一人人海戦術

世界の3%くらいの人に納得してもらえばいいかなと考える、オメガ・ブロガーを目指してみようか。

DNAはソフトウェアとしても働く

2005-10-05 10:38:15 | SFと科学
 極東ブログ様が『ジャンクDNAが否定されると進化論はどうなるのか』という面白い話を書いておられます。ヒトのDNAのうち97%ほどは働いていないと言われていたが、約70%で機能を持つことが理化学研究所などの研究によって明らかになったという話だが、知ってはいたけど、よくよく考えてみると、三つの“宗派”にこれから大きな影響を与えるでしょうね。

~~引用の引用開始~~

(かなり前略)日本語のWikipediaの同項目の解説に至っては、全体にはまだ混乱の印象も受けるが、すでに今回の理学研究所の結果も追記されていた(参照)。

 2005年、理化学研究所を中心とする国際研究グループはマウスの細胞内のトランスクリプトーム分析を行い、トランスクリプトームで合成される44,147種類のRNA中、53%に相当する23,218種類が蛋白質合成に関与しないものであること、蛋白質合成をおこなうコード配列であるセンスRNAの発現は蛋白質合成を行わないアンチセンスRNA(センスDNAと相補関係にある)によって制御されていることを突き止めた。
 この発見により、ジャンクDNAは実際には機能していることが分かり、従来のDNA観、ゲノム観を大きく転換する契機となると期待されている。

~~引用の引用終了~~ (赤い色づけは私がやった)

 普通にアンチセンスRNA(hotwiredの記事参照)と言うときは意味のある(実際にタンパク質をコードしている)DNAにふたのようにはまってメッセンジャーRNAに転写されるのを邪魔するRNAであるが、このアンチセンスRNAは、センスとペアで2本鎖RNAとして転写されるものらしい。これはRNA干渉(RNAi)とも違った形でタンパク質翻訳を制御するらしい。
 今までDNAの配列として書いてある情報に関して、「いつ」「どこで」「誰が」「なぜ」「何を」「どのようにして」のうち、「誰(何の遺伝子)が」と「何(のタンパク質)を」だけくらいしか議論できなかったのだが、アンチセンスRNAを豊富に持っていることによって、ようやく「どのようにして」が加わったわけだ。つまり、タンパク質の合成量を調節するのに半分くらいは余計にRNAを転写して制御に当たらせていたわけだ。実際はDNAに結合して転写を制御するいろいろなタンパク質群は意味のあるDNAの方に数えられているから、DNAの情報は、ハードウェアとしてより、かなりソフトウェア的な使われ方をしているのだろう。
 実は困ったことが生じた。理化学研究所のプレスリリースをまじめに読んでみた。それによると全ゲノムの約70%がとりあえず転写されていて、それが44,147種類であり、そのうち非タンパクコードRNA(ncRNA)が23,218個である。つまりncRNAは全ゲノムの約37%。ところが、31,422個のセンス/アンチセンス(S/AS)のペアが見つかったとあるので、センス/アンチセンスを合わせて31,422 × 2 = 62,844となって44,147より多い。センス/アンチセンスを合わせた数が31,422個だというミスだとしたら 23,218 + 31,422 = 54,640 となり44,147より多くなってしまう。ncRNA=アンチセンスRNAである分があるのだとすれば54,640 ― 44,147 = 10,493がそうだと言えるのだろうか。とすればアンチセンスRNAではないncRNAは23,218 ― 10,493 = 12,725がそれである。これは全ゲノムの20%
 算数の迷宮に足を踏み入れてしまっているが、S/ASのペア31,422個のところはマウスの結果なのだろうか。そうするとそれは無視して44,147 ― 23,218 = 20,929 がタンパク質になる分(約22,000といっているのと微妙にずれるが無視)。「このS/ASのRNAペアはゲノムのほとんど全領域で普遍的に起こりうるということを示唆しており」と理化学研究所は言っているので最大で20,929個のアンチセンスRNAがあるとすればそうでないncRNAは残りの2,289個だけ。これは全ゲノムのたった4%(先ほどの%もそうだが、RNAの長さとかは無視しているので大雑把だ)。理化学研究所は「アンチセンス転写は哺乳動物の転写制御に大きな役割を担っており、それらのメカニズムにncRNAが一役かっている事実は、非常に面白い結果です。」とも言っているのでncRNA≠アンチセンスRNAなのだろうか。よく分からないので後でメールでも出してみようと思う。

 何はともあれ、これが三つの“宗派”に大きな影響を与えるはずである。
 まず、「ヒトのDNAのうち97%はジャンクで3%しか働いていない」という“宗派”はやっと終焉を迎えた。当然この科学的な“宗派”は消滅するはずだ。もともとジャンクとは言わずに発現の調節とかに使われているのではないかと言われていたはずである。誰がジャンクと言い始めたのだろう。確かダークエンジェルのマックスと平成ガメラのギャオスは無駄な配列は無いことになっていたと思うが、恐らく生まれる前から死んでいるはずだ。
 それから、「高度に進化したヒトにおいてDNAの3%しか働いていないという無駄をするとは思えないので、自然選択説は誤りである」という宗派はこの点に関しては完全に説得力を失ったことになる。まだがんばるとは思うが。
 さらに、分子進化の中立説の“宗派”は微妙に変更を余儀なくされるかもしれない。アンチセンスRNA部分はセンスと同じ配列なので突然変異を蓄えておくわけには行かない。先ほどアンチセンスRNAでないncRNAの割合にこだわったが、その部分は淘汰圧の少ない(変化速度の速い)進化の予備軍としての余地が十分に残っている。で、その割合がさっきの計算から、全ゲノムの約4%,20%,37%の三択になってしまった。それとまだ働いているか分からない約30%を加えて約34%,50%,67%が中立説の居場所になった。ややこしい。多少狭まったが、むしろ一歩具体的になったというべきかも知れない。つまり、“旧ジャンク”にある程度変化が蓄積したとき意味のある配列に干渉する能力を失って、一気に新しい意味を持ってしまうというカタストロフィックなモデルも考えられるだろう。その後自然選択を受けて消えてしまうものがほとんどだろうが、中には有利に働いて群れの中に遺伝子が広まることもあるだろう。
 書いているうちに大きな勘違いに気がついて思いっきり書き直した。
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