草深昌子選

二つ星迎へ夜つぴて歌ふなり 石原虹子
天の川を挟んで輝く、織女星(織姫)と牽牛星(彦星)を「二つ星」という。
この二星が天の川を渡って一年に一度の逢瀬を果たすのが七夕である。
星祭のこの夜、虹子さんは「夜つぴて」、そう、よどおし歌ったというのである。
子供の頃の懐かし郷愁が詠わせた一句であろうか。
七夕の句として順当なものに違いないが、私にははっとするような特異な輝きをもって迫ってくるものであった。
子供のこころを持ち続けていなければ、詠えない清純そのものの「二つ星」である。
ポン菓子の爆発音や秋の空 松井あき子
ポン菓子とはなつかしい駄菓子である。戦争が終わったばかりの子供の頃、どこからかオッチャンがやってきてそれらしい機械を動かす間合いがあって、その一瞬の爆裂音にいっせいに飛び上がった、ポン菓子の出来上がりである。
でもこの句は回想に非ずして、今の世の出会いがしらの光景だろう。
戦渦のいまわしい爆発音ならずして、この句のバクハツオンのひびきは大いに華やいでいる。
爆発音の前に「ポン」がちょっと笑える、そんな楽しさ。
晴れ上がった秋の空がどこまでも見わたされるのである。
朝蜘蛛を庭に放つや盂蘭盆会 二村結季
盂蘭盆会には、家のうちそとに、その道筋があるかのように先祖代々の御霊がただよっているものである。
ことに朝蜘蛛は縁起のよいこととて、祖霊への感謝の気持ちにかぶさるものでもあるだろう、命をいつくしむ清らなる心がしのばれてならない。
蟻塚は掃かず八月十五日 結季
ここにも戦争を悼み、いのちの平穏を希求する心がこもっている。
両句とも心がこもってあればこその、さり気ない表現である。
天の川を挟んで輝く、織女星(織姫)と牽牛星(彦星)を「二つ星」という。
この二星が天の川を渡って一年に一度の逢瀬を果たすのが七夕である。
星祭のこの夜、虹子さんは「夜つぴて」、そう、よどおし歌ったというのである。
子供の頃の懐かし郷愁が詠わせた一句であろうか。
七夕の句として順当なものに違いないが、私にははっとするような特異な輝きをもって迫ってくるものであった。
子供のこころを持ち続けていなければ、詠えない清純そのものの「二つ星」である。
ポン菓子の爆発音や秋の空 松井あき子
ポン菓子とはなつかしい駄菓子である。戦争が終わったばかりの子供の頃、どこからかオッチャンがやってきてそれらしい機械を動かす間合いがあって、その一瞬の爆裂音にいっせいに飛び上がった、ポン菓子の出来上がりである。
でもこの句は回想に非ずして、今の世の出会いがしらの光景だろう。
戦渦のいまわしい爆発音ならずして、この句のバクハツオンのひびきは大いに華やいでいる。
爆発音の前に「ポン」がちょっと笑える、そんな楽しさ。
晴れ上がった秋の空がどこまでも見わたされるのである。
朝蜘蛛を庭に放つや盂蘭盆会 二村結季
盂蘭盆会には、家のうちそとに、その道筋があるかのように先祖代々の御霊がただよっているものである。
ことに朝蜘蛛は縁起のよいこととて、祖霊への感謝の気持ちにかぶさるものでもあるだろう、命をいつくしむ清らなる心がしのばれてならない。
蟻塚は掃かず八月十五日 結季
ここにも戦争を悼み、いのちの平穏を希求する心がこもっている。
両句とも心がこもってあればこその、さり気ない表現である。

