Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ローズマリー

2021年07月13日 | ローズマリー

              3 ローズマリー

             ローズマリー  2021/3/30

 

日本でこれほどたくさん植えられているハーブはないでしょう。街路樹の下、庭先の植え込み、垣根にと、今では珍しくない光景です。貴方の庭にも、一株や二株はあるかも知れません。冬の寒さや乾燥にも強く、10月から5月の長い期間花を付けてくれます。しかも匂いをかぐと頭の中に透き通るような爽やかさが通り抜けます。料理にでも使おうかしらと思い、植えられたのでしょうか。しかし、ちょっと待ってください。

 

ローズマリーは抗酸化作用がかなり強く、使い方によっては副反応が出ることがあります。口から摂取する際は細心の注意が必要です。ローズマリーからの抽出物(指定添加物 #357 ローズマリー抽出物-酸化防止剤既存添加物)は令和2年2月26日から食物に広範囲に使われています。ローズマリー抽出物が含まれた商品一つを食べるだけであれば気にすることはありませんが、あちらにもこちらにも、何処にでも使われていると、家庭で生の、或いは乾燥のローズマリーの葉を口にすることは極めて危険です。家庭でのローズマリーの使用は、「香りを愉しむ」という使い方に絞るのが賢明だと言えます。

 

現在、日本におけるローズマリー抽出物(葉又は花より、二酸化炭素、温時~熱 時含水エタノール若しくはエタノールで抽出して得られたもの、又は温時~熱時ヘキサン、メタノール若しくは含水メタノールで抽出し、溶媒を除去して得られた、酸化防止剤としてのフェノール性ジテルペノイド;ロスマノール、カルノソール及びカルノシン酸等)は使用基準が設けられていません。

 

参考までに、欧州連合(EU)が実施しているローズマリー抽出物の使用量(特定の低脂肪食肉及び水産物の酸化防止剤としての)を引用しておきます。委員会規則(EU) No 723/2013)   2013年7月27日から。

 

 (1) 食肉調製品、(2) 低脂肪の非加熱処理及び加熱処理した加工食肉、(3) 低脂肪の加工魚類及び水産物(軟体動物及び甲殻類を含む) の酸化防止剤としてのローズマリー抽出物の使用の認可を求める申請書が2012年2月3日に提出されました。

脂肪の酸敗や変色のような酸化による劣化から食品を守る物質として、脂肪含量が10%を超える生産物には最大使用量の150mg/kg、脂肪含有量が10%以下の生産物に対するローズマリー抽出物の最大使用量を15mg/kgに設定。


又、欧州食品安全機関 (EFSA) が2008年に、ローズマリー抽出物が食品添加物として使用された場合の加工食肉、家禽生産物及び魚介生産物類/水産物に対して最大使用量を150mg/kgで使用されると想定しています。これには、脂肪含有量が10%以下の非加熱処理及び加熱処理した加工食肉、並びに加工魚介類及び魚介類生産物 (軟体動物及び甲殻類も含む) も含まれています。


以上の経緯及び観点から、乾燥ソーセージを除く非加熱処理又は加熱処理した加工食肉に対して、それぞれ150mg/kg (脂肪ベース)と設定されているローズマリー抽出物の最大使用量が、乾燥ソーセージを除く脂肪含有量10%以下の食肉のみに対しては15mg/kg (生産物ベース) に、乾燥ソーセージを除く脂肪含有量10%超の食肉のみに対しては150mg/kg (脂肪ベース) に変更されることになりました。また、加工魚類及び水産物 (軟体動物及び甲殻類を含む) 対して150mg/kg (脂肪ベース) と設定されているローズマリー抽出物の最大使用量が、脂肪含有量10%以下の加工魚類及び水産物 (軟体動物及び甲殻類を含む) のみ対しては15mg/kg (生産物ベース) に、脂肪含有量10%超の加工魚類及び水産物 (軟体動物及び甲殻類を含む) のみ対しては150mg/kg (脂肪ベース) に変更されることになったのです。       

委員会規則(EU) No 723/2013は、官報掲載の20日後に発効。

 

