『俳句四季』2025年3月号
わが道を行く 草深昌子

新作15句
遠く見て
遠く見て
遠く見て墓場広しや布団干す
冬紅葉空に近くてちぢれをり
段ボール噛んで冬日の清掃車
暖房や首を伸ばせば海が見え
赤松のふくら雀をこぼしけり
寒晴の墓域広くてはぐれたる
時雨忌の昼を遊んで夜を酌んで
子ののぞくものをのぞくや懐手
落葉してうつろの穴の幹に開く
天つ日は雲の彼方や蝉氷
焼芋を食うて別れし運河かな
初霜や案山子のほかに人を見ぬ
木の椅子に木の鋲浮くも日短
金蛇のあはれ掌にのる小春かな
一茶忌の机に蠅とゐたりけり
自選40句
風にうちたたく小判や小判草
青田風とは絶えまなく入れ替はる
線香と数珠をバッグに朝ぐもり
夏や鳥水に映りて空をゆく
とある日や寄席に笑うて章魚食うて
夏鴨の鳴いて日中を飛びにけり
大空は大穴なりし雲の峰
ぼうたんに非のうちどころなくは無し
妖怪の汗のちらばる楽屋かな
手の甲に来たる揚羽の翅ひらく
肌脱ぎのその強運をうたがはず
夏館ものの盛りは過ぎにけり
狂ふかもしれぬ手を挙げ踊るなり
やはらかになつてきたりし踊の手
おしなべて秋草あかきあはれかな
七夕の傘を真つ赤にひらきけり
羽織りたるものの重みも月夜かな
二人して二百十日の森に入る
はたはたや峠に住みてものしづか
読み書きのいよよ楽しやけふ子規忌
子規や今つくつくぼーしつくぼーし
はかなげに咲くが如くに菌かな
柿盛るや笊にバケツにリヤカーに
めいめいのことして一家爽やかに
蜻蛉の顎つきだす秋の風
雲去れば雲来る望の夜なりけり
水涸れて日向のなんとあたたかな
セーターの黒の魔術にかかりけり
末枯の担架格納箱長し
薪積んで冬の日向に崩れさう
おいぬれば日向ぼこりをひもろぎに
寒晴や鼈甲飴は立てて売る
赤子はやべつぴんさんや山桜
花散るや何遍見ても蔵王堂
春林のどこやら星のにほひせる
さへづりやたうたう落ちし蔵の壁
お彼岸や林の深く野の広く
遠足のどつと笑ふは代官所
足の向くところかならず春の泥
奥つ城のほかは春田でありにけり

略歴
1943年 大阪生れ
1977年 飯田龍太主宰「雲母」入会、
原裕主宰「鹿火屋」同人を経て、
2000年 大峯あきら代表「晨」同人
2017年 「青草」創刊・主宰
句集に、『青葡萄』『邂逅』『金剛』
青草」主宰・「晨」同人 俳人協会会員






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