一点の雲広ごりて処暑の雨 松尾まつを
処暑の節は、陽暦では8月23日頃。さっきから一つ不穏なる雲が出ていたが、それがやがて広がって、終には雨を降らしたという一句。自然現象をそのまま描写して、何の飾りもない、それこそがまさに「処暑」という節季の意義を表出している。
暑さがおさまるという、しみじみとした実感がある。
星月夜人は仰のき歩きをり 冨沢詠司
たくさんの星がきらめいて月夜のように明るいというのが「星月夜」。月の光にあらずして、星の光をいうのであるが、言葉そのものがすでに美しい。
そこで掲句は、何の飾りも付けずに、「人は仰のき歩き」とごく普通に詠いあげて、むしろ星月夜の本当を表出している。
当たり前のようで、当たり前でない詩情が醸し出されている。
三叉路に人の影ある盆の月 石本りょうこ
「三叉路」の措辞が、「盆の月」をいやがうえにも輝かせている。
なぜ三叉路がいいのかと説明してしまうと一句の情趣が台無しになりそう、直感的な感受がほしいところ。
ただ、道路が三叉に分かれているところにくると、人は誰しもふと立ち止まるのではなかろうか、その刹那がただの月ならずして「盆」の月を大きく見せるのである。
秋風や科の木蔭に昼寝して 菊地後輪
科の木というものがどんな木とも知らずして、即座にこの秋風のなつかしさに吹かれるような気分になった。
「シナノコカゲ」たるひびきが爽やか。
呑気に昼寝なんかして、いい気なもんだと言われそうな一句である。
そんな感覚が「色なき風」といいう秋風の本領を発揮させているのかもしれない。

睡蓮に欄干の影くつきりと 石堂光子
鶺鴒がちよんちよん渡る舗道かな 永瀬なつき
百日紅花の向き向き広がりぬ 大村清和
炎天の庭に降りたつ雀かな 加藤洋洋
秋の風少し値の張る靴を買ふ 関野瑛子
課題図書開かぬままやつくつくし 川井さとみ
手の甲の皴深きかな秋の風 山崎得真
関西弁まねる江戸つ子夏休み 古舘千世
よるべなく蓮から蓮へ糸とんぼ 平野 翠
新涼や美白クリームやはり買ひ 小宮からす
レジ袋一番上に今日は桃 中原初雪
もう一歩もう一歩寄り稲の花 石野すみれ
新涼や鯛のうす塩かぶと焼 中澤翔風
秋の風ふと天命を思はるる 鴨脚博光
朝まだき岩間のおこぢよ露に消ゆ 森田ちとせ
蹠を電気が走る雷の朝 日下しょう子
新しき靴はき慣らす星月夜 伊藤 波
人の子が迷ひ込んだる墓参り 湯川桂香
雲少しかかりたるまま盆の月 佐藤昌緒
道いつぱいひろがり帰る星月夜 神﨑ひで子
夏場所や女ばかりの桟敷席 佐藤健成
鶺鴒がちよんちよん渡る舗道かな 永瀬なつき
百日紅花の向き向き広がりぬ 大村清和
炎天の庭に降りたつ雀かな 加藤洋洋
秋の風少し値の張る靴を買ふ 関野瑛子
課題図書開かぬままやつくつくし 川井さとみ
手の甲の皴深きかな秋の風 山崎得真
関西弁まねる江戸つ子夏休み 古舘千世
よるべなく蓮から蓮へ糸とんぼ 平野 翠
新涼や美白クリームやはり買ひ 小宮からす
レジ袋一番上に今日は桃 中原初雪
もう一歩もう一歩寄り稲の花 石野すみれ
新涼や鯛のうす塩かぶと焼 中澤翔風
秋の風ふと天命を思はるる 鴨脚博光
朝まだき岩間のおこぢよ露に消ゆ 森田ちとせ
蹠を電気が走る雷の朝 日下しょう子
新しき靴はき慣らす星月夜 伊藤 波
人の子が迷ひ込んだる墓参り 湯川桂香
雲少しかかりたるまま盆の月 佐藤昌緒
道いつぱいひろがり帰る星月夜 神﨑ひで子
夏場所や女ばかりの桟敷席 佐藤健成









