Three frogs which smile.

酒飲みは奴豆腐にさも似たり
初め四角であとは ぐずぐず

銀座の夜の男意気

2005-02-05 | 落語
1月7日 銀座ブロッサム中央会館にて立川志の輔独演会。

思ったこと、感じたことそのままです。
落語に興味のない方は・・・本当にいつもごめんなさいなのです。
だがしかし。何度も書くように、好きなんです。おいら。
これがないと生きていけないくらい、好きです。

そりゃぁ大げさすぎだな。

立川めんそーれ つる
立川志の輔 猫の皿
ダメじゃん小出(ジャグリング)
立川志の輔 八五郎出世せず

12月、柳家小三治師匠の独演会のチケットをすんでのところで取り逃がし、
臍を噛むことになってしまった。
1月の独演会、誰から聞きましょうか。
いろいろ探すがそのときの悔しい思いを埋めてくれるような人が見当たらない。
期待は裏切らないでしょう。
志の輔師匠に白羽の矢を立てる。

立川めんそーれ つる
声が張るし、表も悪くない。
ただなんとなく・・・言葉の流し方、仕草は荒い。
これからもしかしたら開花するかもしれないなぁ。
華がないわけではない。
若い人の特徴なのかもしれないが、なんとなく表情がわざとらしい。
飄々とやってのけるような器があればいいけれど、つるという話。
何度も繰り返すのでわざとらしさが鼻に付くと、聞き苦しい感が否めない。

すらっとしていて顔もとてもチャーミング。すっとたつと華があります。
はっきりと話す声の通りはこれからが楽しみかもしれません。

志の輔師匠 猫の皿
枕は世間を騒がす偽札の事だったでしょうか。
相変わらず声は悪いけれど、人を惹きこむ底力のある言葉のリズムを持っている。
子供の声での掛け声を聞くことが出来る人柄を感じる。
そういえば池袋演芸場で「ししょぉぉ」と若い女性の掛け声に照れまくりの小三治師匠を思い出す。
あたしの声ぢゃぁ・・・無理だな。
閑話休題。

猫の皿。骨董を民家から見つけ出し、骨董屋に売る「はたき」の男と茶屋の主人の噺。
茶屋の主人のおっとりと優しい感じの爺と、はたきの男の計算高さがちちちとぶつかり合うのがまた楽しい。
この噺、他の人は大抵主人は好々爺、男はちょっと商売べたな、でも憎めない感じに仕上げているように思う。

志の輔師匠は違いました。畳み掛けるようにはたきの男を商売に強気な底力のあるちょっと強欲な感じの男。
茶屋の主人はこれがまた結構腹黒?!なんか、人の欲の戦いのような噺に感じてしまう。
田舎のお爺ちゃんの商売上手!といったところか。はたきの男がこれまた強烈な猫嫌いにしてある。
悪くはないとは思うし、解釈として人ってきっとこういうところがあるから憎めないんだと思うとは感じるけれど・・・

あたしとしてはあまり好きくないかも。

仲入り
ジャグリング。あたしはこういう・・・なんとなく抜けていて笑いを持っていけない人って好き。
くだらなさの中にもきちんと盛り上げるし、独演会のその人のもつ雰囲気を食わない感じ。
たんたんと芸をみせるが、失敗多し。それもまた雰囲気としては好きですが。

あっけなくジャグリングが終わると、細くて存在感のある人が舞台上を歩く。
家元登場。機嫌がいいのが手に取るようにわかる。
好きなギャグを小気味良く会場へ投げて去る。

志の輔 八五郎出世 せず
八五郎出世。
がらっぱちの八五郎。だけど妹思いで親思い。口は悪いが芯が通った粋な男。
妹お鶴がお世継ぎを産んだのでお殿様に呼ばれて城に行き、
がぁがぁと啖呵をきり、言いたいことを言い放ち、酒をがぶ飲み。
その飾らない態度が気に入られ、大工からお侍に位を取り次がれるって噺。
本当に八五郎は出世することを良しとしたのか。
みんなが慕う、がらっぱちだけど粋な江戸前漢 八五郎 って男は「出世」というものを魅力と感じる男だったのだろうか。

八五郎、お殿様が是非にと勧める弐本挿しを断り、大工という自分の生き様を通し、
そしてお母さんも一緒に住もうと城へ住まわせ、娘のそばへいさせてやるという言葉さえつっぱねる。
それは「おふくろっていうのは井戸端がないと生きていけないんですよ」というのだ。
親の生き様、息を抜く場所、心を放つ場所を良く見ていること。
つっぱしるだけの男ではなく、大事なものを良くわかっているぢゃないですか。
一つだけかなえてやるというお殿様の言葉に
「お袋にお世継ぎとやらを抱かせてやってくれ」というのだ。
お母さんが八五郎を城へ送り出すときの掛け合いの間合いがここを引き立たせる。