(ところで、ローズマリーは2017年に学名がRosmarinus officinalisからSalvia rosmarinusになりました。これまで使ってきたRosmarinus officinalisは1753年に植物学者リンネによって命名されました。当時は、植物を花や葉の形態や構造で分類していましたが、1998年にゲノム解析から実証的に分類体系を構築するAPG分類体系が確立され、ローズマリーは、マンネンロウ属ではなく、コモンセージやクラリセージと同じサルビア属に再分類されました。)

 

「香りを愉しむハーブ」として記憶に留めていただければと思い、第三回目はローズマリーを選びました。それでは始めましょう。

 

 

 

 

   -般名称         学名             生育地             

  ローズマリー        Salvia rosmarinus.         地中海沿岸         

 

         Salvia rosemarinus (ローズマリー) 2021/3/30

 

ローズマリーは肉や魚をグリルするときに焼いて香りを付けたり、ローストミートやローストチキンの肉にマリネをして味を付けたり、パンやクッキーに振りかけたり、オリーブオイルやアーモンドオイル、ワインビネガーの中に入れて成分を抽出したりと、その香りを存分に楽しむことができるハーブです。耐寒性があり栽培は容易です。rosemaryという名は、ラテン語のros (露)、marinus(海)に由来。生育地では海からもたらされる水のみで自生しているのでこの名が付いています。

 

  

  

 

原産地; 地中海沿岸

高さ1~2 m程になるシソ科(Mint family)の常緑性低木で、色々な品種があり、立性、匍匐性、半立性に分かれる。花の色は青、紫、白、ピンクがある。

  

ローズマリーは擦ると樹脂状になり、それは毒とヘビを除くすべての生き物の毒を中和し、発汗を促進し、疝痛を払いのける。』と述べています。

 

ローズマリーの香りは、モノテルペンのα-ピネン (20.1%-21.7%),β-ピネン, カン

フェン, リモネン, 1,8-シネオール (23.5%-26.5%), ボルネオール、更にテルペン系炭

化水素化合物のカンファー (7.2%), linaloolリナロール, ベルベノン, テルピネオー

ル,3-オクタノン-ケトン, 酢酸イソボルニルからなります。

カンフェンが含まれているカンファー(樟脳)は、古くから防虫剤として、ベルベノンはバーベナに多く含まれる成分で、スッとする芳香が特徴的です。カンファーよりもクセが少なく、さっぱりとした爽やかな香りがします。

カンフェンとベルベノンは共にケトンですから神経毒を持っています。乳幼児、妊産婦への使用は避けるべきです。シネオールも鼻に抜けるような臭いが特徴的で、モノテルペンのオキサイド類なので強い反応が現れます。酸化物類の疫粘液溶解作用により去痰作用、抗カタル作用、免疫調整作用があります。乳幼児には刺激が強いため使用を避けるのが賢明です。

 

 

  主な有効成分  モノテンペル   ロスマリン酸     ルテオリン                                                

            抗菌性      抗酸化作用    抗酸化物質活性     

プリニウスが説く「胸の慢性的な愁訴」とはどのような病を指すのかはわかりませんが、ローズマリーを葉、根、茎、種に使い分けたハーブ指南書は現在でも見あたりません。ローズマリーは各部分毎に成分、濃度が全く異なる事からローズマリーを各部分に分けて使う方法は理に適っています。次に葉(茎)、花、種に含まれる成分について、現在わかっている範囲内で順に述べておきます。

 

葉の精油の15-55%を占めるシネオールは、大気に触れると褐色を呈し、一部樹脂化して水分の蒸散を防ぎます。芳ばしい香と味を持つことから、食品添加物・香料・化粧品、口中清涼剤やせき止めにも配合されます。炎症や痛みを和らげる作用があり、肺と副鼻腔には去痰作用と殺菌作用、又、気管支を狭くする原因となる特定の神経伝達物質を阻害するため、気管支炎や気道の風邪などの呼吸器疾患、それに慢性および炎症性呼吸器疾患、喘息にも使用されます。

