今日の考え事〈applemint1104〉

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NHKスペシャル「世界同時ドキュメント・私たちの闘い」の感想

2020-06-01 16:56:37 | テレビ

これは3月から5月にかけて、米国、イタリア、フランスに住む20人に自撮りをしてもらいその生活の様子を記録したドキュメンタリーです。
何人もの一般市民(職業はまちまち)が登場して動画を通してその生活や変化を映し、心情を語ります。

はじめに登場したのがイタリアのオペラ歌手です。彼は、ロックダウンされた町に向かってベランダから市民に向かって歌いかけます。
米国カンザスシティーの看護士男性は車を2千キロも飛ばして、ニューヨークの病院へ手助けに向かっています。
ある女性アーティストは3Dプリンターを使ってフェイスシールドを手作りし、病院や地下鉄の職員に届けています。

ニューヨークでベーグル店を営む移民の男性、看護士の母親を亡くした息子、会社経営の男性、医療関係者の動画が続きます。

3月下旬、ついにイタリアで感染爆発が起こりました。死者は増え続け、町は緊張を強いられ、人々は気力をなくしています。
オペラ歌手は歌うことを止めてしまいました。自粛で自宅にいる人たちはストレスで家族の衝突が増え、子供は追いつめられています。

その2週間後には米国で感染爆発が起きます。
医療現場が崩壊し、医療関係者の疲労はピークに達します。
ニューヨーク州では一日感染7千人、毎日百人が亡くなっています。
自殺する医者が出、離職者も後を絶ちません。遠方からやって来た看護士も疲労困憊しています。

ロックダウンの都市に人の姿はなく、ドローンが市民を監視しています。
米国の外出禁止は一月を過ぎ、各地でデモが起き始めました。

絶望と先の見えない不安の中で、やがて人々は少しずつ希望を探し始めます。
一人一人、嘆いているだけでなく自分に出来る事を模索し始めました。

イタリアでは食事に困る人の為に、食事を高層階から籠に乗せて通りに降ろして振る舞っています。
フェイスシールドを作り続けるアーティストにも、支援の人たちが現れ始めました。
米国では若者が新薬の治験に応募して、注射を受けました。
コロナから回復した男性は、抗体を提供することにしました。

ニューヨークの午後7時、通りで賑やかな音が聞こえます。
拍手などで一斉に通行人が医療従事者たちに感謝の気持ちを表すのです。

感染者が退院する時にはビートルズの「ヒアカム・ザ・サン」が流れて、医療者たちが祝福します。クラクションとどよめきの中、患者は退院して行きます。
私はこれを見ながら涙が流れました。
そうやって人種も国も違うけれど「自発的な連帯」で次第に人が結ばれていく様子が映ります。

二ヶ月が過ぎた5月末、イタリアでロックダウンは解除され、再び日常が動き出しました。町に人が集まり出しました。
イタリアのオペラ歌手は広場で歌を歌っています。
ニューヨークのベーグル店経営者は店を開きました。客も戻っています。

世界の感染者は570万人、死者が35万人、医療従事者が数千万人いるそうです。

これまでの日常を一変させたコロナ禍。
沢山の命を奪い生活を奪い、今までと全く違う世界に塗り替えました。
これから人は新しい日常に向かって行かねばなりません。
一人一人が自問し何かを変えながら、新しい一歩を踏み出さなければならないのです。決意が言葉少なに語られます。

ウィルスの発祥地や原因、政治的なことには一切触れず、淡々とした人間の営みだけを追う構成に、胸が熱くなりました。
ドキュメンタリーは抵抗なく見られましたが、ややまとまりに欠けていた気がします。
でもアメリカの陽気さ、仏、イタリアの人たちの大らかさが私たちにはないものでした。胸に染みました。



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