議員に名前を勝手に使われた…はがきに「私も応援しています」 手違いというけど、法的に問題ないの?
4月23日投票の東京都大田区議選で初当選した寺田一智区議(44)=れいわ新選組=の選挙運動用はがきを巡り、「応援していないのに無断で名前を使われた」と区内の男性(38)が問題視している。寺田区議側は取材に「誤って名前を使ってしまった」と弁明しているが、法的に問題はないのだろうか。(佐藤航)
「あなたが頑張っているので、寺田さんに投票しました」。男性は投開票日の数日前、期日前投票を終えた知人から連絡を受け、耳を疑った。この知人の元に届いたはがきの表面にある「私も応援しています」の欄に男性の名前が書かれていたという。ところが、今回は応援していない。
◆亡くなった人の名前も
男性は福祉団体の代表で、福祉業界だけでなく地域に顔が広い。前回の区議選では寺田区議を応援したが、今回は立場の違いから応援要請を断っていた。男性が事務所に問い合わせると、スタッフから「手違いで推薦人リストに名前が残ってしまった」と説明を受けた。不審に思って調べたところ、寺田区議側が亡くなった人の名前を勝手に使っていたことも判明した。
男性は「公職選挙法に抵触するのでは」と、警視庁池上署に相談している。
寺田区議側は取材にメールで回答した。応援しているわけでもない男性と亡くなった人の名前を使って約30枚のはがきを送ったことを明らかにし、「選挙準備などで忙しく、寺田自身による最終確認を怠った。区議として働くことで責任を果たしたい」と辞職は否定した。池上署は取材に「個別案件には答えられない」としている。
公選法の虚偽事項の公表罪は、候補者の職業や経歴、候補者への推薦や支持に関してうその内容を公にすることを禁じている。違反すれば2年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科され、有罪が確定すれば当選は無効となり失職する。
◆過去に罰金も適用例少なく
過去には、支持者でない人の名前を選挙はがき十数枚に勝手に記載したとして、三重県議選の候補者が罰金刑を受けたこともあるが、適用例は極めて少ない。
捜査関係者は一般論として「はがきの内容が形式的に法に触れるとしても、対立候補をおとしめる目的など悪質性を立証できなければ立件は難しい」と話す。
選挙制度に詳しい慶応大SFC研究所の西野偉彦(たけひこ)・上席所員は、今回のような名前の無断使用について「選挙はがきは有権者の投票行動に影響を及ぼす可能性がある。選挙の公平性、公正性に関わる問題」と指摘。「例えば、誰かの応援を受けていると記載する場合、文書で許可を得なければいけないなどルールを設けるべきだ」と提案した。
選挙運動用はがき 公選法で規定される選挙運動用の配布文書で、郵送費用は原則公費で賄われる。選挙用との旨を表示する必要はあるが、書式や記載内容について制限はない。候補者1人につき区議選では2000枚、衆院選の小選挙区では3万5000枚を上限に割り当てられる。