ARどうぶつ病院の盛田です。
サクラの季節となり、ようやく暖かい日が続くようになりました。
本日は最近病院で流行りの肥満細胞腫について書いていきたいと思います。
上記皮膚の炎症について
これを皮膚炎と片付けてしまいがちですが、ほかの可能性も少し考えたほうが良いでしょう。
そう、これはれっきとした腫瘍、肥満細胞腫です。
肥満細胞腫は文字通り肥満細胞が腫瘍化した腫瘍ですが、一見皮膚炎のように見えてしまいます。
そのため、『華麗なる詐欺師』の二つ名がつけられるようなわかりにくい腫瘍なのです。
肥満細胞腫は主に皮膚や粘膜面に発生する腫瘍です。
元々肥満細胞自体、炎症反応やアレルギーといった免疫機能に関わる細胞なので、腫瘍となっても炎症を引き起こす性質は残っております。
刺激をすれば肥満細胞が炎症を起こす物質(ケミカルメディエーター)を出すことにより患部が発赤し腫れますが、放っておくと肥満細胞がこの物質を放出しなくなり、ケミカルメディエーターが無くなるため炎症がひいてあたかも炎症が改善したかのようになります。
『ある病院では、皮膚炎の治療を行い発赤が多少治まったからと皮膚炎の治療を漫然としてしまい、気が付いた時には病気が進行して取り返しのつかないことになっていた…』
なんてこともセカンドオピニオンとして経験しております
肥満細胞腫は低(病気がひどくなりにくい)~高グレード(悪性)まで3段階にグレード分けされています。
犬種によっては低グレードの肥満細胞腫が好発することもありますが、これは見た目や細胞診だけでは100%は区別できません
なので、完治を目指す治療を考えるのであれば肥満細胞腫が疑われた場合は必ず組織検査を行いましょう。
また、術前の細胞診を行った際は、採取した病院で染色して、必ず腫瘍細胞の有無を確認することが必要です。
肥満細胞腫が疑われた場合は確定診断を兼ねて病理検査に送り、その間にステージング(血液検査・Ⅹ線検査・エコー検査)および手術の日程を検討するくらいの計画性を持って行うことが必要です。
また、腫瘍がとり切れないことも考え、術後の治療についても考えていきましょう。
ステージングにて腫瘍病変の進行が疑われる場合は、遺伝子検査を行うことで、分子標的薬の治療が効果的であるかどうかわかることが知られています。
肥満細胞腫に限らず腫瘍か腫瘤か炎症かわからないケースは多々あるので、
「これは皮膚炎かな?」
と思っても、放っておいたりせずに早めに動物病院で確認してもらいましょう
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