「この国のかたち」的こころ

敬愛する司馬遼太郎さんと小沢昭一さんに少しでも近づきたくて、書きなぐってます。

「Doctors」  医師達の肖像 心臓専門医2 帰宅許可 

2006年10月04日 00時16分26秒 | 人々
 警報は断続的になりました。モニターをよーく観察していると左下に大きく表示してある数字が80を下回ると警報がなるようです。
 先ほどの医師が「血液中の酸素濃度を示しています。あの数字が80を超えてくるようでしたら、病室に移ることになります。そうしたらとりあえずはご家族の方は家に帰って頂いて結構ですから。」と言われました。
 「一緒に付いていなくても良いんですか?」と聞き返してしまいました。それはそうでしょう、だってつい先ほどまで「いつ亡くなってもおかしくありません!」といわれた身です。それが今日はもう大丈夫ですといわれても俄に信じられないのも当然ではないでしょうか。
 「父は助かるのですか?」と聞いてしまいました。

 すると

 「検査をしてみないと分かりませんが、カテーテル検査の結果次第では2週間ぐらいで退院できるでしょう。」とのことでした。

 なんだか理解が頭についていかない感じでした。

 数値が安定してきました。

 父は大きな酸素マスクをしていますが呼吸も穏やかで手を握ると体温を感じるようになりました。

 「ありがとう、もう大丈夫だよ。」と酸素マスクでくぐもった声を父が掛けてきました。

 「今はだれも付き添わなくて良いんだね。お父さん大丈夫かい?」というと

 「かあさんも疲れているから、帰ってくれて良いよ。ありがとう。」

 「父さん、少し入院することになるらしいけど頑張ろうよ。」

 「まあそうなるだろうな。」

 そういって父は3階の個室に運ばれていきました。

 集中治療室のない病院ですから内科のナースセンターのすぐ北側が個室になっていて常に患者さんをモニターできるようになっています。

 僕と母はそこで父に別れを告げて家路につきました。

 午前2時でした。

 様子がおかしくなったのが午後10時ですから4時間ほど処置室にいたことになります。

 僕も母もその時になって酷く疲れている実感を持ちました。

 まあでも父は死の淵から帰還したのだと思いました。

 でもネガティブドリーマーの僕は自分の中に巣くう悪い予感を拭い去ることは出来ませんでした。

 父は死にはしない。

 でも父の瀕死の状態を傍らで経験したことは、父が当たり前のことながらやがて「死」というものを受け入れなければならない存在であることを僕に父の手の冷たさとともに認識させ、それが存外遠い未来ではないことを、叩きつけられるように実感させてくれました。

 僕はそう考えたとき、父のいない僕ら家族のことを余りにも考えていないことを痛感させられました。

 そして考えなければならないと思いました。

 しかし父にはまだ運があるとも思いました。

 あのとき隣町のかかりつけの市民病院まで行っていたら間に合わなかったかもしれません。

 その選択で僕らは間違わなかったのです。

 当直医には迷いと疲れがありました。しかし父の診断に充分の時間が割けるだけの時間的ゆとりがありました。
 入院した父によるとその日は全く救急車が着かなかったそうです。

 僕の父の前に緊急性の高い治療が入っていたら僕の父は危なかったかもしれません。

 そして同じ症状の患者さんが運び込まれたことで、当直医スタッフは自宅待機の専門医を呼び出す決意をしました。

 もし父が一人きりだったら、どういう判断だったかは想像の域を出ませんが、休日の医師を呼び出すことは、お互いが医師であるからこそ体を休めることの大事さは充分に分かっているはずですから、それ相当の遠慮があって良いはずです。

 それを敢えて呼び出したのは、患者が同じ症状で同じように死の危険があったからだと思います。

 僕は医師のヒューマニティについて多くを語るだけの資料を持ち合わせていません。ですから絶賛することも避難することも出来ないのですが、ですが警察官、弁護士、教師等の社会的に高い道徳律を持っていると見なされている、これらの職業も実は制度上から見れば、能力の資質に対して国家が認定しているだけで。本人の持っているヒューマニティについては、国家も医師会も大学の教授も誰も保障してくれてないのです。

 僕らは心臓に関して信頼を寄せることの出来る医師に出会うことが出来ました。
 これらは隣町の病院ではまず無かっただろうことです。

 後で聞いたのですが父の主治医は欠勤でした。

 そしてかなりベテランの看護師さんが世話をしてくれたことです。やることに何もかもがそつなく動いてくれてます。これも父の心の安定に役立っていたと思います。

 父と僕たちは、この日の出来事以後、父の糖尿病ではなく心臓言う新しい注目点を持たざるを得ませんでした。

 
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2 コメント

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お元気ですか? (mamachari)
2006-10-07 01:13:06
anikiさんは風邪などひいていらっしゃらないでしょうか?看病疲れで体調を崩さないように気をつけて下さいね。

父のいない僕ら家族のことを余りにも考えていないことを痛感させられました。

↑私も同じ事を考えました。今回は色々考えさせられました。
ずばり! (aniki)
2006-10-07 22:15:11
 風邪をひいてます。しかもお腹も緩いし、口内炎はできるし、耳は急に腫れちゃうしで油断してたのが丸わかりのような体調です。でも元気ですよ。ご心配頂きありがとうございます。

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