幸せの計り方

グランマ～！と
外から帰って来た孫たちが
いつもとはどこか違った様子でトントンと階段を上って来ました。

そして抱えるようにして持ってきた
大きな百合の花束を私の前に差し出しました。

ピンクのリボンがついています。

そう言えば何日か前にこんなことを聞かれました。

「ねえねえグランマ、何の花が一番好き？」
「ねえねえグランマ、何色が一番好き？」

私はこんな風に答えました。

「そうねえ、お花はだいたい何でも好きだけれど
百合が好きかなあ、真っ白い百合。」

「そうねえ、いろいろな色が好きだけれど
やっぱりピンクかなあ。」

トントンと階段を上ってきた二人が
私の目の前に差し出したのは
カサブランカの花束でした。
ピンクのリボンで結ばれています。


それは、ひとつ、また一つと
大きな純白の花を開いていきました。

その度にメイおばさんは
雄蕊の頭をチョキっと切りました。
そうしないと赤い蕊（しべ）が手や服やテーブルクロスを汚すからです。

花は一つずつ開いて行きました。
そしてうっとりとするような香りで室内を埋めて行きました。


香りが邪魔にならないように
お食事の時にはこうしてテーブルの上から
窓際に移しました。


最後のひとつになるまで
きちんと開き続けてくれた百合たちは


次第にハラリ、ハラリと花びらを落とすようになり
２本の枝についた７輪の花が
ひとつずつなくなっていきました。


最後まで残った花びらも落ちてしまいました。


けれどもメイおばさん、落ちた花びらを
もったいなくて捨てられません。


花びらどころか、こんなになった枝も
捨てられません。


花と一緒にこの子たちもいなくなってしまいました。


がらんとした静かな部屋を見回しては
時々胸がキュンとして涙がこぼれそうになります。

でもその涙が
寂しい涙か、幸せな涙かは
自分でもわかりません。

大切な人、愛する人がどれだけいるかということが
幸せの計り方です。

嫌いな人、悲しんでほしい人がどれだけいるかということが
不幸の計り方です。

メイおばさんは
幸せの秤だけを使ってきました。
そしてこれからもそうするつもりです。


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