アノニマス・ライターの事件簿

Anonymous Writer(匿名記者)が社会の事件を深く掘り下げるブログ。

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【民事責任】造影剤の誤投与事故で民事の賠償が決着。遺族は「医療安全についての提言」を病院へ提示(国立国際医療研究センター病院)

2017年10月30日 | 造影剤による医療事故

関係者への取材によると、国立国際医療研究センター病院で造影剤の誤投与で女性患者=当時(78)=が死亡した医療事故(2014年4月)において、被害者の遺族と事故を起こした飯高医師および国立国際医療研究センター病院(※以下、センター病院)との間で、2016年5月、民事責任(損害賠償など)の示談交渉が決着した。

<民事責任についての概要>
事故を起こした飯高医師の刑事裁判で有罪判決が確定した後、被害者の遺族と飯高医師およびセンター病院、双方の弁護士を通して民事責任の賠償について示談交渉が行われていたが、賠償金等で合意に至った。2016年5月、都内の某所にて、遺族と飯高医師およびセンター病院の代表者(大西 真 病院長など)、双方の弁護士が立ち会いのもと合意書が取りかわされた。主な内容は、次のとおりである。

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<民事責任についての合意事項>
■飯高医師およびセンター病院が被害者の遺族に損害賠償金を支払うこと(※金額については非公開)
■遺族が提示した「医療安全についての提言」をセンター病院が実行すること
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この示談で画期的なことは、被害者の遺族から「医療安全についての提言」が提示され、合意書に盛り込まれたことである。
痛ましい医療事故を二度と起こして欲しくないという遺族の強い思いが、提言というかたちになったと言える。合意書への調印の席上でセンター病院の大西 真 病院長は、遺族に提言の実行を約束したという。
それでは提言の内容とはどのようなものか、見てみよう。


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独立行政法人 国立国際医療研究センター病院に対する提言(医療安全についての提言)

1)亡 ○○○○(※被害者の氏名)の死亡日をメモリアルデーと定め、毎年、病院の安全体制の再点検や見直し、職員の医療安全の研修、第三者を含むシンポジウムなどを行い、その結果をホームページなどで公表する。シンポジウムを行う場合には、亡 ○○○○(※被害者の氏名)の死亡月の土日に行う。

2)月1回のリスクマネージャー会議「医療に係る安全管理のための指針」第3項)に、患者の声を代表する外部の有識者等の外部委員を参加させる。

3)医療事故の経験を患者の視点から医療安全に生かすため、病院が実施する医療事故防止にかかる研修(「医療事故に係る安全管理のための指針」第4項)に、医療安全・事故防止で活動している被害者団体等からも講師を招聘する。
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【参考】国立国際医療研究センター病院「医療安全管理室」





【行政責任】造影剤の誤投与事故で医師を行政処分(国立国際医療研究センター病院)

2016年10月01日 | 造影剤による医療事故

2014年4月、国立国際医療研究センター病院で造影剤の誤投与で女性患者=当時(78)=が死亡した医療事故について、事故を起こした飯高医師に対して厚生労働省より行政処分が下った。



<行政処分の概要>
厚生労働省の医道審議会が、問題のあった医師と歯科医師に対して行政処分を行った(2016年9月30日付の処分)。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000138676.html

医道審議会(いどうしんぎかい)は、日本の厚生労働省の審議会等の一つ。医師、歯科医師、理学療法士・作業療法士などの免許取消・停止などの行政処分とその手続を行う。(※Wikipediaより)


この日、センター病院で造影剤の誤投与により女性患者を死亡させた医師についても処分が下った。
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国立国際医療研究センター 飯高世子(31) 業務上過失致死・・・・医業停止3カ月
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【あまりにも軽すぎる行政処分。。】
過失とはいえ、ひとりの患者の尊い命が奪われ(あわや二人の患者も危なかった)重大な医療事故の当事者への処分が「医師免許停止3ヶ月」である・・・。
基本的な医学知識の欠如と不注意で患者を死亡させたのであるから「医師免許剥奪」でもおかしくないと思うが、たった3ヶ月とは。医療事故を起こした医師に甘いと批判が絶えない行政処分であるが「まさしく、そのとおり」と言わざるを得ない。

