連鎖する繋ぎ手

ロボロワやらきロワ、kskロワといったパロロワでちょくちょく書いてる書き手です。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

救いの手は誰のもの

2010-05-28 21:09:05 | 自分ロワ

「……っ」

吐き気がした、体の感覚がなくなっている。
全身が震え、口の中の震えが吐き気を増長するのに感覚がないせいで嘔吐することさえできない。
汗をかいたわけでもないのに身体が冷たく、視界はぼやけ動悸が激しくなっていく。
パニック状態でペースも考えず走ったせいで過呼吸に陥ったのだ、さくらは自分の迂闊さを呪うが、そうしたところで体調が戻るわけでもない。

「んっ……はぁ……」

冷静に、冷静にと頭の中で繰り返しながら側の木にもたれかかり、できる限りゆっくりと深く呼吸を繰り返す。
数分もの間そうしていると、しびれているかのような感覚が手の先に戻ってくるのを感じ取れた。
このままでいれば体調は元に戻るだろう、ほっとし、同時に言い様のない寂しさに襲われる。

「……お兄ちゃ――」

――ダメだ!

思わず呟きかけた言葉を無理矢理閉ざす。
せっかく落ち着きかけていた呼吸が乱れてしまうが、そんなことはどうでもよかった。
お兄ちゃん、朝倉純一。
さくらが純一へ抱くその想いは儚い物となっている。
その時の事は忘れたくとも忘れられない、危うくその命を奪ってしまうところだった音夢との邂逅。
桜の魔法を制御できない今、純一のことを想ってはいけない、再び音夢の命を危険に曝すことなどあってはならない。
必死に自分の心を抑えつける、再び全身を震えが襲い、吐き気が戻るがただひたすらに耐え続ける。

「っ……か、は……!」

一層強い嘔吐感に身体をくの字に曲げて口元を押さえる。
胃を圧迫してはまずい、と考えはするが実行に移すだけの余裕はなかった。
心が落ち着かない、抑えようとすればするほどかき乱されてしまう。
涙が零れ、助けを求めるように宙へと手を伸ばす。

「――?」

その手に温かさを感じた。
優しい桜色の光がデイパックから漏れていることに気づき、言うことを聞かない身体を引きずり荷物を探る。

「……これ、お婆ちゃんの魔力に似てる?」

桜色の真珠が付けられたネックレスを取りだし、それから溢れ出ている魔力に不思議な安らぎを感じる。
そっと胸に抱くと乱れていた呼吸や吐き気が収まっていく。
ようやく悪夢のような苦しみが終わり大きく息を吐き――

「おい、そこのお前」

かけられた言葉に身を竦ませる。
視線を上げると赤いお下げの少女が鋭い目つきでさくらのことを睨みつけていた。

(ダメ……ボクに近づいちゃいけない)

三度、心が荒ぶる。
この瞬間さくらが思い浮かべたのは雀荘で出会った金髪の少女。
桜の魔法が暴発すればあの少女のように無差別に命を奪ってしまうかもしれない。

「八神はやてっていう女の子を知らねーか、こんな感じの茶色い髪で、多分車椅子に乗ってると思うんだけど」

身振り手振りを踏まえて特徴を伝えてくるが、さくらが出会ったのは金髪の少女一人。
力なく首を振って応えると、あからさまに落ち込んだ表情をされてしまう。
大切な人なんだろうな、とぼんやりとした頭で思い、大きく息を吐いて去っていく少女を見て目を閉じる。

(よかった……傷つけずに、すん、だ……)

真珠を握る力を少しだけ強め、そのまま意識を手放した。





わざわざ話しかけたのには、別に大した理由があったわけじゃない。
そうした方がはやてが早く見つかるかもしれないって思ったのと、少しだけ、似てるかもって思った。
病気なんだか呪いなんだか知らないけど、小さな身体で苦しんでる姿を見たら、自然と声をかけちまってた。

