森氏は五輪招致に汗をかいてきたはずだ 

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 2020年東京五輪・パラリンピックの経費分担をめぐり、大会組織委員会の森喜朗会長への反発が高まっている。最大1兆8000億円の総予算のうち、組織委の負担は5000億円だけで、招致段階で「組織委の全額負担」としていた仮設施設(2800億円)も800億円しか出さず、居直っているからだ。怒り心頭に発した競技開催自治体側の抗議に、森氏は「組織委にはまったく関係ない」と逃げた。東京都の小池百合子知事は経費分担の「作業チーム」設置を提案した。

 「あの言い方は失礼。『組織委ができる前に決まったことは、俺は知らない』というのは無責任だ!」「五輪のすべてに組織委は関わっている。真摯(しんし)に都と話し合ってほしい」

 宮城県の村井嘉浩知事は26日、東京五輪の競技開催地となる10自治体の首長の1人として、組織委の森氏らに面会した後、報道陣に怒りをこうブチまけた。

 10自治体とは、宮城、神奈川、北海道、埼玉、千葉、静岡各県と、札幌、さいたま、千葉、横浜の各市。

 森氏率いる組織委は今月21日、東京大会の総予算を最大1兆8000億円と試算した。そのうち組織委が負担できるのは5000億円にとどまり、残りは都や国、地方自治体の負担を想定していると公表した。

 これは、招致時の「仮設施設の整備費は組織委負担」(立候補ファイル)といった原則と大きく異なる。一部負担案に「寝耳に水」の10自治体の首長は、当初の原則を確認するため森氏らに面会したのだ。

 森氏は「費用分担の話し合いが遅延したことは申し訳ない」と陳謝する一方、小池氏による会場見直しに触れ、「バレーボールなどの話ばかりになり、都が話し合いを始めなかった。それが遅れた原因」と、まるで責任を転嫁するように説明し、以下のように言い放ったのだ。

 「立候補ファイルは私ではなく、東京都が作った。だから、これで組織委を怒られてもね」「仮設施設は組織委(負担)というのは、きちんとした整合性がない」

 前出の村井氏が「無責任だ!」と激怒するのも当然だ。森氏は、東京五輪の招致段階から深く関わってきたではないか。

 そもそも、森氏は国会議員時代から「暴言・妄言」で知られ、その度に、国民をカチンとさせたり、あきれさせてきた。

 森氏の失言として最も有名なのは、首相時代の2000年5月、神道政治連盟国会議員懇談会で発した「神の国」発言だろう。「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国」と発言し、その後の対応を含めて、内閣支持率は1ケタ台に向けて急落した。

 01年2月の米ハワイ沖で起きた「えひめ丸事故」の際には、報告を受けた後もゴルフを続けた。記者団から無神経さを批判されると、「ゴルフが悪いことなのか!」と一喝した。この後、国民的な批判が高まり、森政権はついに退陣に追い込まれた。

 首相就任前にも、自民党京都府連のパーティーで、「大阪はたんツボ。金もうけだけを考えて、公共心のない汚い町」といい、大阪人の反感を買ったこともある。

 大会経費が予想以上に膨らんだため、経費分担は仕方ないとしても、それを穏やかに説明して、首長や国民・県民を納得させるのがリーダーの役割のはずだ。森氏が組織委のトップのままで、本来、国民が一致団結すべき「東京五輪」を成功させられるのか。

 前出の10自治体の首長は26日、小池氏にも都庁で面会し、経費分担に関する要望書を手渡した。

 神奈川県の黒岩祐治知事は「招致時の原則は変わっていないという認識だ」と強調し、埼玉県の上田清司知事は「われわれに正式な話が来ていないのに、負担に関するさまざまな話が出ており不快だ」と述べた。

 これに対し、小池氏は年明けに都と各自治体が情報共有する協議会を開き、「年度内に負担の大枠を決めたい」との考えを示した。さらに、10自治体側の不安・不満を聞き、「都として何ができるか最大限検討する」と応じ、27日から担当者を各自治体に派遣するとした。

 東京五輪の経費は、当初見込みの3013億円から、6倍の1兆8000億円に膨張している。

 このままでは、東京五輪は、北京五輪(08年、約3兆4000億円)、ロンドン五輪(12年、約3兆1700億円)に次ぐ、歴代夏季五輪3位となる「金満五輪」となり、後世の都民や国民に「負の遺産」(=莫大な借金)を残すことになりかねない。