伊勢一風花 落柿の音

もう一人の自分

青緑の淵

2011-09-28 | ヒト
 雨が時折ポツポツ落ちてくる中,ボクは薄暗い木々の中を歩いていた.突然現れた不思議な青緑の淵に,思わず立ち止まってしまった.静かな水面に垂れ下がった木の枝が映り込み,それが青い水に溶け込むようにして青緑の平面を作り出していた.全く静止している水面はなにやら硬い樹脂で作りものの様でもあり,そのまま歩いて渡れるのではないかと錯覚してしまいそうだった.ボクの脳が生み出す心は,ここのところずっと不穏なうねりを続けていた.にもかかわらず,ボクの目の光受容体からの信号は奇妙なほどの静の世界を脳に作り出し,何の矛盾もなくボクというアイデンティティを保っている.ヒトは悩み,苦しむが,たんなる脳の信号の揺らぎに過ぎないのかもしれない.

ヤブランの季節

2011-09-19 | 
 暑さが過ぎ去るころを待ちかねたようにヤブランがブルーの花を上げている.多くは公園や路側帯の修景観葉植物として使われているが,一斉に花穂を伸ばした時はとてもきれいな花だと思う.斑入りのヤブランは全国各地に植えられているが,ほとんど実がならない.全国に植えられているフイリヤブランはクローンなのだろうか.オピオポゴンやリリオペなどこの仲間はみな自家受粉するのではないかと思う.友人Fによれば,フイリヤブランの花粉は柱頭でちゃんと発芽しているのに実がな成らないらしい.ただ何かのはずみでたまに実がのることがあり,それを播くとまた同じような斑入りになる.どうなっているのか知りたいものだ.

高原のレタス

2011-09-13 | 
 ボクの住む地域ではまだ熱帯夜の寝苦しさが去らないというのに,昼前に降り立った信州のとある駅は,肌寒いくらいだった.あれ?上着がいったかな,と半袖の腕をさすりながら外へ.駅を少し離れるとそこにはレタスの畑が広がっていた.今住んでいる地域は冬作レタスの産地で,どうにかしてレタスの消費を拡大すべく,数年前から鍋にレタスを入れると美味しく食べられると盛んに宣伝している.だからボクにとってレタス畑は冬の風景なのだ.残暑の季節に昼間肌寒く,レタスが結球しているこの違和感.若い時も冬にスキーに訪れること以外に信州へ来ることもなかった.子供が教科書で「嬬恋の高原野菜」という言葉だけを知っているのと大して変わらないことに気がつき可笑しくなった.夏の間も毎日のように食べているレタスはこうして作られているのだ.

懐かしのオキナワスズメウリ

2011-09-10 | 
 オキナワスズメウリ,名前の通り南国育ち,けっこうな高温発芽性だったのであやうく苗づくりで失敗するところだった.なんとかいくつかの苗が出来上がり,畑でネットに這わすことができた.最近はやりの緑のカーテンにするには,葉の茂りも弱く下から葉が枯れ上がるのであまり喜ばれないかもしれない.しかし赤い実と白いスイカ模様のかわいさは申し分ない.南の島の道端でこの実を見たのは新婚旅行でのことだ,もう四半世紀以上昔のことになる.こうして再会できるのが,なんだかとてもうれしい.