【過失致死は詐欺より軽い??】
それでは、他の処分者と比較分析してみたいと思う。
同日、医師でタレントの脇坂英理子(37)が詐欺で処分を受けているが「医業停止3年」である。彼女が経営する美容クリニックで診療行為をしたように装い約155万円の診療報酬をだましとった罪で有罪判決(懲役3年、執行猶予4年)が確定している。
患者の命が奪われた飯高医師のケースが「医師免許停止3ヶ月」で、診療報酬をだまし取った脇坂医師のケースが「医師免許停止3年」であるのは、一般人の良識で考えてもあり得ないであろう。人命より155万円の方が重大とは・・まったく理解に苦しむ処分である。

【解説】医師の行政処分 医道審議会が公表した『量刑の目安』(みずほ中央法律事務所)


【群馬大学病院の医療事故では遺族が行政処分を要請】※追記
群馬大病院で肝臓の腹くう鏡手術を受けた患者が相次いで亡くなった問題では、遺族会とその弁護団が執刀医と診察科長に対して医師免許の取消しなどの行政処分を求める要望書を厚生労働省に提出している。


・群馬大腹腔鏡手術問題、「全然反省していない」遺族が執刀医らの行政処分要請

 

<行政処分の詳細>
報道発表の記事によると同日(2016年9月30日)の処分者は次のとおりである。


『厚労省行政処分 医師と歯科医師 全処分者の氏名』毎日新聞 2016年9月30日

処分者は次の通り。(当時の所属医療機関の所在地、医療機関名、氏名、年齢、処分理由。敬称・呼称略)

<免許取り消し>
東京都千代田区、秋葉原眼科・歯科、木村憲治(69)準強制わいせつ
<医業停止3年>
東京都世田谷区、自衛隊中央病院、福森崇之 (35)麻薬及び向精神薬取締法違反など▽大阪府吹田市、大阪大病院、加藤喜久(35)麻薬及び向精神薬取締法違反▽東京都目黒区、リコクリニックなど、 脇坂英理子(37)詐欺▽前橋市、群馬大病院、岡宮智史(42)器物損壊など▽勤務先なし、岡本均(63)詐欺
<医業停止2年>
札幌市、つつい皮膚科クリ ニック、筒井真人(61)医師法違反▽岡山市、岡山赤十字病院、林喬正(40)岡山県迷惑行為防止条例違反▽名古屋市、国家公務員共済組合連合会名城病院、赤澤貴洋(42)収賄
<医業停止1年>
札幌市、北海道大病院、照井浩也(33)不正アクセス行為の禁止に関する法律違反など▽愛知県豊川市、中尾歯科医院、中尾智一(46)大麻取締法違反▽名古屋市、元八事歯科、近藤康之(54)同
<医業停止9カ月>
名古屋市、多和田医院、多和田英夫(64)贈賄
<医業停止4カ月>
高知県いの町、大原歯科医院、大原路也(47)道交法違反▽高知県南国市、間島歯科医院、間島昭彦(49)同
<医業停止3カ月>
東京都新宿区、国立国際医療研究センター、飯高世子(31)業務上過失致死▽北海道登別市、いわた内科クリニック、岩田至博(52)北海道迷惑行為防止条例違反▽名 古屋市、名古屋フォレストクリニック、河野和彦(58)信用毀損▽札幌市、ライオンズ歯科、坂本洋介(58)診療報酬不正請求▽北海道苫小牧市、おくやま 歯科医院、奥山雅貴(58)同▽仙台市、畑岡歯科医院、畑岡拓(58)同▽宮城県塩竃市、清水沢いまいずみ歯科クリニック、今泉聡(49)同▽山形県鶴岡市、佐久間歯科医院、佐久間寅治(69)同▽埼玉県上尾市、三原歯科医院、三原一男(76)、三原俊介(41)同▽千葉県習志野市、山川歯科医院、山川博 (61)同▽東京都中野区、星合内科小児科医院、星合圭(62)同▽高松市、つばさ歯科医院、奥谷諭(41)同▽松山市、石井デンタルクリニック、村上士朗(62)同
<医業停止1カ月>
勤務先なし、中山彩(40)窃盗
 
(毎日新聞 2016/09/30 掲載の記事より)


造影剤の医療事故で院長を戒告処分(国立国際医療研究センター病院)

2015年09月30日 | 造影剤による医療事故

2014年4月、国立国際医療研究センター病院で造影剤の誤投与で女性患者=当時(78)=が死亡した医療事故について、センターは指導・監督が不十分だったとして中村利孝 院長をはじめ関係者を処分したと発表した。

