【マーケティング・キーワード】

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「ウルトラマン」に見る企業のマーケティング戦略

2006-10-06 18:20:04 | Weblog
 はじめまして、大野です。企業コンサルティングの他に、展示施設やショールームのプランニング、イベント・プロデュース、映像やパネル原稿の制作などまで行う異色のコンサルタントです。

 先日、川崎にある美術館で「ウルトラマン伝説展」という企画展をやっていました。「ウルトラマン」は、1966年に「ウルトラQ」に続いて放送された日本のTV史上に残る番組です。単に第一次怪獣ブームの立役者となったというだけでなく、カラーTV時代の日本版ヒーロー番組の幕開けでした。

 「ウルトラマン」の放映終了後も、数々のウルトラ・シリーズが生み出されました。「帰ってきたウルトラマン」は第二次怪獣ブームの火付け役となり、生誕40周年になる今年は「ウルトラマンメビウス」が活躍しています。「ウルトラマン」は、なぜブームになったのでしょうか?また、「ウルトラマン」は、なぜ今でも愛されているのでしょうか?

 初代「ウルトラマン」成功の理由はいろいろ考えられますが、ターゲットおよびコンセプトの明確化、時代性への適合、製作者のメッセージなどを上げることができます。「ウルトラマン」を一言でいうと、正義の宇宙人ウルトラマンが人類を襲う怪獣をやっつける子供向け番組です。ウルトラマンの登場は、時代の要請でもありました。戦後の高度成長時代に、強い国を目指していた日本にとって、巨大ヒーローの登場は国民に夢を与えました。

 しかし、「ウルトラマン」は単純な勧善懲悪番組ではありません。怪獣は、人類の発展過程における犠牲者であり、人間が自然や宇宙のバランスを崩すことによって出現します。侵略戦争、自然破壊、宇宙開発など、社会問題をテーマにしながら、犠牲を省みず文明の発達へと突き進む人類への警告を発した「ウルトラマン」は、このメッセージによって、いわゆる従来の子供番組には終わらない内容となっています。

 「ウルトラマン」を企業になぞらえてみましょう。企業戦略を考える上でも、ターゲット・コンセプト・時代への適合性・メッセージは、とても重要な要素です。例えば、商品のターゲットが不明確な企業がよくあります。「すべての人がターゲットです」と言いたいのでしょうが、この戦略は非常に無謀です。「すべて」の人がターゲットということは、「すべて」の人に対して効果的な訴求をするということになりますが、限られた予算ではほとんど不可能です。ターゲットがすべて同じ方向を向いている、つまり、好みや主義、ライフスタイルなど、商品やサービスの購買に結びつく要素がすべて同じということはありえないからです。

 また、商品のプロモーションを行う場合に、販売コンセプトを含め戦略を立てずにいきなりWebやカタログ、広告などを出してしまう企業がありますが、これも無謀です。取りあえずPRすれば売れると考えるのでしょうが、どのように売っていくのかを決めずにPRしても、的外れになる可能性があるからです。

 時代への適合とは、「マーケットイン」の考え方です。消費者ニーズをうまく捉えた商品でないと売れないのはもちろんです。しかし、売り手側のメッセージ、すなわち商品の差別化ができないと消費者の購買活動を自社商品へと向かわせることはできません。これは、「プロダクトアウト」の発想です。「マーケットイン」と「プロダクトアウト」をうまくバランスさせることが企業戦略の基本になります。

 売れる商品やサービスには、それなりの理由があります。その理由を作り出すのが、事業戦略であり、マーケティング戦略です。マーケティング戦略とは、売れるしかけと仕組みづくりのことです。上記のターゲット・コンセプト・時代への適合性・メッセージは、この中の重要な要素となっています。最適な戦略は、業界や業種、企業によってそれぞれ違いますし、時代によっても異なります。私たちは、貴社に最適な戦略を提案し、成長へのお手伝いをしたいと考えています。