カルノシン酸、カルノソールは、強力な抗酸化物質で、食品の防腐剤や酸化防止剤として使用され、記憶力を改善する作用、神経細胞の維持に重要な役割を果たす神経成長因子の生成を高める効果、又、生体防御機構を活性化させる作用があり、解毒作用を高め、脂肪細胞の分化を抑制し、肥満を抑制する作用があることが報告されています。細菌の核酸生合成を阻害することで黄色ブドウ球菌に対する抗菌特性があります。軽度のアルツハイマー型痴呆症患者に対しては症状が改善する可能性があります。

タンニンには粘膜からの分泌を抑える収斂作用があり、サポニンには界面活性作用による殺菌性があり、去痰薬として使われています。

グリコリック酸は新陳代謝の悪くなった角質層の結合を緩めて剥がすのでケミカルピーリングにも使われます。

 

花のカルノシン酸やカルノソールの量は葉よりも少なく、ロスマリン酸が代わりに

含まれています。ロスマリン酸は葉 (3.5%) よりも花にはるかに多く含まれます。植物は菌類やバクテリアに対する防御としてロスマリン酸を合成しています。捕食者から植物を保護する為に用意された防御化合物といえます。葉よりも花の方に多く含まれているのは次世代に向けて用意する種子に重点を置いているからでしょう。

 

種子には抗酸化作用、抗がん作用、脳機能保護作用、コレステロール低下作用があるトコトリエノールが大量に含まれています。

 

   

 

ロスマリン酸、サポニンは水溶性であり、カルノシン酸、カルノソール、ロスマノール、トコトリエノール、シネオール、カンファーは非水溶性です。ローズマリーを摂取する時には水、アルコール、脂の中に溶け込んだローズマリー成分にも注意を払う必要があります。

 

ローマ帝国期のギリシャ人、ディオスコリデスはローズマリーを次のように描写しています。『ギリシャ人は その匂いからローズマリーに Libanotis coronaria(コロナリウス)の名前を付けた。ローマ人はそれをローズマリーと呼び、髪飾りに使っている。 枝は細く、周りに小さな葉を付ける。その葉は厚く、やや長く、ほっそりとして、内側は白く、外側は緑で、強い香りがする。体を温め、黄疸を治す。 水で煮て運動前に飲み、入浴する者はワインと一緒に飲む。 また、倦怠感を取り除くための治療薬と混ぜたり、グルシナム( Gleucinum simplex オイル )と混ぜて使う。』

 

 

 栽培            春または秋に挿し木                   

プリニウスが栽培方法について次のように述べています。

『ハーブジュニペルスサビナは、挿し木だけでなく、取り木でも増やせる。ローズマリーも、枝の挿し木から同様の方法で殖やすことができる。サビンもローズマリーも種ができない。rhododendrum(つつじ)は、取り木と種子から繁殖する。』

 

  

実生のローズマリー。挿し木の生育スピードには遙かに及ばない。    2021/6/26

 

水に挿す部分にあたる下葉を取り除いて水の中に入れておくと3-4 週間で発根します。ローズマリーの発芽率は悪く、芽が出るまで時間がかかります。春又は秋に挿し木で殖やす方法が容易です。茎の色が緑色のところを切ると、そこから新しい芽が出てきます。茶色の枝からは芽が出てきません。樹形を整えるにはこのことを考慮して整枝します。ローズマリーは種類が多く、微妙に香りや味が異なります。使う目的を考えてから栽培を始める事が大切です。

 

5月の初めの夏の来ない内に、大きく茂った枝を刈り取ります。部屋の中に置くと、爽やかな澄み切った香りが満ち溢れます。

 

 使用方法         オイルの中にローズマリーの香りを移す                                   

料理にローズマリーを使う時には「摂取しすぎない」ことが重要です。高用量を摂ると、嘔吐、昏睡、肺水腫を引き起こします。バター、オリーブオイル、生クリーム等のオイルの中にその香りを溶かし込む、又は摂取量が度を超えないようにあらかじめ体の中に入れる量を考慮してから使うことが大切です。例えば次のようなレシピがあります。

ローズマリーオリーブオイルはローズマリーソルトと同じくフレッシュのローズマリーが手元にない場合、或いはすぐに使いたい時にあらかじめ用意しておくローズマリーの香りの保存法の一つです。