茄子の古漬けが好きだったから。
周りの人と仲良くするように。
お殿様とこれからもむつまじく・・・
一言一言、思い出す間合いがこれが、言い忘れてはもう伝えることが出来ないからこそ必死にくだらないことでも言伝ようとする母心なのではないか。

八五郎。何が大事かわかっている江戸前のいい男。
あほですよ、はっきりいって。江戸っ子です。気風が良いんです。
だからこそ

八五郎出世せず。

あたしはこの解釈、ものすごく好きです。もともとの噺を捨てその良さを引き出してるのかなぁ。

ありがとうございました。ありがとうございました。
志の輔師匠が頭をさげ、お客様の拍手も鳴り止みません。
ですが・・・緞帳が下がらない。

。。。。

またまた登場、立川談志。
本当に家元は志の輔師匠好きね。
二人並んで挨拶をして「志の輔をよろしくお願いします」と頭を下げる家元は
険もなく、やさしい家元の表情を見せていて暖かく感じました。

八五郎出世せず。
この噺、一つで大満足でした。

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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
落語に行こう! (あくあ)
2005-02-09 10:03:56
John Doeさん:

お、小三治師匠の独演会ですか?

いいですねぇ。今はすぐに売切れてしまうので

なかなか聴きに行くことができなくてほんと残念です。

小さん師匠もよかったっす。

この季節は師匠の「うどん屋」を聴くとあー、うどんが食べたいって。目の前にうどんが思い浮かぶんですよぅ。



師匠方々の噺のなかに、じんわりと染み出た人の味が噺のいいアクセントですよねぇ。

目線ひとつ仕草ひとついろんなところで人を好きになる瞬間があります。



熊ん八さん:

あい。妾馬には行かないっすねぇ。

士農工商。その制度をばっさりと切り捨てる。

男の粋な部分がとても魅かれました。

メカんま(笑)なんか新作として作っても面白そうっすねぇ!!!

うわぁ、着物を着て稽古。そういう気持ちって生半可では出来ないですよねぇ。それも粋な部分だぁ。



栗坊さん:

いらっしゃいませ!!

うれしいなぁ。落語好き(笑)

そうなんですよねぇ、志の輔師匠はわりかしとりやすいですよ。広いところでやりますし。

あっという間に売切れてしまう人のを聞いてみても何でだろうって思う方もいらっしゃいますしねぇ。

高いうえに面白くないんだったら、若手の方のを聴きに行った方が数倍楽しめるなぁって思う今日この頃です。

あとで遊びに伺いますね!よろしくです。
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落語命 (栗坊)
2005-02-08 20:55:04
こんにちは。

僕も、落語がないと生きていけません、きっと。

志の輔さんは、二つ目の時しか聴いたことありませんが、最近は「すごい」というお噂をよく耳にします。でも、あまり人気でちゃうとチケット取るの大変だから、ついつい疎遠になってしまいます。
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聞きたかったなあ~ (熊ん八)
2005-02-08 19:41:08
妾馬ならず・・・ですね。

(そういえば初めて題名を聞いた時、「メカ馬」・・・サイボーグか?と思った馬鹿な私です。)

いい解釈ですね。自分もこの解釈は好きです。

もともと前半は親子の情、兄弟の情で泣かせる噺。笑って泣いてうなずいて・・・江戸前の噺。

心地よい拡大解釈ですよね。こういう風にまとめられると、武士階級のばからしさが浮き彫りになり、人としての生き様がくっきり浮かんできますよね。

ちなみに志の輔師匠は、学生時代に下宿で稽古をする時にも「着物」を着て稽古をしてました。

「こういうことが大事なんだ」と言われたことを思い出します。
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経過 (John Doe)
2005-02-08 16:08:32
もう何年も前、小三治さんのを聴きに、

スズモトへ行きました。独演会です。

それから数年、通ったのを思い出しました。

小さい頃、親が小さんが好きでよく聴いていたので、

ずっと興味がありました。

チケットが、もっと簡単に手に入ると良いのに。

一度逃してしまうと次に手に入れるのは大変ですよね。

言葉の中に、心意気がある。

その断片に、人の今までの生活がある。

人はその時だけを生きているのではない。

通って来た時間を今この時にも、

その表層に表してしまう。

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おりょ(笑) (あくあ)
2005-02-08 09:59:08
ざびさん:

いえいえ、こちらこそ。

前回も志の輔師匠の独演会でしたね。

リンク大歓迎です。

これからもよろしくです。



よよさん:

面白いっていわれちった(照)

