歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

ラッセル『バリオス_ギター作品集』

2010年06月26日 | CD 古典派以後
Music of Barrios
David Russell
CD80373

1993年録音。69分42秒。TELARC。デイビッド・ラッセルのバリオス。バリオスのギター作品集としては、ジョン・ウィリアムスのものとともに名盤として知られるものだそうです。わたし実は、南米の音楽のCDを買ったのはこれがはじめてだったんですが、ラッセルが弾いているので買ってみました。

バリオス(1885-1944)はパラグアイの作曲家。パラグアイは南アメリカのほんとに真ん中にある内陸国。面積は日本の1.1倍で、しかし人口は516万なんぼですと。パラグアイ川が南北に走っていて、亜熱帯。山岳地帯はなく、わりと平坦で、川沿いには湿地が広がり、川から離れたところはサバンナだそうです。そういうことを知って聴くと、なんだか人気のない荒涼たるサバンナが目にうかぶような感じ?

↑ここまで書いて、この記事、何年もほったらかしていたんですが、このたびニッポンがサッカーのワールドカップ決勝リーグでパラグアイと試合することになったというんで、そういえば昔パラグアイについてなんか調べたことがあったよなあ、と記憶をたぐってMacBookのなかを検索してみたらこれだった。そうだ、パラグアイはバリオスの国なんだった。

ラッセルというギタリストは安定したテクニックを持っていて、いつも一応そつなく弾いて聴かせてくれる。それはいいんですが、最近、曲への踏み込みが足りないかなあ、という気もしてきました。このバリオスも、ああこんなすてきな曲を書く作曲家が生まれた国なのねパラグアイって、って気持ちには確かにさせてくれるんですが、同時に、うーん、もうちょっと彫りの深い表現もできそうだけどなあ、って不満も感じます。

それにしても、どの曲もときに哀愁をただよわせて、ときに愛らしく、捨てがたい魅力があります。バリオスは「ギターのショパン」と言われることもあるそうで、まあバリオスはあくまでもバリオスであってショパンではないわけで、このたとえはかえって誤解を生むような気もしますが、確かにバリオスの曲はギターがよく歌う。歌う楽器としてのギターの特質を、バリオスはとてもよく引きだしている。もっとメジャーになってほしいなあバリオス。個人的には〈Gavota Madrigal〉という曲と最後の〈Una Limosna por el Amor de Dios最後のトレモロ〉というのがよかった。ほかにギターのファンの間では、〈Un Sueño en la Floresta森に夢みる〉とか〈La Catedral大聖堂〉といった曲がとくに有名なようです。