事故についての詳細記事は次を参照
【医療ミス】飯高世子 研修医が造影剤を誤投与、女性患者を死亡させる
使用禁止の造影剤を投与した国立国際医療研究センター病院の女性医師を書類送検
誤った造影剤を注射し患者を死亡させた女性医師を在宅起訴
【医療事故】造影剤を誤投与した女性医師の刑事裁判で有罪判決



<処分の概要>
報道発表の記事によると概要は次のとおりである。

『国際医療センター、医療事故で院長を処分』2015.09.29
 
 国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)で昨年4月、脊髄(せきずい)に誤った造影剤を注入された女性患者(当時78)が死亡した医療事故について、同センターは28日、部下職員への指導監督が不十分だったとして中村利孝 院長戒告の懲戒処分にしたと発表した。医療安全管理部門の責任者は訓告、担当の整形外科の責任者は厳重注意とした。処分は25日付。
 誤注入した女性医師は東京地裁で業務上過失致死罪の有罪判決が確定しているが、既に病院を退職しており、処分できないとしている。
(朝日新聞 2015/09/29 掲載の記事より)


<関係者の処分:詳細>
2015年9月28日、国立国際医療研究センター(理事長:春日雅人)は「職員の懲戒処分について」という文書を公表し、ウェブサイトに掲載した。

【事案の概要】
平成26年4月に発生した、脊髄造影検査時に造影剤を誤使用し患者が死亡した医療事故について、病院の管理者として部下職員への指導監督が不十分であった。

【処分年月日】
平成27年9月25日


(左から)桂川陽三 医師、簑和田 滋 副院長、中村利孝 院長


関係者の処分についての詳細は次のとおり。

■センター病院の院長・・・・・・・・中村 利孝【戒告】
■医療安全管理部門の責任者・・・・・簑和田 滋【訓告】
■診療科(整形外科)の責任者・・・・桂川 陽三【厳重注意】

また、次の医師は処分を待たずにセンター病院を退職している。

■被害者の主治医・・・・・・・・・正田 修己 ※2015年3月で退職
■事故を起こした医師・・・・・・・飯高 世子【有罪判決が確定】※2015年3月で退職

 

<関係者の処分についての考察>
当該医師の刑事裁判の有罪判決から2ヶ月が過ぎようとした頃、院長をはじめ関係者の処分が、やっと決まった。

【あまりにも軽すぎる処分内容】
 重大な医療ミスとして世間から注目された造影剤の誤投与事故。ひとりの患者の尊い命が失われ、あわや二人目の被害者が出る寸前だった医療事故。薬を間違えた医師は刑事裁判で有罪が確定し、「病院の安全管理にも大きな問題あり」と医療業界からも批判され、取りざたされる中、病院責任者のトップである院長に下された処分は「戒告」である。懲戒処分としては「最も軽い」。
 このことから、国立の大病院が自らの医療事故について、どう捉えているのかが伺い知れるであろう。いままでのズサンな安全管理体制を反省し、自らが積極的に責任を取ろうとは考えていないのだ。事故の背景に安全管理体制の不備があったにもかかわらず、当該の研修医に多くの責任を押し付け、自分たちは軽い処分で済ませる・・・これでは「トカゲの尻尾切り」と批判されても仕方がない。

(※追記)
正田 修己 医師(主治医)は 2015年3月でセンター病院を退職し、アットホーム表参道クリニック(整形外科医)勤務
簑和田 滋 医師(副院長)は 2016年3月でセンター病院を退職し、東京腎泌尿器センター大和病院(副院長)勤務
中村 利孝 医師(院長)は 2016年3月でセンター病院を退職し、五反田リハビリテーション病院(院長補佐)を経て青葉病院(整形外科)勤務


