Daily Bubble

映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

『小便小僧の恋物語』

2006-10-07 08:59:10 | cinema
いったいどこの国の映画なんだろう、と分からないまま観ていました。フランスやドイツなどの大国ではないな、イタリアやスペインのようなラテンの国じゃないし、スウェーデンとかノルウェーといった北欧に近い気もするけどちょっと違うかな、すこし鄙たい感じのする市電の走る都市、いったいどこ?と思ったら、ベルギーの映画なんでした。場所は首都・ブリュッセル。「小便小僧」はブリュッセルのシンボルだそうです!知らんかった…。

さて、「恋物語」なんです。ラブストーリーなんです。
小便小僧はパブリックに裸を晒していますが、主人公・ハリーはとても奥床しく丁寧に恋をします。かなり風変わりなもう若くない青年(30歳という年齢を青年というものどうかと思うけど、彼は青年としか言いようが無い佇まいなのでこう言ってしまう。)が初めて恋に落ちたのは、市電の運転手・ジャンヌ。
この二人がたまらなくいい。何がいいかって、美男美女じゃないところがすごくいい。ハリー(フランク・ヴェルクライセン)は痩せてスキンヘッドにしたシャイなロナウドといったところ。ジャンヌ(アンチュ・ドゥ・ブック)は、映画の中でチビで大根足でペチャパイでスキッ歯なんて言われちゃうけどこれがほんとなのね。二人のアパートの大家・ドゥニーズ(アン・ペーテルセン)がまた太った年配の未亡人で、彼らのちぐはぐなアンサンブルがとても素敵でした。
ハリーとジャンヌの恋がまたちぐはぐで、二人のスピードがまったく絡まないの。ハリーは朴訥にゆっくりとジャンヌを愛するんだけど(ほら、30歳にして初恋だもん)、ジャンヌは一見地味だけど自分の恋に誠実にハリーに突き進もうとする。ところがところが…。
ジャンヌの恋のアドバイザーがドゥニーズだったら、ハリーのアドバイザーは同僚(レストランの皿洗い)のD(デズロ)&B(ベルト)というやんちゃな二人。夫を亡くして50年間未亡人をしているドゥニーズと、窃盗で服役していた荒くれ者D&Bのアドバイスが功を奏するはずもなく、二人の恋は空回りしていくだけ。
ドゥニーズやD&Bのせいばかりでもなく、ハリーには踏み切り事故で家族を失い孤児院で過ごしたという過去があって感情を失ったまま暮らしているから、一筋縄ではいかない。ジャンヌにも元恋人の市電の同僚・ジジがいて、彼は未だに一方的にジャンヌを思っている。

この二人の恋を彩る小物たちがとっても素敵なんです。
ハリーがジャンヌに贈る金の靴。高くて太いヒールの金のヒモ靴が、ジャンヌにすごく似合うのね。一度は捨てられた靴がジャンヌの足にぴたっと合って、くるくるとステップを踏む様子は、ジャンヌのうきうきとした恋する気持ちを物語っているかのように見えました。
ハリーにディナーを招待されたジャンヌがドゥニーズにダメだしされながら着替える数少ない勝負服の、ダサダサ加減。「なるべく露出度の高い服を着なさい」というアドバイスを受けて、ミニのワンピースを選ぶんだけどこれがまたイケてないのね。でも、このワンピースを着たジャンヌは、不思議な可愛さと色っぽさを纏っていてなんだか可愛いのね。
ハリーはね、なぜか襟の付いた服を重ね着するのが好きで(シャツの中にポロシャツをインする)、全然かっこよくないんだけど、ニットキャップを取って髪を伸ばしたら実はハンサムさんなのかしら?なんて錯覚を起こしてしまう。
殺風景なハリーの部屋、キュートでロマンティックなジャンヌの部屋、デコラティブで時代がかったドゥニーズの部屋、などモード全開じゃない普通の人の普通の暮らしが覗けるのもとても楽しい。

さてさて、二人の恋はちぐはぐなまま進んでいって、すとんと終わります。
二人のアパートの壊れそうなエレベーターみたいに、別々のスピードで昇っていって空に駆け上がる。天井に着いたときにやっと、ハリーはジャンヌと二人きりになることができるけど、そこにはもう真っ暗い天井が塞がっていてそれを破ることができない。
天井を突き破ったエレベーターの行く先にあるものは、きっと悲しいばっかりじゃないんだと思います。だから、ハリーに最高のプレゼントを贈ることができたジャンヌはとても幸せだったんだ、と思います。

90分の短いベルギー映画。とても可愛くてしっかりとあたたかい素敵な恋物語でした。
あ、ドゥニーズ役のアン・ペーテルセンは2003年に亡くなったようです。すこし頑固なお顔の貫禄ある女優さんでした。


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5 コメント

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Unknown (Sa)
2006-10-10 09:02:50
絵文字とURLの入る位置がちがうゾ 頭の中で適所に移し変えて読んで下さい。いつもすみません
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オッケーです♪ (アクア)
2006-10-10 23:56:50
いえいえ、平気です~。

記事の編集中についうっかりエクスプローラーの「戻る」アイコンを押してしまい、何度文章を失ったことか…。こんなことをするのは、私くらいなのかしら?
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Unknown (Unknown)
2007-01-28 14:39:41
今日、見ました。
時々で、その中にも
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2段になってしまいました。 (Sa)
2007-01-28 14:43:37
という、なんだか ふわふわした感覚の残る映画でしたね。ワタシはまだきっと、あの二人と一緒にまだエレベータに乗っているのかもしれませんね。
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エレベーター (アクア)
2007-01-29 22:12:54
そうですね、映画の中であの二人は曇りがちでしたけど、きっと今頃はぽかぽかとひなたぼっこをしているのかもしれませんねぇ。
どこがどう、と言えないんですが不思議と印象的な映画で、その上手く言えないところが好きみたいです
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