BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説23-24「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-12-30 21:28:00 | ★ディスティニー第23章

 いつもの病院に落ち着くと、お見舞いが遅れて申し訳ない、と、直人が来てくれた。

 義理堅い直人のこと、ずっと見舞いに来られなかったのは、自分のせいで仕事が立て込んでしまったのだなと想像はついたし、もしかするとツアー以来休めなくて、体調が悪いのではないかと心配もしていた。

「直人、ドームのこと本当にありがとね…忙しくさせてごめん。ちゃんと寝てる?」

「うん大丈夫だから心配しないで」

 そこへ諒が、珍しく早い時間にやってきた。

「うわぁ、4人みんな揃ったー。嬉しい~」

「おう、遅くなってごめんな」

直人がそう言うと、ううん会えて良かった、と諒は笑顔で答え、すぐに麻也にロックオンして、両手を広げて近づいていった。そして病室だというのにしっかり抱きしめてキスしようとする。

「ちょっと諒、それは~」

真樹と直人がブーイングしたが、

「なんでだよ! 身内しかいないんだからいいじゃん?!」

「病人を困らせるな!」

直人が叫んだのに間に合わず、諒は軽いキスをくれた。

「ちゅっ!」

すると麻也は不満げに、

「えーっこれだけぇ~」

「兄貴ぃ!」

真樹のがっかりした声が病室に響きわたった。


 気をきかせて真樹と直人は少し早めに帰り、諒は面会時間終了のぎりぎりまでいた。

「社長はね、麻也さんがここになれたらまずはここで少人数で打ち合わせしようって言ってた」

「それなら明日からでも大丈夫だよ」

「いや、それは駄目だよ」

「それは俺には荷が重いってこと? 失礼だな」

と、麻也はふざけてふくれてみせた。


 麻也の元気な姿の写真と自筆のお詫びメッセージを載せた、ファンクラブの会報の号外が発送されたのはこの頃だった。


(この章終わり)(12/30*みなさまよいお年を)

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★BLロック王子小説23-23「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-12-29 21:10:00 | ★ディスティニー第23章

 諒が来ない時間、次の日の午前中、麻也は主治医に相談した。いくら大事な人とはいえ諒の前で相談するのは嫌だったのだ。

 主治医は、まずは転院でいつもの病院に移ることは許可してくれた。

 ただやっぱりああいうことがあった自宅に帰るのは…といった感じだった。

 麻也も確かにあの時の諒の表情を思い出してしまうと、諒のあのあまりに傷ついた表情もショックだったが…

 愛する諒に、自分があんなオヤジと同じ人間だと叫ばれたのもショックだった。

 いくら誤解だったとはいえ、たくさんの人間に騙されたとはいえ、自分のことはもっと信じて欲しかった。

 今では誤解だったと二人で分かり合っているけれど…

 でももう俺たちは結婚しているようなもんなんだからどんな困難だって二人で乗り越えなきゃ…

 そう思って麻也はすぐに諒にメールを送った。


ー転院 OK って言われた。

そこで少し治療してから家に帰った方がいいんじゃないかって。

俺はそうしたいけど諒の都合はどうですか。


 するとすぐに諒から電話が来た。

 諒はすごく弾んだ声だった。

ーメール見たよ。それでお願いしたい~明日かな?

「うん。俺もそれで押しきっちゃおうかな~なんてね。あれ、諒、今は?」

ー撮影の準備待ち。今日はそっちへは少しおそ…

「いいよ。明日には会えるんだから…あっ…」

 その時、ノックをして主治医がまた入ってきたのだ。

「先生来たからごめん。またメールするね」

麻也が電話を切ると、四十代くらいに見える主治医は、実にあっさりと、

「遠藤さん、あ、麻也さん、今日もう転院できるけど」

「は?」

「マネージャーさんとか家族とか、誰か来られない?」


「…で、マネージャーと家族で来たよ…」

 と、すぐに来てくれたのは真樹と鈴木だった。

「いやあ忙しいのに、本当にごめんね」

「おふくろを振り切るの大変だったんだから」

 真樹は口をとがらせているが、その目は笑っていた。

「諒さんはあちらに来ますって」

 鈴木が安心させるようにそう言ってくれた。


 すぐにタクシーに乗せられたが、麻也にとっては久しぶりの外界だった。

「…真樹…」

「どしたの?」

「いや、東京ドーム…」

「やるんだよ俺達…って言ってもごめん、もとはといえば兄貴のおかげでここまで来られたのに…」

本当にありがとう、と言いながら、車窓の外に目をやった真樹の目には光るものが見えた…


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★BLロック王子小説23-22「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-12-26 22:09:00 | ★ディスティニー第23章

