『俳壇』・連載「結社の声―わが主張」―「青草」 ●地域発 神奈川県
「青草」 主宰草深昌子



結社の成り立ち
「青草の会」は今から十四前、平成二十一年に草深昌子によって、厚木市で発足しました。結社誌「青草」の創刊は平成二十九年二月です。
「青草の会」は、厚木市の生涯学習の一環として催された俳句講師を草深が引き受けたことに端を発しています。講座終了後も受講生が自主的に俳句会を発足し、次々と句会が増えましたので、これらを一つにまとめました。
平成二十八年、松尾まつをが青草新年合同句会を実施、合同句会記念句集『青草』を発刊しました。年が明けて、草深昌子句集『金剛』の出版記念祝賀会が霞が関ビルで開催されました。岸本尚毅氏、岩淵喜代子氏はじめ錚々たる俳人のご臨席を賜り、有意義にも楽しかった会員の感激が結社誌「青草」創刊の熱意となって実を結んだのでした。切磋琢磨の情熱を絶やさなかった会員のおかげで、果実が熟すように自然に成り立ちましたのが「青草」です。
じっくりと時間をかけて熟成された、濃密なる俳句の仲間であることが私達の誇りです。
「青草」は、まさに草莽の中から土筆のように萌え出てきたもので、地域に根差した力強い「座の文学」誌です。
わが主張
青草はあをあをとしています。
青草はいきいきとしています。
春は芳しく、夏は茂って、秋は紅葉し、冬は枯れ、
やがてまた萌えはじめます。
四季折々の変化こそがもののあわれです。
二度と還らない私たちの命は、変わることなく巡ってくる永遠の命の中にあるのです。
さあ、今を生きる「命のよろこび」を詠いましょう
「青草創刊のことば」ですが、この言葉は今もって変わることなく、私たち会員の目標です。 いきいきと笑いの絶えない句会が継続している証が、ここにあるのです。
春夏秋冬の移り変わりは時間です、四季の風物は空間です。時間と空間、この交点こそが、現在ただ今の「季題」にほかなりません。
花の命も、鳥の命も、人間の命も、自然の中にあって、「命ひとつ」に生かされています。ひとつの命が花になり鳥になり人間になって生きているという、大峯あきら先生に教えていただいた鮮やかな真理の幸せを嚙みしめたいものです。自然の中にどっぷりと浸って季節の移り変わりを感じる、何の計らいもなく、正直に詠う、それが「青草」の俳句です。それが「命のよろこび」です。
この稿を書くに当たって心を新たにする思いがあります。
ある年、奥様を亡くされたばかりの九十歳の方が入会され、初めての句会で主宰特選を得ました。
あの人は焼藷好きな人だつた 吉田良銈
彼が入会の問い合わせを私にされた時、「どうぞどうぞ」と猫撫で声で勧誘されるかと思いきや、「歳時記はお持ちですか」ときっぱり問われた、高齢者を敬して遠ざけるのでなく、毅然たる態度に、「御主(おぬし)できるな」と思ったという。以来、この事を繰り返し聞かせてくださった。その度に、主宰も会員もどれだけ励まされ、背筋を正される思いをしたことでしょう。最期まで真摯に学ばれた姿勢を通して、教えることは学びの途中であることに心から気付かせて下さった、そのご恩を忘れることはありません。
主な活動
「青草」の公式ホームページ「青草俳句会~命のよろこび」を開設しています。また主宰のブログ「草深昌子のページ」は、平成十八年に立ち上げて以来十八年間、日々更新中です。
「青草」の年間行事は二月の新春句会に始まります。
春と秋には、青草中央吟行会があります。吟行地は芭蕉記念館、小田原城址、相模川界隈など、遠近さまざまです。
「青草」創刊の前年、厚木市ことぶき大学開催にあたって草深昌子が「俳句の話」を講演しました。この経験があって、「青草」主催で講演会を持ちたいと願いました。
平成二十九年「俳句のお話とハープを聴く会」では、「松尾芭蕉の俳句と文学」と題して松尾まつをが講演、令和元年には「俳句と仏教」講演などが人気を呼びました。
令和四年、「青草創刊五周年記念俳句会」を開催、これを機に編集長は松尾まつをから佐藤健成にバトンタッチしました。
対面句会中止に対応した通信句会、ネット句会は月例句会として定着、また毎日俳句大会ほか、各方面で入賞者も多く、新進気鋭の会員の努力は着実に実っています。
この上は句集刊行など、更なる前進を目指して、会員各々が楽しみを増やしてほしいとものと願っています。
同人作品
石蕗の花さかまく波をよそに咲く 草深昌子
剥き出しの根のあらあらと冬紅葉 石堂光子
年用意畑から松を切り出しぬ 石原虹子
手を合はせ開きしほどの日記買ふ 泉 いづ
国道の時雨るる先は街の景 市川わこ
短日の開けてまた閉づ雨戸かな 伊藤欣次
胸に抱く児の手が先に破魔矢受く 伊藤 波
大鍋におでん仕込んで煤払ひ 漆谷たから
三更や嚏大きく二度三度 大村清和
ずぶ濡れに走る小犬や露葎 岡本きさえ
干し物を取り込む西に山眠る 奥山きよ子
黒豆や一つ抓めば山崩れ 加藤かづ乃
江戸城の石の鑿跡冬に入る 加藤洋洋
アルミ鍋ふくらんでくるおでんかな 川井さとみ
一升瓶抱へ来る子の御慶かな 川北廣子
凍てし朝竿拭く布はじやりじやりと 神﨑ひで子
豆腐屋の甘き空気や冬の朝 木下野風
大家族ゐるかのやうに葱刻む 日下しょう子
夜もすがら降つて裏山雪合戦 黒田珠水
良い歳をとつたと言はれ初鏡 河野きなこ
そそそそと前座の足袋や品のよき 小宮からす
父が読み弟が泣く歌留多取 古舘千世
手袋を投げ捨てここが勝負所 佐藤健成
日輪や元朝の身をうち曝し 佐藤昌緒
思ふことつぎつぎとあり初氷 柴田博祥
奥までも届く日差しの淑気かな 田中朝子
セーターの胸の膨らみマリアかな 冨沢詠司
多喜二忌や不在札立つ駐在所 中澤翔風
小なりと言へども初荷電子辞書 中原初雪
入口に泥付き葱は立ててあり 芳賀秀弥
初春や能装束は錦なる 間 草蛙
母の手の布団作りや真綿張る 長谷川美知江
群がつて餌のおこぼれ寒すずめ 東小薗まさ一
大年の大三角を仰ぎけり 平野 翠
寒の水汲むやすぐさま牛の声 二村結季
渓谷の狭間を星の流れけり 町田亮々
ふつくらと包み千両もたさるる 松井あき子
空港の展望デッキ小春かな 松尾まつを
アイゼンの一歩一歩に風真向き 森田ちとせ
建国日ゴミ収集車来たりけり 山森小径
冬ざれや亀虫入る戸の隙間 湯川桂香
大晦日この日こそはと一番湯 渡邉清枝