【※参考資料】

(懲戒処分の種類)
公務員における懲戒処分は次のものがある(免職が一番重い)。なお、降任は防衛省の特別の機関である自衛隊の自衛隊法にその規定がある。
 ・免職 - 職員の意に反してその職を失わせる処分をいう。
 ・降任 - 現に定められている職務の等級・階級を1ないし2下位のものに下すこと。
 ・停職 - 一定期間、職務に従事させない処分をいう。国家公務員の場合は1日以上1年以下となっている。
 ・減給 - 職員に対する制裁として一定期間、職員の給与の一定割合を減額して支給する処分をいう。
     国家公務員の場合は人事院規則で、1年の期間、俸給の5分の1以下を減額することになっている。
 ・戒告(譴責:けんせき) - 職員の非違行為の責任を確認し、その将来を戒める処分をいう。
このほか、懲戒処分に至らないが不問に付することが適当でない場合として、軽微な処分を科すことがある。一般には次の3つが知られる。なお、これらは懲戒処分ではないので履歴書の賞罰欄に記載する必要はなく、経済的な損失も伴わない場合が多い。
 ・訓告(訓諭・訓戒)
 ・厳重注意
 ・口頭注意(単に「注意」と表現される場合もある)
(※wikipediaより転載)


【医療事故】造影剤を誤投与した女性医師の刑事裁判で有罪判決

2015年07月31日 | 造影剤による医療事故

2014年4月、CT撮影時に造影剤の誤投与により女性患者(78)を死亡させたとして、業務上過失致死の容疑で起訴された国立国際医療研究センター病院の飯高世子 医師(30)の刑事裁判で判決が下った(東京地方裁判所)。

【刑事裁判の日程】
・初公判(2015-05-08)・・・・・冒頭陳述、罪状認否など
・第2回公判(2015-05-25)・・・証人尋問、意見陳述など
・第3回公判(2015-06-08)・・・論告求刑など
・判決(2015-07-14)



<判決の概要>
判決は2015年7月14日。
刑事裁判の法廷では、多くの傍聴人が見守る中、判決が読み上げられる。今回の医療事故は新聞やテレビでも多く取り上げられ、注目されてるためか、傍聴席はあらかた埋まっている。報道陣も詰めかけているようだ。


新聞やインターネット・メディアの記事によると詳細は次の通りである。

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『造影剤誤注入で患者死亡、医師に有罪判決「初歩的ミス」』
朝日新聞(2015年07月15日)

 国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)で昨年4月、女性患者(当時78)の脊髄(せきずい)に誤った造影剤を注入して死亡させたとして、業務上 過失致死の罪に問われた女性医師(30)の判決が14日、東京地裁であった。大野勝則裁判長は「ミスはごく初歩的であり、過失は重い」として禁錮1年執行猶予3年(求刑禁錮1年)を言い渡した。

 判決は、造影剤の箱などには「脊髄造影禁止」と目立つように朱書きされていたと指摘し、「ほんの少し注意を払えば使用してはならないと容易に気づけた」 と批判。一方で、「反省し謝罪を重ねている」とした。判決後、患者の次男(50)が記者会見し、「医師の教育が不十分であり、病院の過失も非常に大きい。 刑事事件で医師しか裁けないのは限界を感じる」と述べた。

 判決によると、女性医師は昨年4月16日、脊髄造影検査をする際に、患者に脊髄への使用が禁止されている造影剤「ウログラフイン」を誤って注入し、患者を死亡させた。

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『遺族「反省しているのか」…誤投与の医師に有罪』
読売新聞(2015年07月15日)

 国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)で昨年4月、造影剤を誤投与して患者を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた整形外科医の飯高世子(いいだか としこ)被告(30)に対し、東京地裁は14日、禁錮1年、執行猶予3年(求刑・禁錮1年)の判決を言い渡した。
 大野勝則裁判長は、「初歩的な過失で責任は重いが、被害者や遺族に謝罪している」と述べた。
 判決では、飯高被告は同病院の研修医だった昨年4月16日、足の痛みで検査入院した女性(当時78歳)の脊髄の造影検査を行った際、重い副作用の恐れから脊髄への投与が禁止されている造影剤「ウログラフイン」を誤って注射し、女性を急性呼吸不全で死亡させた。
 判決後の記者会見で女性の長男(52)は「本当に反省しているのか疑問。病院は事故の責任をとって安全管理体制を構築してほしい」と話した。

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『造影剤の誤投与「初歩的、重い過失」、禁錮1年
東京地裁判決、国立国際医療研究センター事故』
2015年7月14日(m3.com)

 国立国際医療研究センター病院の整形外科医が、2014年4月に脊髄造影検査には禁忌の造影剤ウログラフインを誤投与し、78歳の女性が死亡、業務上過失致死罪に問われた裁判で、東京地裁(大野勝則裁判長)は7月14日、禁錮1年、執行猶予3年の判決を言い渡した。検察の求刑は禁錮1年だった。