普段の生活ではあまり言いませんよー。

言っても伝わらないですし;;

好きなんだもーん。好きな人のことをしゃべるととまらなくないですか?そんな感じです(笑)
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おもしろいよねー。 (よよ)
2005-02-08 03:16:43
何が?って、落語じゃないよ。

あくあさん。

落語の面白さは、まだまだ青い私にはわからないけど、ここまで語れるあくあさんに脱帽



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追記:リンクしました。 (ざび88)
2005-02-07 21:12:59
追記です。



リンクつけさせて頂きます。

返信する
おじゃましました。 (ざび)
2005-02-07 21:11:51
お邪魔しました。



他の方の解釈を感じることは、自分にとってもすごく影響を受けますしおもしろいことです。

またどこかですれ違いましょう。

談志師匠はこの日のネタを、1月22日の独演会でも使っていましたよ。



訪問遅くなって済みませんでした。最近は超忙しくて他の方の日記を見るのも今年初めて位でした。

これからも良いネタを書いてください。

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独演会 (あくあ)
2005-02-07 10:30:48
ワン太郎さん:

好き嫌いがあるので独演会のオフではなくって

寄席オフできたら良いですねぇ。

今、鈴元でトリが雲助師匠なんです。

聞きに行きたいけど行くなら末広にって思うと触手が伸びない顔付け。



獅篭さんの会どんな風にするんでしょうねぇ。

久しぶりなのでじっくり聞きたいっすね。



上方の落語家さんたちは芸能プロダクションに所属しているのでそれだけいろんなところに出ることが出来るのでしょうねー。
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またやってるわ~! (ワン太郎)
2005-02-06 14:47:31
 それから、寄席オフ!

参加立候補。
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Re,落語を聴こう! (Unknown)
2005-02-06 14:44:20
>獅篭さんの時は限られた時間の中で

 そうなんですよね~。

一度じっくり聞きたいんですよ。

今度の高円寺の会、ゲスト無しとの告知。

期待してもいいのかな?

 ともあれ、独演会っていうのはそういう良さがあるわけですね。



 ピンキーさんのネタに便乗。(ごめんなさい)

関西は、吉本新喜劇が普通に放映される。 関東にはそれに相当する劇団も見当たらない。 この差は大きいですよね。 関東でも昭和40年くらいまでなら、伝助劇場なんて喜劇を放映していたんですけどね。





 そして落語。

西と東では使う言葉も、聞く人たちの気質も違うわけで、別物になってしまうのは仕方が無いかなと思います。

 そんな中、鶴光みたいに全国区になったり、あるレベルを超えた人たちはエリアなんか関係なくなるんですけど。 それでも、三枝の新作なんか聞くと浮かんでくるのは大阪の町ですね~。
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落語を聴こう! (あくあ)
2005-02-06 12:29:38
でへへ、今日も行くの。落語会。むふふ。



ワン太郎さん:

長いですよ。獅篭さんの時は限られた時間の中で4人でしょう。

あまり長い席は出来ないけど、とりのときは20分くらい話すのかな。

独演会だとみっちり40分以上話したりするし、聴きごたえはありますよ。



墓場鬼太郎さん:

むふ。ごめんねー。落語のときはもうマジなモードですわー。

艶噺ぢゃないしねぇ。期待に沿えず・・・ごめんなさいです!



しろねこさん:

いやー、そういっていただけると、落語記事書いていた甲斐がありますよぉ。

ぜひ行きましょう!!

あくあといく寄席オフとか・・・

こないだろうなぁ(笑)



ぴんきーさん:

上方落語と分かれてしまっているところが今、ありますねぇ。

演芸って言うとまたちっと違ってきちゃうのかも;;

上方は笑いの芸能が盛んだなぁって思う。

うらやましいっす。
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Unknown (ぴんきー)
2005-02-05 23:52:12
落語ってなんか奥が深そうですね・・。

上方演芸とか

ラジオでよく聞きますがあれとは

違うんですよね・・・。

あれは漫才になるのかしら??

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らくごくら (しろねこ)
2005-02-05 22:31:55
しろねこは落語未体験です。

でもあくあさんの記事読んで

面白そうだーって思いました。

落語のこと何にも知らないけど

あくあさんの気分が伝染してきたようです。



八五郎、聴いてみたいな。

ありがとです。
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あれ~?! (墓場鬼太郎)
2005-02-05 15:30:39
えろっちぃオチは、どこ、どこ?
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よかったですね (ワン太郎)
2005-02-05 13:42:34
 本当にいい噺が聞けた御様子。

なによりでした。



 ところで、やっぱり、独演会っていうのは少し長い目にじっくり演ってくれるんですか?
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