アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

映画 『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』

2015-03-04 | 映画

 

もう3月、だんだんと暖かくなってきているのを感じますね。さて、今年初めての映画はコレ、ずっと見たいと思っていました。出かけたのは「京都シネマ」。きょうはたまたま1100円均一デーだったので(ラッキー!)、老若男女のお客様でいっぱいでした。

ロンドン、ナショナル・ギャラリーは、私の長きにわたる美術鑑賞人生の中で、そのオープニングを飾る金字塔の美術館であります。就職して初めての海外旅行でナショナル・ギャラリーを訪ねた私は、「絵を見ることの楽しさ」を心底実感したのでした。ルーブルのような1日でまわり切れないほど広くはなく、中世から近代までの名品を堪能できる素晴らしい美術館です。

そのナショナル・ギャラリーをアメリカの名匠フレデリック・ワイズマン監督が静かな視線でじっと追い続けたドキュメンタリー。な、なんと3時間の長丁場!その間、音楽もなければナレーションも説明もキャプションもなく、ただただ美術館の作品、観客、さまざまな仕事に従事するスタッフが写し出されます。

印象的なショットは、絵画の中の登場人物の顔と、作品をさまざまな表情で見つめる観客の顔とが、交互に写し出されていくところ。美術館では毎日、無数のこのような対面が生まれているんだね。観客の表情から、何かしら心を動かされているのが窺えます。

シーンとして多く取り上げられているのは、美術館のスタッフが、観客に対して作品のガイドを行っているところ。意外だったのは、作家の時代背景や技法などより、描かれている主題や登場人物の心情なんかを、分析して論理的に述べていることの方が多かったこと。やはり聖書の知識などは、双方のバックグラウンドとしてあるんだな、と思いました。「感想」よりは「分析」だな。けっこう理屈っぽくて聞きにくいようにも感じましたが、観客の皆さんは興味深そうでした。

このガイドは、例えば中高生や小さな子供にも。ひとつの作品を深く掘り下げるタイプの解説でした。けっこう声も響いていたし、ガヤガヤしてて館内は決して「し~ッ!」みたいな雰囲気ではなかったな。

印象的な話がいくつかありました。まず、絵画へのライティングについて。描かれた時代には、電灯で一律に照らされることなんて想定してなかった。その作品が置かれる場所に合わせて、どの方向から実際に光が当たるかを勘案しながら、画面の光の強弱を描いていたそうです。

それから、修復について。今現在行っている修復は、将来的には元の姿に戻せるようにしているそうです。今現在、過去の修復をやり直す場合もあるし、今の修復は今、ベストと判断しているに過ぎない、長い時間と労力をかけたって、わずか15分で元に戻せるんだよ、という担当者の言葉が印象的でした。

だいたいは美術館の展示室でのシーンでしたが、いくつか挟まれているスタッフのディスカッションの場面はおもしろかったです。マラソン大会にタイアップすることの是非について。知名度とイメージはあがるという意見に、美術館がスポーツにそぐうのか?金のために何でもやってると思われないか?という反論。メンバーの皆さんが、美術館のことをとても一生懸命考えていることが伝わるシーンで、興味深かったです。今回の映画の話は、すんなり決まったのかしらん??

それにしても美術館って改めて素敵な場所だ!と思いました。文化や芸術って、提供する側・提供される側、本当にいろいろな人の力の結集があってこそ守られ引き継がれていくもんなのだと確信します。しばし、この素晴らしい美術館の観客となって時間を過ごしたような気分でした。

京都シネマでまだ上映中。DVDが出たら欲しいな~。 

コメント
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