 判決は、脊髄造影検査の際には、添付文書等で造影剤の薬理作用を確認し、誤用による生命身体への危険を防止する注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、漫然と脊髄腔内に造影剤約8mLを誤投与し、女性を急性呼吸不全により、死亡させた過失があると判断した。

 さらに「禁錮1年」という量刑の理由として「被告人の過誤は初歩的であって、その過失の程度は重い」と説明。その理由として、「造影剤の選択 を誤ると、重大な副作用を起こす場合もあるという基本的な知識を持ち合わせていなかった」「経験による思い込みから添付文書を検討せず、薬剤部への問い合わせもせずに造影剤を誤投与した」「医師は、使用する薬剤の確認や選定に過誤がないよう十分な注意を払うべきことは明らか」などと判示した上で、 (1)造影剤には、添付文書だけでなく、箱の3カ所やアンプル本体に、脊髄造影検査には禁忌と赤字で記載されていた、(2)使用すべき造影剤の種類について、ほんの少しの注意を払っていれば、脊髄造影検査に使用してはならないことに容易に気づくことができた――ことを挙げた。

 被告の弁護人は公判で、誤投与の事実は認めたものの、病院組織としての事故防止対策の不十分さを指摘し、医療安全の観点から、個人の処罰よりも、 再発防止体制を構築する重要性を主張していた。しかしながら、判決では、「造影剤について、医師と看護師がダブルチェックする体制が取られていなかった」 などの点には触れたものの、「それ以前の被告人自身のごく初歩的な過誤に起因している。過失の重さを否定するような事情や証拠を見いだすことはできない」 と、弁護人の主張を考慮しなかった。

 本件については、過去の同様のウログラフイン誤投与事故で、刑事責任を問われた裁判例から、有罪は避けられないと想定されていた。しかし、一部の 医師会や保険医協会などから、個人の責任追及では再発防止につながらないことから、システムエラーの観点から医療安全に取り組む必要性などを判決文で言及するよう求めた嘆願書が出されていたが、判決では顧みられず、検察側の主張を全面的に受け入れた判断になった。(※中略)

 一方、死亡した女性の遺族側は判決後の記者会見を開き、死亡した女性の長男(52歳)は「検察側の主張がほぼ全面的に認められた、きちんとした判断だったと思う」と述べたものの、病院の安全管理体制も問題視、「病院の関係者にもきちんとした形で責任を取ってほしい」と求めた。次男(50歳)からは「執行猶予が付いたのは残念だと思う。できれば実刑にしてもらいたかった」との言葉もあった。もっとも、執行猶予付きは予想されたと言い「判決後、検察官と話したが、恐らく控訴はしないだろう」(遺族側の弁護士)。

【解説】その後、検察と被告ともに控訴せず刑が確定した(2015/7/29)

 なお、本事案については、並行して損害賠償に関する話し合いも進められている。遺族側の弁護士によると、今年5月に、国立国際医療研究センター病院と整形外科医本人に対し、連帯して賠償するよう求め、7月13日に病院から回答が来たという。「責任があること自体には争いはない。ただ、賠償額には、 数千万円の隔たりがある。今後、遺族と協議しながら話し合いを進める」(遺族側の弁護士)。事故原因と再発防止策、謝罪について納得できる回答が得られれば、賠償額については交渉の余地はあるとしている。

「禁錮1年執行猶予3年」の量刑、「2人死亡」の事案と同じ

 (※中略)本事案については、5月8日の初公判を含め、計3回公判が開かれたが、事実認定については争いがなく、判決でも起訴状通りに認定した。被告の整形外科医は、2014年4月16日、腰部脊柱管狭窄症の再発疑いの78歳女性に対し、脊髄造影検査を実施する際、脊髄造影用造影剤イソビストを使用すべきところを、ウログラフイン60%注射液を誤って使用。女性は同日午後8 時3分頃、急性呼吸不全により死亡した。整形外科医は、2014年12月3日に業務上過失致死罪容疑で書類送検、今年3月9日に在宅起訴された。

 判決では、執行猶予を付けた理由について、(1)真摯な反省の態度を示し、被害者と遺族に対して心からの謝罪を重ねている、(2)自らの責任を痛感し、遺族の心情にも思いを寄せ、今は医療関係の研究に携わって社会に貢献する方法を模索し、実践している、(3)遺族とは損害賠償の交渉中であり、遺族には相応額の賠償がなされる見込みである――という点を挙げた。

