宇宙の彼方から

自然の不可思議な森羅万象に揉まれる自分や他人の有り様を見つめる。

チベットの息吹

2008-03-30 22:40:47 | ニュース
またまたチベットを分析しよう・・・・
右よりの中国攻撃派は、単純で「それ見ろ、シナって言うところはそんな国だ!」くらいにしか非難することしかできないが、もっと深遠を探ってみると、いろいろな中国における問題の数々が表出されてくる。

元々、共産社会の構造は、「質素が美徳」の仕組みを擁していた。
それがうまく機能せず、人々における欲望の調節作用を軽視していた。
本来、人間の基本であるところの「欲望」という行動欲求を過度に抑制してしまうと、それが生産や消費としての役割である「意欲」というものの抑制につながってしまう。
全体的にその「意欲」は沈滞してしまうのだ。上からの勝手な音頭による生産目標では、「仕方なく仕事をする」という受身の体制にならざるを得ない。

その結果、共産システムは綻び、止むを得ず資本主義や民主主義や自由経済システムも少しずつ取り入れていく方策に転換せざるを得なくなっていく。

一方、共産思想と軸が一緒であったチベットや中国国内の宗教というものは、人々の心の中枢を占めていた筈である。
共産思想と相まって、人々の「心の拠り所」として重要な地位、位置にあった訳である。
特に、他国より隔絶されたチベット仏教にあっては、尚更人々の暮らし、生活との共存は抜け難いものであったに違いない・・・・

共産社会は、それなりに一致点もあり、理解もされていたのであろう・・・・が、
中国のそのような自由経済社会体制への移行に伴い、従来の「質素倹約の美徳」という大儀が大きく変貌していくそれのように、いつしかチベットにもその影響が俄かにやってくるのだ。
「質素は美徳」の代表格として、その尊厳を一心に集めて人々の暮らしの中に溶け込んで君臨していた「僧侶」という人たちの地位は一挙に陥落し、変わりに台頭してくる経営者、司直への羨望が、「僧侶」と言う立場を侵食してしまう現実に晒される。

過渡期に於ける中国の「生みの苦しみ」であるのかも知れない・・・・

あれだけ多くの僧侶と言われる方々がいることを思えば、いかに人々の暮らしの中にある仏教という「価値観」の尊大さが分かろうというものである。
これからの中国は、自由経済社会体制の下に、人々の欲望をいかに注意深く「調節」していくかが、与えられた課題であろう・・・・
人の欲望の発露には「際限がない」・・・・
しかし、無くても困るのだ。
その自由経済による物欲得行動や心の退廃等の弊害部分は、チベットにも舞い降りてきて当然なのであり、人々の畏敬の念が、僧侶から経営者に移行していくのも当然の成り行きなのである。
だから中国の中央政府は、あまりある配慮を怠ってはならないと、思える。
宗教を無上の宝とする国家群は世界には数々あり、それへ(仏教)の対応を軽視すると、「宗教を持たない国家は・・・・」と揶揄されてしまうであろう・・・
それほどに宗教への冷遇は、反発が強いのである。(日本右翼群の反発とは意味合いが違う)

最終的な帰結は、やっぱり心の拠り所なのであり、地に足を付けた生き方であり、けっして大儲けの人集めの経営者の役割ではないのだ。チベット国民も、日本国民も、一時的な栄華に酔っては後悔する原因ともなろう・・・・
中国のこれからもいろいろと費用の嵩む事柄が多く表出してくるであろう・・・
そうそう軍事にばかりお金を費やすこともできない筈である。

ネパール、ブータン等の独立によって危機感を覚えた中国共産党政府の進軍は、チベットが独立未承認であったのも相まって、主要国の反対もなく、そのまま了解されてしまった。
多分、日本に手痛い傷を負わされた国であったことも理解同情の範疇であったのであろう・・・?
また、主要国も大戦争の疲れ、厭世感も強く働いていたのかも知れない・・・?
また、主要国の植民地が独立への反旗に、それぞれ対応しているのが手一杯でもあったのであろう・・・・?
方や常任理事国、方や独立未承認国、というハンデもあったであろう・・・・?
そしてこの進軍は、日本の侵略に真似ているのも歴史の皮肉とも取れる。
しかし、国連から独立国として認められていなかった、且つ、清とチベットとの付き合いは長かった事を考えれば、日本のその時とはおのずと質は違う・・・・

そして、その後の共産主義の拡大南下を嫌ったアメリカ軍の朝鮮戦争と時を同じくして、アメリカCIAのゲリラ抵抗作戦がチベットを挟んで頭上で破裂し、それぞれの暴力の残酷性に拍車を掛けた争いとなる。

平和や国土や思想や主義を守る(防衛)筈の「戦争」は、まさに「恨みと恨み、憎しみと憎しみの交差点」と同一のものでしかないのだ。

やがての日本国土を挟んで・・・・という将来を暗示示唆していることであるのかも知れない・・・・?