古巣の保険会社にて

2007-06-15 17:33:33 | アパート建築営業マン

当方が保険会社のオフィスに姿を現すと、元・同僚たちは驚いて立ち上がった。
「おー、懐かしい・・・!」、「生きてたか・・・」という、感嘆の声が洩れる。

多くは、同じ時期に大手銀行を退職してこのオフィスに移ってきた。苦楽を共にしてきた仲間だ。もっとも、当方は途中から食えなくなってきたので、お先に失礼して退職したのだが・・・。

あの頃、日本経済は、今となっては思い出すのも難しいほどの大不況だった。日本は、まさに土俵際まで追い込まれていた。特に、銀行業界は最悪だった。あたかも沈む船からネズミの大群が逃げ出すように、銀行から人材が続々と流出し、転職市場は銀行出身者で急にあふれ返ったのである。そんな中、保険ビジネスで一旗揚げようと、果敢にチャレンジした人々がここにいる。

だが、『歩合制保険外交員』は、「年間30万人が流入し、30万人が流出する」と言われるほど人の出入りが激しい世界だ。「3年続けたら、それだけで偉い」と言われるほど、保険で食っていくのは難しい。

ましてや「学力抜群の秀才! その上、保険営業マンとしてもヤリ手で、保有契約高を積み上げ、独立代理店になって大成功!!」とかいうのなら、本当にたいしたものだ。「素晴らしい」の一言に尽きる。だが、なかなかそうもいかないのが人間だ。やはり、天は二物を与えないのである。

しかし、一敗地にまみれたとはいえ、当方はまだ懲りていなかった。あたかも、神に再び戦いを挑んだ堕天使ルシフェルのように、またしても、今度は『アパート建築飛び込み営業マン』として無謀な再挑戦をしつつあったのである・・・。

退職証明書

2007-06-15 17:33:02 | アパート建築営業マン

当方は、「下記の者は、当社を既に退職したことを証明します」と書かれた書面を持参して、なつかしい前職の勤務先・外資系保険会社のオフィスへと向かった。人事責任者に会ってこの書類にサインしてもらい、アパート建築会社に提出するためである。

地下鉄に乗って、久しぶりの都心エリアに入る。

保険会社を退職してから、アパート建築会社への入社を決意するまで、しばらくの期間が経っていた。だから、このオフィスを訪れるのは久しぶりだった。時は、六月の終わり頃。すっかり蒸し暑くなっていた。フリーターの目には、整然とした都心のビジネス街を忙しそうに行き来する、サラリーマンの白いワイシャツ姿がまぶしい。もっとも、自分も今はスーツ姿に戻っているのだが。

ビルの入り口に入り、エレベーターを上がった。

必要書類

2007-06-15 17:32:10 | アパート建築営業マン

入社するに当たっての手続きは、簡単だった。経歴不問なので、とくに調査する事項もないのである。必要書類は2つあった。ひとつは、「自己破産していない」という役所の証明。

この会社では、「サラ金で借金している」というような人間は、歓迎されるのだそうだ。なぜなら、「追い込まれて必死で働くから」だという。だから、多額の借金を抱えて困っている人を積極的に採用していた。だが、それが行き過ぎて、いろいろと問題が生じたのだという。そのため、「破産していないという証明」が必要となったのだ。

ちなみに当方は、「資産もないけど負債もない」という、ニュートラルなポジションであった。そのため、後には「お前も借金して追い込まれろ!!」という理不尽な要求(?)を受けたこともあった・・・(笑)。

もうひとつの書類は、やや面倒なものだった。なぜか、「前の勤務先を退職したという証明書が欲しい」という。どうしてそれが必要なのか、よく分からない。おそらく、前の勤務先に所属したまま一種の「二重入社」みたいなことをした不心得者が過去にいたので、再発を防止するためなのだろう。

とりあえず「退職証明書」を持って、前の勤務先(生命保険会社)に向かった。責任者にサインしてもらって、退職を証明するためだ。

応募の動機

2007-06-15 17:31:53 | アパート建築営業マン

当方は、東京都内の郊外の支店に入社した。「アパートを建てるという仕事柄、空き地の多い郊外がいいだろう」と考えて、かなり遠く離れた郊外店に入社希望を出したのである。もっとも、そう考えたことだけが理由ではなかった。結局のところ、「求人雑誌でたまたま目にしたのが、その支店の人員募集広告だった」というのが最大の理由であった。

喫茶店で求人雑誌をパラパラとめくりつつ、「ココは面白そうだな」と思い、携帯で人事担当者に電話して「求人に応募したいのですが」と告げたところ、「明日、面接に来てください」と言われた。さっそく行ってみたところ、その場で即決だった。経歴は一切不問。人事担当者は、当方が持参した履歴書を見て、学歴・職歴にとても感心していたが、経歴不問であることに変わりはない(笑)

イイカゲンな世界だが、「当たれば一攫千金」というところがミソだ。銀行を退職して歩合制保険外交員になった時と同様、また「なんと無謀な・・・」と呆れられることだろうが、やってみる価値はありそうに思えた。

なぜ、あのような仕事を・・・

2007-06-15 17:27:49 | アパート建築営業マン

今にしてみると、「アナタは、何故にあのような仕事をしていたのですか?」と聞かれることが、しばしばある。「あのような仕事」とは、アパート建築・飛び込み訪問営業マンのことである。

そもそも、アパート営業の道に入る以前、当方は銀行時代の先輩に誘われ、銀行を退職して外資系保険会社に入社した。その後、保険会社を退職して、しばらくフラフラしていた。よく言えば「フリーター」、悪く言えば「失業者」である。

さすがに、「いつまでも遊んでるワケにはいかん。再就職しよう」と思い立ち、とりあえずコンビニで買った某求人雑誌を見たところ、アパート建築会社の求人広告が目に付いた。いわく、「何の知識も要りません。ひたすら飛び込み訪問すればいいだけ。年収2千万プレーヤーもゴロゴロしてますぜ!」

高額の報酬にひかれ、深く考えずに応募したところ、即決した。いきなり「来週から出勤してください」といわれた。こうして、応募を思い立ってから一週間と経たないうちに、新たなる職場に出社していたのである。まさに、フリーターがバイト先を決める程度の勢いであった・・・。

元・アパート建築営業マン

2007-06-15 17:18:15 | アパート建築営業マン

当方の前職は、アパート飛び込み訪問販売であった。

ざっと、こんな世界



上司 「よし、今日はお前に我が社の営業の極意を教えてやる! 
    今夜は一緒に夜訪するぞ!!」

筆者 「ハイ!」

~夜9時(辺りは真っ暗)~

上司 「ここは地主の家だな。なんだ、雨戸が閉まってるな。よし、いくぞ」

ドン!ドン!ドン!(雨戸を叩く音)

上司 「反応がないな・・・。ひょっとして留守なのか??」

ドン!ドン!ドン!(さらに雨戸を叩く音)

家の中から声が聞こえてきた 「うるせえぞ、バカヤロウ!!」

上司 「・・・・・・。どうやら、ここは見込みがなさそうだ。
   こんなところは見込み客リストに挙げるなよ。さあ、次いくか!!」

プロフィール

2007-06-15 17:15:59 | プロフィール
東京大学経済学部卒・大手銀行出身。歩合制保険外交員・アパート建築営業マンを経て、不動産マーケットの世界に転じる。
  
現在は、大手コンサルティング会社に勤務し、不動産投資ファンドの組成に従事している。
 
生き字引・大先生・宇宙人・・・等々、数々の異名を持つ男