 そのほか判決では、「被告人のごく初歩的な過誤の結果、家族と平穏な日々を過ごしていた被害者の命が突然、失われた」などとし、遺族が公判で悲しみと整形外科医に対する厳しい処罰感情を述べていたことについて、「もっともだ」とも言及した。

 過去にも、脊髄造影検査へのウログラフイン誤投与で、医師が業務上過失致死罪で有罪になった事案は複数ある。今回の量刑は、誤投与で2人死亡した 国立療養所星塚敬愛園の事案と同様だ(1990年9月の福岡高裁判決で、禁錮1年執行猶予3年)。山梨県立中央病院の事案(誤投与で1人死亡)は、 1994年6月の甲府地裁判決で、禁錮10カ月執行猶予2年だった。そのほか、略式命令で50万円の罰金刑などが科せられた例がある。

 遺族は病院の安全管理体制も問題視

 判決後の記者会見では、整形外科医が反省と謝罪の意を公判で示していたことを聞かれると、遺族は「言葉では反省していると繰り返し言っていた。ただ、やはり証言の内容から考えると、自己弁護をしていることがとても多く、本当に反省しているのかという疑問が残らざるを得ない」(長男)、「本当に反省しているなら、医師としての仕事は一切やらない、医療に従事しないでもらいたいと訴えた。ただ、今でも大学病院で研究職をしている。反省しているなら、医師免許を返上して、医療の現場からは離れてもらいたい」(次男)などと述べ、懐疑的な見方を示した。(※以下、略)

(m3.com 2015/7/14の記事より引用)

『造影剤の誤投与「初歩的、重い過失」、禁錮1年
東京地裁判決、国立国際医療研究センター事故』(m3.com)


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【判決のあと被害者の遺族が記者会見を行う】

判決後に裁判所内の別室にて新聞やテレビ局などの取材陣が集まる中、被害者の遺族と弁護士が記者会見を行った。遺族会見の主な内容は次のとおり。

<被害者女性の長男>
 判決では、検察側の主張がほぼ全面的に認められた、きちんとした判断だったと思う。本件の事故の要因は、二つあると思う。医師として当然知っていなければいけない基本的な知識が欠如したまま、診療・検査に当たっていたこと。病院側の安全管理体制の不備も大きな要因だと思う。検査で使用する造影剤のチェック体制がなかった。薬を間違えた医師は、薬が置いてある棚から、自分で造影剤を取り、それを誰のチェックも受けずに、検査に使用するという使い方をしていた。その場に主治医や看護師はいなかった。
 病院側は、事故の後、すぐに警察に事故の届出をしている。この点は、模範的な対応だったと思う。ただ、やはり大事なのは、事故が起きる前にどのようなことをなすべきか、という点だと思う。犠牲者が出てから改善したのでは遅い。事故を想定した上で安全管理体制を構築して、一人も犠牲者が出ないような体制をきちんと作っていくのが、病院の安全管理だと思う。その意味では、病院の関係者にもきちんとした形で、責任を取ってほしいと思っている。また病院の事故説明会や裁判の中で明らかになったことだが、母の後にもう一人、検査のためにスタンバイしていた。もう少しで二人目の犠牲者が出るところだった。あと多分5分ほど遅れていたら、二人目の犠牲者が出ていたのは確実だった。 その意味でも、医師としての基本的な知識の欠如のまま、なぜ診療や検査をしていたのか、不思議でならない。

<被害者女性の次男>
 私としては、執行猶予が付いたのは残念だと思う。できれば実刑にしてもらいたかった。ただ、過去の判決からすれば、執行猶予が付くだろうと予想はしていた。検察側の禁錮1年という求刑が、そのまま判決になった。判決文の中でも、我々遺族の気持ちを十分に裁判官がくみ取ってくれた言葉があったので、その点については裁判所には感謝している。
 今回の件は、担当した医師の過失によるところが大きいが、造影剤のダブルチェック体制ができておらず、研修医に対する造影剤の教育、研修の機会がなかったという。病院側の過失は大きい。ただ、今の法制度には限界があり、実際に検査を行って誤投与した医師しか刑事事件で裁けない。我々遺族は病院側に対しても激しい怒りを持っている。形通りの謝罪しかなく、証言に来た医師以外は、結局、病院側の関係者は裁判の傍聴にも来ていなかったようだ。全てを担当した医師の個人的な責任にしようと考えているのかと思う。そうした病院側の対応にも非常に怒りを感じている。




