金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【将棋】 西山朋佳三段の奨励会退会 ジェンダー問題の奥深さ①

2021-04-15 07:21:40 | 将棋

 本日は、将棋界の「男女混合の奨励会」と「女流棋士」をテーマに取り上げたいと思います。

 

 西山朋佳奨励会三段が奨励会を退会4月1日付で女流三段になりました。西山朋佳女流三段は現在25歳であり、誕生日は6月ですから、あと1期は三段リーグに参加することができました。しかし、もうギリギリまで自分を追い込んで、女性初の「将棋連盟プロ棋士」を目指すよりも、すでに、里見女流四冠と並ぶ女流トップ棋士としての立場に戻って、将棋の道を究める選択をしたのでした。

 本ブログでも、この西山朋佳三段の孤軍奮闘の挑戦を応援しておりました。しかし、最終的な、ご本人のこの決断には敬意を表しておりまして、個人的には、これからも西山朋佳女流三段を強く応援していくつもりでおります。

 

 ところで、本件は「ジェンダー問題」を考える際、さまざまな議論を呼ぶ、非常に象徴的な出来事であります。一般的に、ジェンダーとは「男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会に、格差が生じている時」に、これを問題として扱うことを指します。

 本件で言えば、将棋の奨励会には、男女の区別はなく、同一ルールで三段リーグを勝ち抜けた方がプロになれるというシンプルなもの。ここにはジェンダー問題はないように見えます。しかし、その努力の過程においては、ライバル同士で深夜まで将棋を指して検討を繰り返すような訓練が常態化している世界です。いくらAI活用による単独訓練が増えたとはいえ、やはり、少数派の若い女性は明らかに不利な面もあります。

 概して、マイノリティには、マジョリティ側が気づかないハンデが数多く存在するものです。そうしたハンデを押しのけて、西山朋佳三段は2019年度下期のリーグにて、14勝4敗というトップの成績を挙げましたが、同じ成績だった男性2名が、その直前期の成績が上位だったため、第3位の「次点」となり、女性初のプロ棋士の誕生は持ち越しになりました。

 今思えば、あの時、西山朋佳三段は燃え尽きていたのです。すでに女流棋士として、スターの道を驀進していた彼女にとって、ボロボロになってまで、男女の区別のないプロ棋士を目指す理由が見つからなかったのだと思います。

 

 一方で、こんな声も聞こえてきます。「男性の棋士は、他に逃げ道はないため、三段リーグを勝ち抜かなければ、将棋で生きる道は得られない」「女性というだけで、恵まれた環境が用意されている。これは逆差別と言わざるを得ない」

 皆さんはどう思われますか? ジェンダー問題の奥深さであります。(続く)


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