ベーコン展を見に、はるばる愛知県は豊田市立美術館へ行ってきました。(名古屋から遠かった!)ベーコンの作品は33点って少ないようで、実は三幅対の作品がたくさんありましたので、思いの外充実の展覧会でした。そうメジャーではないように思うのだけど、けっこう老若男女、多くのお客様がおいででした。確かに滅多に見れない機会。
一番興味を持って見たのは、絵具の痕跡。あの不思議な歪んだ像を描き出すのに、どんな筆跡が見れるのだろうか…?と。ものすごい疾走感で絵具を塗り重ねているようでいて、でもとても緻密に組み立てられているようで…、だってその走る筆が描かれる人物に動きをもたらし、まさに「生きている」姿を描き出しているから。
掲載しているチラシの「ジョージ・ダイアの三習作」もとてもよかったし、同じく顔をとらえた「ルシアン・フロイドの肖像のための三習作」もよかったな。表情がすごい豊かだった。
会場では、ベーコンの絵画に触発されたダンサー、土方巽などの映像作品も見ることができた。確かに肉体を操るダンサーが、動きをたしかめてみたくなる身体の様相がいくつも描かれている。人間って「肉」なんだなあ…としみじみ実感。
ベーコンの作品は、暗いイメージでしたが、確かに初期の作品は、背景が黒っぽいものが多かったのだけど、晩年の作品は背景に明るくきれいな色が塗り込められているものが多かったです。ピンクの三幅対など、甘いでもなく可愛いでもなく濁ってもおらず、何とも言えない色でした。
展覧会場で、ベーコンの作品のガラス面に対するコメントが掲示されていたのが大変興味深かったです。ベーコンは、作品と見る人の間をガラスで隔てることを理想としたそうです。「反射して見にくいことはわかっているけれど」と。その中で、いくつかガラスで覆われていない作品がありまして、それを見ていると、ベーコンの筆跡、ベーコンがあらわした色彩がとても露わになっていて、なんだか見ているこちらが、見てはいけないところまで見てしまったような、気まずいような気分になってしまうのが不思議でした。おもしろいですよね~。
また、会場の冒頭には、ベーコンが写っている映像が上映されていました。お~、動画で初めて見ることができました。あの凄いアトリエで描いている様子も。動きしゃべるベーコンは、う~ん、やっぱり?不思議な雰囲気をたたえている人でした。すごく繊細な人だったんだろうな。
とても貴重な展覧会、じっくり見ることができてよかったです。9月1日(日)まで。いつか海外の美術館で、もっといろいろなベーコン作品に出会えると嬉しいな!
“きゃりーぱみゅぱみゅ”が喜びそう・・・
決してグロではありませんよ。
作家自身のことなどを知ると、深いものがあります。
「肉」だけど、美しいよ!