千葉に巡回してくるまで待てず、静岡まで行ってきました。
若冲アナザーワールドは本日が最終日。
朝一から行ってみたのですが、入ってすぐのところはものすごい混雑。
こういう時は逆から回るに限ります。
後ろから見て、空いてるところを先に見て何度も見直してきました。
いや~、もうほんとは全部書きたいくらい。
でも、現実的でないし、メリハリも無くなってしまうので泣く泣くセレク
ト。
○雪梅雄鶏図
今回展示された中で一番緻密で丁寧に描かれてるのがこの雪梅雄鶏図。
動埴綵絵につうじる完成度。雪のべっとりとした質量の感じは見事。かと
思うと岩はカクカクとしたフォルムで描かれていて、一筋縄ではいかない
感じもまた若冲っぽいのです。
○墨竹図
なんかとんでもないものを見てしまいました。グラデーションとかな
くって墨の黒のベタだけなんですが、圧倒されます。
竹の幹に当たる部分は普通なんですが、そのさきの葉の部分がおかしい。
筆で点描してて、とても江戸時代の絵画のテイストではないのです。むし
ろ、近現代の作家の絵画のよう。完全にやられたなあって思いました。こ
ういうのに会えるのって幸せ者だなあと思います。
○梅鶴図
ご存知、若冲の鶴。今回も鶴が描かれていたのは多かったのですが、一
点選ぶならこれを挙げたい。もう、キョロちゃんです。
卵のかたちの向こうにくちばしだけ見えてる。このフォルムの妙さ加減。
しかも、この卵の丸の線がスピードを持って迷いなく一気に描かれたのが
わかります。
○寒山捨得図
こちらも後ろ向き。若冲ってこういう一見ひとを食った構図が好きなよ
うです。蓬髪という放射状に伸びるボンバヘッドが二人。異様だけど見て
何が描かれているのやか気付いた瞬間の気持ちよさと敬意の降臨。
○狗子図
これはパッと見て、「ネコちゃんかわいい」という声を会場で何度とな
く聞きました。が、これはブチのワンコです。デフォルメされて現実のイ
ヌとは違うのですが、まるまるでころっころのワンコにしか見えません。
この抽出の眼力、再構成の画力。おそるべし。
○出山釈迦図
ほぼ同じ構図のカラーの釈迦図もありますが水墨のモノクロのほうがす
ごいことになってます。衣の襞を描くのに異なる墨の色でひたすらに描い
た等高線の如きライン。仏の無限的なイメージに連なってるなあと思いま
した。
○大根図
かわいい!なんでこんなのが描けるんだろう。ただの大根です。でも、
フレーミングと構図がうますぎます。大根は先っちょの二股に分れた部分
と葉っぱの着いた部分以外がフレームの外に出てしまってて描かれていな
いのです。しかも、先っちょのその先に二羽の蝶々。お見事!
○蔬菜図押絵貼屏風
ただただど迫力。小さいはずの野菜たちが屏風にどーんと描かれてま
す。かぼちゃ、かぶ、蓮根、椎茸などなど。なんでもないはずのものなの
にそこに命が宿っていました。
○百合図
ユリが描かれてますが奥と手前とでまるで印象が異なります。奥のカノ
コユリは水墨で、手前のテッポウユリは墨と淡彩でそれぞれ描かれてま
す。モノクロとカラーで描かれた二種類の百合がお互いを見ているかのよ
う。決して出会うことのない異世界の住人のように。危うげなテイストが
なんともいえません。
○樹花鳥獣図屏風
実はこれまでお目にかかる機会に恵まれず、今回初めて会うことが叶い
嬉しいです。プライスコレクションのほうのも暫く見ていないので、これ
は新鮮でした。手法としてやはりこれはあり得ないですよね。グリッド状
の小さな四角。考えてみただけでも気が遠くなります。鮮やかな色彩の動
物たちがなんとも楽しい。
この写真のは会場入り口にあった撮影可の高精細複製品とのこと。よく再現できてます。
○花鳥図押絵貼屏風
どれも高いクオリティで描かれてるのですが、右隻の右から三つ目の鳳
凰がひとつ抜けてます。花をバックにした横顔がなんとも涼しげでかっこよいのです。
そして、あの尾のハートマーク。なんとも言えません。
○鯉図押絵貼屏風
!!こんなのもあったの?展示の最後にとんでもないのが控えてまし
た。なんと六枚全て鯉が描かれてます。目を見張ったのはその水流の尋常
ならざる描写。あり得ない立体モデリングみたくなってて、面と層を構成
しているのです。ほかの江戸絵画でこんな水の書き方を見た覚えがありま
せん。
点数も多く若冲の面白さを網羅した内容で本当に心から楽しめました。満足です~。
象さんに会いたかったのですがこちらは前期のみの展示で今回は見られず。
若冲ワンダーランドに続いて、今回のアナザーワールドの図録も買いました。
会期は本日で終了しますが5月22日(土)~6月27日(日)で千葉市美術館に巡回します。
こちらも行きますよー。
<若冲関連記事>
・若冲ワンダーランド(MIHOミュージアム)
・若冲、若冲、若冲!(特別展「皇室の名宝―日本美の華」での動植綵絵)
・「日本の美と出会う」(日本橋高島屋)での若冲作品
・山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年(府中市美術館)
・小特集「若冲を愉しむ」(京都国立博物館)
・「金刀比羅宮 書院の美 ~ 応挙・若冲・岸岱から田窪まで」(金刀比羅宮)
・若冲とその時代(千葉市美術館)
・金刀比羅宮 書院の美― 応挙・若冲・岸岱 ―(東京藝大美術館)
・若冲展(相国寺承天閣美術館)
・花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第1期(宮内庁三の丸尚蔵館)
・花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第2期(宮内庁三の丸尚蔵館)
・花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第3期(宮内庁三の丸尚蔵館)
・花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第4期(宮内庁三の丸尚蔵館)
・花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第5期(宮内庁三の丸尚蔵館)