 無理を重ねさせるのも嫌だったし、今の麻也は体が気持ちに付いてこないだろう。

「すぐに準備は始めなきゃいけないが…」

 社長はうつむいてそう言った。

 諒はすぐに、

「まずは俺から取材とか受け始めるから麻也さんはあまり気にしないで休んでて」

と言って諒はしまったと思った。

(これじゃあドームを引き受けるって言ってるようなものじゃん…)

しかし麻也ははにかんだような可愛い表情を浮かべると、窓の外に一瞬目をやり、それからみんなに、

「…やらせてください…お願いします」

と社長達に向かって頭を下げた。

 これにはみんな嬉しくも驚いていてようやく、社長が、

「いいのか、麻也?」

 須藤は、

「麻也さん、体の方は? 先生は今のところ何て言ってるんですか?」

「…それはこれから訊いてみます…」

 諒の恋人としての部分が不安を覚えた。まあミュージシャンとしての部分は、喜びを感じていたが…

「そんなことでいいの…?」

「だってドームのことはさっき諒から聞いたばかりだし…」

 人前ということもあるだろうが、こんなにほわんとした可愛いまやの笑顔と笑い声は久しぶりで、諒はすぐに胸を突かれて笑えなくなった。

 涙が溢れてしまいそれを皆に見られた諒はそれをドーム決定のせいにしたというか、せずにはいられなかった。

諒も当然そこでドームに立つと宣言したが、社長たちはもうすでに真樹と直人の宣言は受けていたということで、 ディスグラは最初の東京ドームに立つことと、ずっとドームのアーティストであり続けることを誓うことになったのだった。

 となると諒は、ドーム発表を伏せたまま翌日から取材を受けることになってしまう

 今回のこの事件も、同居人として色々尋ねられるだろうし…

 しかし諒は、

「でも麻也さんには毎日会いに来るからね」

「いいよ諒。そんなの無理だよ」

 確かにそうだ。

 しかし諒の困った表情を見た麻也はこの場を収めるべく、

「俺、いつもの病院、近所に転院できないか相談してみます」

 すると社長は乗り気で、

「それはありがたいな」

 麻也も調子に乗って、

「でも、いっそダメ元で自宅に戻っていいですかって聞いちゃおうかな」

 それはちょっと…と諒も含めて皆がざわつく。

「俺が仕事出てる時に、麻也さんをひとりにするわけにはいかないもの…」

 すると鈴木が、

「もし麻也さんがマンションに戻るというなら一人の時間はずっと僕が付き添いますよ。何なら住み込んじゃおうかな」

 すると今度は社長が、

「何なら俺の家でもいいぞ」

「あ…考えます…」

「何だよ、それ…」

 諒が何か言いたそうなのを我慢しているのが目に入って、麻也は楽しい雰囲気を壊さないようにしているようだった。

「とりあえず後で先生に相談してみます」

と麻也は答えた。

「うん、訊いてみてくれ。今日は疲れさせてごめんな」

と、社長たちはそれ以上の話はせず、引き上げていった。

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★BLロック王子小説23-21「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-12-25 22:07:23 | ★ディスティニー第23章

 言いながらも、諒は不安を覚えている。

 また「別れて」とか嫌な条件を出されたらどうしよう…

 しかし麻也は自分の腕をつかむ諒の手に自分の手を重ねて恥ずかしそうに、

「…こういうこと…」

と、頬を赤らめる。

 諒は思わず身を乗り出して、

「え、いいの?」

「でも諒は大変だよね…?」

「ううん、全然。麻也さんとまた楽しくも喧嘩もありので一緒に暮らせるっていうなら、俺最高だよ」

(もしかして、マンションに暮らせるのかな)

