めて直接見ることができました!
敷地いっぱいを埋め尽くす淺井さんの絵。細部のひとつひとつがかわいいし、引いて眺めると、そこに壮大な物語が繰り広げられているようで。ほんとに魅力的な作品でした。今年はかなわなかったけど、来年こそは土で描かれた絵を見てみたい!!
一日でふたつの島を巡り、少々忙しかったけれども充実した時間を過ごすことができました。これから、また船で直島へ戻り、お目当てのお風呂❤へ入ります!つづく。