写真1 新種シモツケコウホネ。葉を水中に沈め、花柄は水面より上に出て1個の花を上向きにつけ、水流をしなやかに受けとめている
写真2 6月18日、花盛りにはまだ早いのであろう、用水路には3本のシモツケコウホネ。葉は水中にあり、見えない
写真3 シモツケコウホネの花。黄色の5枚の花弁状のものはガク・萼。ガクの内側基部に短い花弁がつく(写真では4枚見える)。その花弁を上から覆うように、多数の雄しべ(短冊上の黄色の花糸に赤色の葯)が筒状についている。その筒の中心部に赤い子房・花柱と赤い放射状柱頭の雌しべ。ガクは外側、内側ともに黄色。花の径は3~4㎝
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コウホネは北海道から九州に分布する多年生水草
葉痕をもつ根茎がヒトの背骨に似ていることから、コウホネ(河骨・川骨)の名がつく
上の写真はシモツケコウホネ
本種は日光市小代(こしろ)地区で見つかった新種のコウホネ
環境省レッドデータブックでは、ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧IA類(CR)に分類される
シモツケコウホネや希少種を守るために、住民が栃木県下都賀農業振興事務所と連携して「シモツケコウホネと里を守る会」を組織
この会は写真の用水路や環境を整備
シモツケコウホネについて、2006年『Acta Phytotaxonomica et Geobotanica』57(2)(113-122頁)に、志賀隆・石井潤・井鷺裕司・角野康郎は次のように新種として発表
1.これまで報告されているコウホネ属は全て浮葉~抽水性の植物(葉を水面に浮かせたり、水面より上に出す植物)として分類されている
ところが、シモツケコウホネは河川・水路に生育する沈水性の植物で、完全な浮葉形成能を失った特異なコウホネ属植物として注目される
2.シモツケコウホネは葉柄の断面が中空で、花の形態はオグラコウホネと類似
しかし、狭長楕円形~狭三角形の細長い沈水葉を持つことで識別される
3.沈水状態のコウホネとは次のように区別される
①沈水葉の葉身基部がほとんど切れ込まない
②雄しべの形態、赤色の葯と果実
4.AFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)分析、酵素多型分析で得られた多型に基づく系統解析から、
シモツケコウホネはオグラコウホネの姉妹分類群として系統的にも明らかに区別される
5.上記から、シモツケコウホネは新種として認識すべきと判断
6.シモツケコウホネは栃木県に分布が限られ、7ヶ所の採集記録を確認
シモツケコウホネの学名:Nuphar submersa ツヅラフジ科
引用・参考文献等:大阪市立自然史博物館HP;志賀隆・『河骨愛』
執筆・撮影者:有馬洋太郎 撮影年月日:写真1・2;2011年06月18日、写真3;2008年09月15日 撮影地:栃木県日光市小代
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