東京地方裁判所の判決後に記者会見した遺族3人と、代理人を務める弁護士。

 

【刑事裁判の判決についてのわかりやすい解説】

・谷 直樹弁護士事務所のブログ(国立国際医療研究センターでの造影剤事故)


【医療事故】造影剤を誤投与した女性医師の刑事裁判(第3回公判)

2015年06月15日 | 造影剤による医療事故

2014年4月、CT撮影時に造影剤の誤投与により女性患者(78)を死亡させたとして、業務上過失致死の容疑で起訴された国立国際医療研究センター病院の飯高世子 医師(30)の刑事裁判が東京地方裁判所で行われる。

【刑事裁判の日程】
・初公判(2015-05-08)・・・・・冒頭陳述、罪状認否など
・第2回公判(2015-05-25)・・・証人尋問、意見陳述など
・第3回公判(2015-06-08)・・・論告求刑など
・判決(2015-07-14)



<公判の概要>
第3回公判は2015年6月8日。
刑事裁判の法廷では、多くの傍聴人が見守る中、審理が始まる。今回の医療事故は新聞やテレビでも多く取り上げられ、注目されてるためか、傍聴席はあらかた埋まっている。

第3回公判は、検察側の論告求刑などである。
出廷したのは被告人 飯高世子(いいだか としこ)と被告の代理人弁護士。


インターネット・メディアの記事によると詳細は次の通りである。


『造影剤誤投与「過失は重大」、禁錮1年求刑
国立国際医療研究センター「ウログラフイン」事故、第3回公判』
2015年6月8日(m3.com)

 国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)の造影剤の誤投与事故で、業務上過失致死罪に問われた整形外科医の第3回公判が6月8日、東京地裁 裁(大野勝則裁判長)で開かれ、検察は禁錮1年を求刑した。本裁判は第3回公判で結審し、7月14日に判決が言い渡される予定。

 本事故は、2014年4月16日に、腰部脊柱管狭窄症の再発疑いの78歳女性に対し、脊髄造影検査には禁忌のウログラフイン60%注射液を誤投与し、患者が同日に急性呼吸不全で死亡した事故。

 検察は論告で、添付文書を確認して薬の誤投与を防止することは、「医師としての責務。基本的かつ重大な注意義務」と指摘。その上で、整形外科医が 造影剤について不勉強であり、国立国際医療研究センター病院の医薬品情報管理室に問い合わせなかったことなどを問題視し、造影剤の誤投与がなければ患者の生命の安全が脅かされる可能性はほぼ皆無であったとし、「被告の過失は重い」とした。同病院の医薬品の安全管理体制が十分であったか否かなどについては、 今回の事故では、医師としての基本的な注意義務を怠った事案であるため、重視すべきでないとした。さらに量刑判断に当たっては、遺族が厳罰を求めている点を重要視するよう求めた。

 これに対し、弁護側は、誤投与の事実は認めたものの、斟酌すべき点があり、寛大な判決を求めた。医師が使用する薬は多数に上るなど、添付文書を確認する難しさがあるほか、整形外科医は真摯に反省、謝罪し、事故後は医療を一切行っておらず、事故直後の国立国際医療研究センター病院による発表やマスコ ミ報道以降、インターネット上で非難を受けるなど、社会的制裁を受けたことなどを斟酌すべき点として挙げた。さらに医療安全の観点からも弁明し、個人の責任追及よりも、原因究明と再発防止のシステム構築が重要であるとされる現状を踏まえて、量刑を決定するよう求めた。

 公判の最後に、整形外科医が意見を述べる機会があり、患者本人と遺族への謝罪の言葉を何度も繰り返し、添付文書を確認しなかったことなどについて の後悔の念を述べた。遺族が医師を続けないよう求めることも当然と思うとした一方、周囲の医師らの支えに感謝しているとし、事故のことを一生忘れることなく、また謝罪の気持ちを持ち続け、「少しでも社会に貢献できるように生きていきたいと思う」と、心境を涙ながらに語った。