 

 

成人の経口使用にあたって

  1. 消化不良、胃腸管の軽度のけいれんに対して症候性緩和目的で使用する。
  2. 軽度の筋肉、関節の痛み、及び軽度の末梢循環障害の緩和の補助剤として使用する。

成人、高齢者に対する経口使用量は1日に乾量で4-6gを越えないこと。

  1. ハーブティーとして:6gのローズマリーを2カップに湯に3-5分間浸したものを1日3回に分けて飲む。
  2. 抽出物:リキュールワイン(20gのハーブを1Lのワインに入れて5日間いれたもの):10〜20 ml /日2〜3回又は、20 ml /日1〜2回
  3. チンク油(1:1を45%エタノールに入れたもの):2-4mlを3回/日。

( 精油は外用のみで、決して飲んではいけません。)

 

( EFSA(欧州食品安全機関、2008年3月7日付)は、口から摂るカルノソールとカルノシン酸量は、大人で平均0.04mg/kg体重/日、未就学児で平均0.11mg/kg体重/日程度と見積もっています。)

 

使用期間適応症;医薬品の使用中に症状が2週間以上続く場合は、医師または資格のある医療従事者に相談する必要があります。

 

入浴剤として

  1. 1リットルの煎じ薬/粉砕したハーブ(1:20)をお風呂の水に入れる(週2回)
  2. ハーブ50gを1Lのお湯に入れてボイルし、そのまま30分間置いたものを浴槽に入れる。12歳未満の子供への使用は推奨されていません。推奨されるバス温度は35〜38°C、10〜20分。

 

過敏症

  1. 経口使用では、胆管の閉塞、胆管炎、肝疾患、胆石、および医学的アドバイスを必要とするその他の胆道障害。
  2. 入浴剤としての使用では、大きな皮膚の怪我、開放創、急性皮膚病、高熱、重度の感染症、重度の循環障害、心不全の場合には禁忌です。

 

12歳未満の子供への使用は、十分なデータがなく医学的アドバイスが必要なため、推奨出来ません。医薬品の使用中に症状が悪化した場合は、医師または資格のある医療従事者に相談する必要があります。入浴剤としての使用する場合、高血圧の方は、温浴の状態で使用する必要があります。関節の腫れ、発赤、発熱を伴う関節の痛みがある場合は、医師の診察を受ける必要があります。

 

妊娠中および授乳中の安全性は確立されていません。妊娠中および授乳中の使用は推奨されません。

 

『家庭でのローズマリーの使用は、「香りを愉しむ」という使い方に絞るのが賢明だと言えるでしょう。』とは言っても、ローズマリーの香りを思い浮かべるとローズマリーを使った料理を取り上げない訳にはいきません。ローズマリーを直接食べるのでなければ、その香りを利用するだけであれば、それほど注意を払うことはありません。存分に活用しましょう。

 

  キッチンカウンター越しに          ラムチョップ         

 

ラムチョップはロースト前にマリネしておくとしっとりと仕上げる事が出来ます。フレッシュのローズマリー、塩、コショウ、ニンニク、オリーブオイルでマリネします。シングルリブチョップをレアで焼くには、直前まで冷蔵庫内に置き、ダブルリブチョップは、調理する前に室温で30〜40分置いてからローストします。タイムやエルブ・ド・プロヴァンスなどタイム主体のハーブや調味料に置き換えることもできます。少なくとも30分、または最大24時間マリネします。

ローズマリーを直接口にする時は、使ったローズマリーの全体量を頭に入れておくこ

とが大切です。

 

 

 

 

「ローズマリーは食べずに香りだけを愉しむようにしましょう」と言いながら3つもローズマリーの葉のレシピが続いてしまいました。危険なものはやはり美味しいのでしょうか。最後のレシピは「あなべる お菓子教室」の評判のレシピです。今回は特別に引用しました。作ってご覧になるとそのおいしさに驚かれるはずです。使うローズマリーの葉は、出来ればピンクの花をつける品種にしてください。格段に素晴らしい香りが口中に広がります。そして、どうか食べ過ぎないように気を付けてください。