社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

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森博美「届出統計調査」『統計法規と統計体系』法政大学出版,1991年

2017-04-25 21:39:30 | 11.日本の統計・統計学
 届出調査の法的根拠は,旧統計法第8条の指定統計調査以外の統計調査に関する届出義務規定を受け,政令第58号として昭和25年4月1日に制定された「届出を要する統計調査の範囲に関する政令」(以下,「政令」と略)である。この政令は,その運用規程である「統計調査届出手続規程」(昭和28年4月 行政管理庁告示第11号)とともに,旧統計法第8条の運用細則の性格をもつ。
「政令」は第1条で法の目的(届出を要する統計調査の範囲並びに届出の方法)を,第2条で法の適用範囲を,第3条で届出の方法(統計実施者に対する調査届出義務)を規定している。「政令」の核をなすのが第2条である。ここには,(1)調査実施主体,(2)調査目的,(3)調査区域,(4)調査内容が規定されている。

 「(1)調査実施主体」は2つのグループで構成され,第一グループは国,都道府県,指定都市,日本銀行,日本商工会議所である。第二グループは,指定都市以外の都市である。      

 「(2)調査目的」は,「集計し,かつ,製表することを目的として申告若しくは報告又は資料の提出を求める」場合,いずれの調査機関が実施する調査についても,全て届出の対象となる。統計作成以外の目的のための集計,製表もこの規定の適用を受ける。

 「(3)調査区域」は,第一グループに属する調査機関が実施する調査に関しては都道府県,指定都市,都特別区の存在する区域,あるいは2以上の都道府県にわたって実施されるもの全てが届出の対象となる。また,指定都市以外の市が実施する調査についても,その市域全体に関する調査の場合は届出が必要である。なお,調査の実施が区域の一部にとどまる場合は,原則として届出の対象外となる。都道府県や市の区域全体の状態に関する推計を目的とした部分区域調査については,届出が義務づけられている。

 「(4)調査内容」について,第一グループの調査期間が実施する調査はその内容にかかわらず,調査区域,調査目的が届出基準に合致する場合には届出の対象となる。第二グループに属する機関が実施する調査に関しては,次の7分野の調査に限り,その届出が義務づけられる。(1)土地,(2)人口,世帯,住宅,(3)物価,生計費,(4)公衆衛生,(5)雇用,失業,賃金,(6)商品の販売・仕入れ額,企業の資本額,(7)生産高,原料・動力燃料の消費,在庫量。

 「政令」第3条第3項には,届出手続き及び届出書の様式を定めることが規定され,政令の施行とともに「統計調査手続規程」が設けられた。
届出統計調査の年次別届出状況をみると,都道府県や市区町村といった地方公共団体が実施する調査が大半を占める。他方,国の機関ならびに日銀・公社等が実施する届出統計についてその新規届出の時期は,大部分が昭和50年以前のものである。
 筆者はさらに,政府の届出統計の特徴を,機関別実施状況,分野別実施状況,調査対象の属性,調査対象抽出方法,実施系統,実施の周期性について解説している。経済統計の中で日本の金融統計は,日銀が各金融機関に定期的に情報の提供をもとめ,その報告にもとづいて作成される届出統計に依存している。経済以外の分野では,指定統計,承認統計に比べ,教育,福祉,司法さらに郵便といった社会生活関連統計を比較的多く含む。調査対象としては,行政機関が最も多く,次いで事業所(学校を除く),地方公共団体の順である。個人,世帯を調査対象とする調査は,極めて少ない。調査対象の抽出方法では,全数を調査対象とするものが圧倒的大部分である。この点では全数調査の割合が約30%にとどまる承認統計と対照的である。

 調査の実施系統では,中央官庁が下部の行政機関,地方自治体から直接報告をもとめる場合や,中央と地方の間の業務遂行系統がそのまま調査系統となる場合が圧倒的に多い。このため,調査方法は郵送配集による自計式が採用される。実査が調査員を媒介しないのが普通である。調査の周期性では調査周期1年以下の調査が全体の79.5%に達している。承認統計も調査の周期性を特徴としていたが,調査周期1年以下の調査が48.9%であった。政府届出調査の定期性は承認統計より顕著である。

 以上を要約すると,「中央政府が作成する届出統計は,基本的に非経済行政機関が社会生活分野を主たる調査分野として主管官庁の(地方)下部組織に対して,自らの行政活動の結果あるいは活動を通じて把握した事柄について,郵送・自計により定期的に報告をもとめる調査」ということになる(284頁)。政府届出統計のこの性格は,そのなかで特異な地位をしめる日銀の金融統計にも該当する。筆者はこのことを含めて,政府届出統計を「組織内部統計」と特徴づけている。
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