 過去にも、ウログラフインの誤投与事故は、複数回起き、刑事事件になった例がある。1990年代に略式命令で終わっている事案では、罰金50万円だった。公判に至った場合には、例えば、1992年4月に山梨県立中央病院で起きた事故では、1994年6月の甲府地裁判決で、禁錮10カ月執行猶予2年の有罪判決だった。本件の場合も、過去の裁判例から見れば、有罪が予想されるため、焦点は量刑になる。検察は、あくまで整形外科医個人の責任を追及してい るのに対し、弁護側は医療安全は個人ではなく組織上の問題と捉える流れがあると主張しており、量刑にどう影響するかが注目される。

 添付文書確認、「基本的かつ重大な注意義務」

 6月8日の第3回公判は、約30分で、検察側の論告求刑、弁護側の最終弁論に続いて、整形外科医本人の意見陳述という流れで行われた。

 検察は、論告の最初に、「被告人の過失は重い」と言及したほか、「被害者の遺族が厳罰を求めていることは、量刑判断の際に重視すべき」と強調した。
 「過失が重い」としたのは、第一に、薬の使用に当たって、添付文書等で薬理作用を確認するのは、医師の責務であり、「基本的かつ重大な注意義務」 であるという理由からだ。また整形外科医は5年目の医師であり、脊髄造影検査を過去に経験していたことから、使用すべき薬剤について正確な知識を持っているべきだが、その知識を欠いていたと主張。ただし、知識を欠いていた場合でも、国立国際医療研究センター病院の医薬品情報管理室に問い合わせることは容易だったが、それをしなかったとした。

 第2回公判で、弁護側は、病院の薬の安全管理体制にも問題があったとした。しかし、検察側は、「背景事情」にはなり得るが、前述の通り、「基本的 かつ重大な注意義務」を怠っていたという理由から、病院の体制については、整形外科医の刑事責任を判断するに当たり、重視すべきでないと主張。
 さらに検察は、「医師の勉強不足、基本的な心構えの欠如により、高度な危険があるとは言えない検査において、生命を奪う恐れがあれば、医療者と患者の信頼関係は構築できない」と指摘。薬の正確な知識を持つことなどの重要性を医療者に再認識させ、今後、同様の事故を起こさないようにするためにも、厳罰が必要だとした。

 「量刑判断、斟酌を」と弁護側

 これに対し、弁護側は、検察の公訴事実は争わないとしたものの、斟酌すべき点があると主張した。その第一に挙げたのが、添付文書確認の問題。 (1)添付文書には、製薬企業にとって防衛的な内容もあり、記載内容を基に、医師の責任を判断するのは問題がある場合もあり得る、(2)医師がよく使う薬 は100を超え、それぞれの薬について多数の情報が記載されており、全てを把握するのは難しい――などの点を挙げ、確認を怠ったことについて、著しい注意義務違反があったと安易に判断すべきではないとした。

 そのほか、(1)脊髄造影検査に立ち会った2人の研修医も、警察の取り調べ時に、脊髄造影検査にウログラフインが禁忌であることを知らなかったと答えており、医学教育においてウログラフインの危険性に関する教育されていない、(2)現在の医療では情報量が膨大で、個人の努力で把握するのは限界、 (3)事故後、整形外科医は反省、謝罪をしており、医療は一切行っていない、(4)国立国際医療研究センター病院による発表やマスコミ報道以降、インター ネット上で非難を受け、社会的制裁を受けたほか、刑事処分後、行政処分を受け、それが公表されることで不利益を受ける、(5)同センター病院と整形外科医 は、遺族と示談交渉を行っており、適正な損害賠償がなされる見通しである――などの点にも言及。

 さらに、弁護側は、横浜市立大学の「患者取り違え事件」や、東京都立広尾病院事件が起きた1999年頃以降における、医療界の医療安全への取り組みを説明。医療安全のためには、個人の責任追及ではなく、事故の原因究明と再発防止のシステム構築こそが重要であり、今年10月から始まる医療事故調査制度も、この考えに基づいているとした。第2回公判で、証言した国立国際医療研究センター病院の整形外科診療科長は、同院のマニュアルにウログラフインに関する注意事項が記載されていなかったなど、病院の医療安全体制は十分ではなかったと述べていることなどにも触れ、量刑判断において斟酌するよう求めた。(※以下、略)

(m3.com 2015/6/8の記事より引用)

 

『造影剤誤投与「過失は重大」、禁錮1年求刑
国立国際医療研究センター「ウログラフイン」事故、第3回公判』(m3.com)