有田芳生の『酔醒漫録』

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ロンドン再訪に惑う

2007-10-19 09:23:00 | 単行本『X』

 10月18日(木)単行本『X』の執筆が滞って久しい。日常生活のなかでふと木村久夫さんの姿が脳裏に蘇ることはしばしばだ。気になっていても手に付かないのは、ロンドン取材に逡巡しているからだ。参議院選挙に出る前にロンドンにある公文書館を訪れ、裁判史料などを閲覧してきた。ところが選挙が終ったあとで、今度は戦争博物館に行く必要が出てきた。戦犯を処刑する映像が残っていることがわかったからだ。あるシーンはすでに見たのだが、全体像をつかみたい。なぜそれほど残酷なシーンを、しかも三方向からのカメラで記録したのか。その理由も調べなければならない。10月か11月に再訪するつもりだった。しかし総選挙がいつあるかわからない。そのための準備活動も必要だ。もし衆議院選挙に出るとしたら、おそらく「最後の闘い」になるだろう。悔いを残したくない。したがってロンドン行きを躊躇している。そんな気持ちでいるときに本屋で山折哲雄さんの『幸福と成功だけが人生か』(PHP研究所)を見つけた。都はるみさんファンの山折さんだ。何か書かれているかもしれないと手にしたところ、最終章の「敗北を抱きしめた日本人」で木村久夫さんについて触れていた。細かい事実誤認はある。しかし、ジョン?ダワーが『敗北を抱きしめて』(岩波書店)で木村久夫さんを取り上げたものの、処刑された原因に触れていないから「青年学徒の苦悩の深みを汲みつくすことはできない」と書いている。そのとおりなのだ。BC級戦犯とされた事件の全体像と遺書全文を明らかにしなければならない。内側から突きつけてくる衝動がある。人間は誰でも「一生」しかないのであって「二生」はない。当面する政治課題を終えたなら……。そう思うばかりだ。