「おい、そこのお前」

何だかうざったい目でこっちを見てくる。
自分に近づくなとでも言いたげな、それでいてどこかで助けてくれと考えてる瞳。

「八神はやてっていう女の子を知らねーか、こんな感じの茶色い髪で、多分車椅子に乗ってると思うんだけど」

そんな目に少しいらついて、とりあえずこっちの要件を先に済ませる。
そこまで期待はしてなかったけど、知らないと言われるとやっぱり少しへこむ。
はやても見つからないのにこいつを助ける義理もないか、と考え直して立ち去ろうとしたんだけど……。

「……おい?」

音がして、振り向いたらこいつが倒れてた。
……いや、別に倒れたからってどうなるってわけじゃない、私ははやてを探さないといけないし。
それにこいつじゃ、助けたところですぐに誰かに殺されちまうだろう……足手まといを連れてく余裕はない。
だから、このまま無視するのが一番なんだ。

…………
………
……


「だーくそ! 今回だけだからな!」

見た目以上に軽い身体を背負い、近くの民家へと歩き出す。
ここでこいつに死なれたら、その、なんて言うか……そうだ、はやてに怒られちまう、そんなの嫌だもんな。
だから一回だけ、そう、一回だけ助けてやってもいいよな、それぐらいの寄り道、はやてなら許してくれる。

「それにしてもこいつ……変な魔力だな……」

【G-2 民家/一日目・黎明】
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式、不明支給品1~3
【状態】:健康
【思考・行動】
1:はやてを守る!
2:一回だけ、一回だけな……
3:なんだったんだあいつは……?

【芳乃さくら@D.C.】
【状態】気絶
【装備】楼観剣@東方 さくらのお守り@D.C.Ⅱ
【道具】支給品一式、不明支給品0~1
【思考・状況】
1:……
コメント (1)

少女の心は危険な誘い

2010-03-05 23:32:57 | 自分ロワ
『マリサ、魔力反応を感知しました』
「おお?」

風を切って夜空を駆けていた魔理沙はバルディッシュの声に動きを止める。
バルディッシュの指示に従い下方へ視線を移すと一台の電車が走っており、その上で何者かが対峙していることが遠目ながら確認できた。

「なんだありゃ、鉄の箱が動いてるぜ」
『電車と呼ばれる乗り物です』
「なるほど、確かに誰か乗ってるな」
『……いえ、本来は中に乗るんですが』

少々認識のズレが起きたものの、細かい部分は後回しにしておき電車の上で立つなどという非常識な真似をしている人物へと目を向ける。
距離があって詳しい状況が確認できないが、どうやら剣らしき物を持った方がもう一方を追い詰めているところらしい。
「よし、剣持ってる方が悪者だな」といきなり断定して突撃しようとする魔理沙を引き止め、もう少し近づいて状況を確認すべきだとバルディッシュは進言する。

「やれやれ、面倒だぜ」
『迂闊な動きは危険です』
「ま、そりゃそうだけどさ……お? 何だ、紅魔館の門番じゃんか、もう一人は咲夜……じゃないな、知らん奴だ」

追い詰められていた方の姿を確認した直後、その美鈴が電車から落下してしまう。
電車に残った方も中へと戻ろうとしていて、どちらを追うか少しだけ迷い、

(――っ!?)

ぞくり、と。
形容し難い悪寒を感じ取り、魔理沙は慌てて電車に目を向ける。
メイド服を着ていたはずの少女はいつの間にか白い服へと着替え、魔理沙に気付いた様子もなく電車の内部へと入ろうとしていた。
当然その視線は魔理沙のことを見ていない、ここで魔理沙がマジックミサイルを撃ったところで少女は気付かず撃ち抜かれるはず。
危険人物だと思うのならば攻撃すべきだし、美鈴と戦っていたことから安全な人間と判断するなら追いかけるべきだ。

「……バルディッシュ、門番を探すぞ」
『マリサ?』

だというのに、魔理沙は少女に対して何のアクションも起こさずに落下した美鈴を追う。
バルディッシュが疑問の声をあげるがそれには答えない。
何しろ魔理沙自身この判断に至った根拠を説明できないからだ。
こちらに気づいていないはず、その考えに何故か自信を持てなかった、迂闊に近づいたら危険だと全身の感覚が警告している。

(どうにも調子が狂うぜ……いつもなら構わず前進するところじゃないか?)

