私はダーク・ボガートの墓にだけは行って感謝の言葉を述べたいと思います

すべての

震える新聞紙のむこうの

おじさん

の鑑

◇

のような
人ですものねえ

◇

なくなったとき

何も思わず

あー

とだけ思ったが

今になれば

申し訳なかった

◇

あのとき

状況を
全て受け止めて

いなかったんだ

◇

まだ年令が

へんなおじさん
に達して
いなかった

◇

いま達した

◇

分った

◇

それで

ありがとうを
言う気持ちになりました

◇

ああ

言ったから

もういいです

いくらか
気が済みました

◇

まあその

モデルの
マーラーと

作者の
トーマス・マンと

監督の
ビスコンティ

にじゃないのか

本当に
言うべき相手は

と言われれば

確かに
そうだか

◇

でもボガード

名演技だった

◇

新聞のとこ

荷物を思い出したとこ

頭から黒い血が出たところ

◇

ダーク

名演だったですよ

◇

安心して

お眠りください

◇

『忘れてくれ』

という

しぬほどカッコイイ
最後の言葉でしたが

すみません

こうして

度々
思い出します

お言葉に
添えなくて

◇