「じゃあよろしくね。俺も体が良くなるように頑張るから」

「いやあんまり頑張らないで。ゆっくり静養してよ」

「諒の笑顔が一番の薬だから供給よろしくね」

 麻也の穏やかな笑顔に誘われてしまい、諒は、

「麻也さんたら、もー、じゃあ早速…」

と、唇を奪おうとしていると…ドアがノックされて勝手に入ってきたのは社長と須藤と鈴木だった。

「諒、やっぱりここにいたのか」

「電話が通じないから心配したんですよ」

 3人とも諒が引きずっていたラブラブモードにはお構いなしだ。

 しかし社長はすぐに真面目な表情になり麻也を見すえて、

「麻也、諒から聞いたと思うけど、東京ドームでやらないかって話が来た」

するとどうしてか諒の方にも社長は厳しい目を向け、

「二人とも今日すぐに答えるとは言わないよ」

その一言は諒と麻也にとって意外だった。

 すると社長はさらに、

「ドームは名誉だけど、そのステータスを維持するのは大変だろ? だからその決心が固まってからでいいよ」

「あ…」

 それはどうしてか二人とも忘れていたことだった。

「まさかお前ら一生の記念に一回だけ立ちたいっていうわけじゃないだろ?」

 言われてみれば確かにそうだ。

 しかし社長は二人が一瞬黙ってしまったのを見て不安になったらしく、

「おいおい一回で終わらせるつもりだったのか?」

「いえ、考えたことがなかっただけで…何しろ急な話だったし…」

 それは諒の本心だった。

 先輩バンドが何度もやっているのを知っていたはずなのに、毎日の忙しさばかりに追われて忘れていたのだ。

 社長は、

「ドームやったっていう肩書きは一生ついて回るからだよ。落ちぶれることは許されないんだ」

 その言葉の重みに諒は黙り込んだ。

そして麻也が意地だけで引き受けなければいいなと思った。

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★BLロック王子小説23-20「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-12-24 22:26:44 | ★ディスティニー第23章

「俺がこんな騒ぎを起こしたのに…」

慌てて諒は、

「いやそれは、その…麻也さんが入院したってことは問題にならないんだ。気にしないで」

「いやそんなこと…」

「いや本当にそれは大丈夫なの。

ただ時間があまりになさすぎるから今から俺達メンバーも動かなきゃいけないって言われたんだ」

「で、ライブはいつ?」

「来年のバレンタインデー」

「はあ?」

そこで諒はいいことを思いついて、含み笑いをしてしまった。

「うふ、俺は発想の転換って感じ。麻也さんのこの部屋から仕事に通…いや麻也さんがやるって言わなければドームの話はなくなるよ」

 急だし、夢みたいで…

 諒も混乱しているが、麻也はそれ以上に混乱しているようだった。

「何でまた急にドームなの?」

「棚ぼたなの…」

 諒はちょっとかわいこぶって言ってみた。

「たなぼた?」

少し麻也の様子が柔らかくなった。

 諒は少しほっとして、

「最初はね、ある外タレバンドがやるはずだったんだって。でもできなくなって、西園寺さんに話がきたんだ」

 ところが、西園寺ほどの大御所になるとスケジュールもセットも何もかも間に合わず…

「…周囲の人と話し合って、若手に譲ろうってことになって、それで俺たちを指名してくれたの」

 麻也は口をあんぐりと開けたままだ。

「なぜ…?」

「俺たちをかってくれたんじゃない? 直人は、すごく気に入られてるって話だし」

そして麻也の反論を閉じ込めるように、

「西園寺さんは、何を言われても、実力あるんだから気にするな、って言われたんだって」

「…実力か…」

麻也の繰り返したその言葉の重さが心配になって諒は、

「みんなが心配しているのは、やっぱり麻也さんの体だけだから。もちろん気持ちと言うか、心の健康状態も。ただドームは…」

そこで諒は泣けてきた。

「…でも麻也さんが連れてきてくれたドームなんだから、俺が最初に報告できて良かったとは思う…」

 そう言いながらも、どう言うのが正解なのか、どう決定するのが正解なのか諒にはわからなくなっていた。

 本当は麻也をドームに立たせたいが…

 するとようやく麻也が、

「諒が手伝ってくれるなら」

 かすかな笑みを浮かべ諒を見てくれた。その表情は諒が愛らしいと思えるものだった。

 しかし、麻也はすぐに困ったように目を伏せた。

 諒は驚きとまどって、でも嬉しくなって思わず麻也の腕を掴んでしまった。

「俺が手伝えるようなこと?嬉しいな」

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