BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

BLロック王子小説23-17「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-12-21 07:24:00 | ★ディスティニー第23章

 次の日は夕方までは、いつものように鈴木しか来なかった。

 あの日、病室で父に怒鳴られたのが何となく懐かしく思い出された…と、ため息をついていたら、母から携帯に電話がきた。

 今日もめまいがとれないので、父だけがこちらに来るという。

 そう言いながらも母が「病室でも事務所にこき使われているのでは」と怪しんでいるのが伝わってくるので、鈴木がいる気配を感じさせないようにしたが…

 鈴木が帰り支度を始めた頃、父がやってきた。

「ああ、鈴木さん、どうも。打ち合わせか何かですか?」

(父さんも母さんと同じ考えなんだろうな…)

すると、それを察したらしい鈴木は笑顔で、

「いえ、お見舞いです。麻也さんに寂しいと言われまして。近々また社長がお詫びにお伺いしたいと申しておりました」

「いやいやそれは…」

と、うやむやになったうちに、鈴木は帰っていった。

 それを見送ると父は、

「鈴木さんは毎日来るのか?」

麻也はどう答えたものか困ったが、

「うん。小さくてアットホームな事務所だから…でも人手不足だから来られるのは鈴木さんだけ」

「そうか」

父は言いたいことを我慢している様子だった。

 すると、

「これ、お母さんから」

と、和菓子でも入ったような立派な紙袋をテーブルに置き、中から缶のオレンジジュースを一本取り上げて見せてくれながら、

「母さんがどうしても持っていけ、って。もうこれぐらいなら飲めるんだろう?」

「うん」

それは麻也の大好物だった。

 父はソファに腰を下ろすと、

「ここを退院したら、ウチで休めるのか?」

 麻也は困ってしまった。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。