何よりもその警告に従い少女から「逃げた」自分の判断が理解できなかった。
ただの人間の身でありながら幾多もの妖怪や神と対峙してきた自分の選択とは思えないのだ。
自分の判断が自分で信じられない、奇妙な感覚に表情を歪めながら魔理沙は空を駆ける。


【C-5 上空/1日目 黎明】

【霧雨魔理沙@東方】
【装備】:バルディッシュ・アサルト(待機モード)@魔法少女リリカルなのはStS
【所持品】:支給品一式、不明支給品0~2
【状態】:健康
【思考・行動】
 0:何か変だなぁ……
 1:紫の奴、今度は何を企んでるんだ?


「……来なかったな、あの人」

C-4の駅で電車を降りたレナは空を見上げてそう呟いた。
彼女は魔理沙の存在に気づいていた、別に特別な事をしたわけではない、バルディッシュが魔力をサーチできる距離ならばレヴァンティンとて同じことができる、それだけのことだ。
見通しの悪い路地へと逃げたあの女より自分を追って来るかと思ったが、予感は外れてしまったらしい。
仕方無しに地図を広げ、どこへ向かうかを確認する。

「まずは百貨店だよね」

今いる駅からすぐ北に位置する百貨店。
向かうのに時間もかからないし、色々と役立つ物が揃っている可能性がある。
特に欲しいのはナタや包丁といった刃物類、レヴァンティンは強力だが、魔力を持たないレナではそう何度も使えない。

「その後は……うーん」

小首を傾げながら少し悩む。
地図に記されている近くの施設は施薬院、大図書館、桜公園の三つ。
どこもわざわざ寄る必要性を感じられない場所だ、施薬院なら治療用の道具が手に入るかもしれないが、素人の自分では大した物は使えない。
図書館や公園についても精々地図に書いてあるランドマークだから誰かいるかも、程度でしかないだろう。
ならば百貨店の捜索を終えたらもう一度電車で移動するか、と線路の表記を指でなぞり駅の近くの施設を見て――

「はうっ」

娼館の二文字を見て顔を赤くする。

「な、ななななんでこんな建物があるのかな、あるのかなっ!?」

この島はオヤシロ様が罪の贖罪のために用意した場所ではなかったのか、殺し合うために必要な施設とは到底思えない。
大体このような状況でこんな場所に入るような男女がいるとでも……

「はう……圭一君ならありえるかも」

むしろ他に彼が興味を持ちそうな施設が思い当たらない、とまで考えて少し自分の中の圭一像に疑問を抱く。

「……圭一君、か」

呟くと同時にその瞳が細く鋭い物へと変貌した。
先程までの少女のものとは違う、美鈴に襲いかかった時のような「狩る者」の気配が辺りの空気を侵食する。

「圭一君なら、『協力』してくれるかな……くれるかな?」

仲間たちに自分と同じ罪を被せるつもりはない。
だが、それでも協力者は欲しい、沙都子を殺した女といい、空中から自分を監視していた少女といい、まともに戦い続けるだけではとても生き残れないだろう。
殺しを手伝わせる気はない、それ以外の……怪我の手当てや情報収集などをしてくれるだけで充分だ。
何より、圭一が協力してくれるという事実がレナの心を安定させてくれる。

「圭一君、協力してくれるよね……レナは、『仲間』だもんね……?」


どこかで、猫の鳴き声が聞こえた。


【C-4 駅/1日目 黎明】
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's、ミニ八卦炉@東方
【所持品】:支給品一式×1、不明支給品0~1
【状態】:健康、 雛見沢症候群発祥中(レベルは不明)
【思考・行動】
 1:殺し合いに乗り部活メンバー(前原圭一、園崎魅音、北条沙都子、古手梨花)を最低誰か一人でも日常に返す。
 2:そして本来独りで背負うべき罪の罪滅ぼしを。
コメント (1)

全ては少女の手の中で

2009-12-01 21:06:20 | 自分ロワ
さくらが城の中に入りまず見つけたのは、女性の死体と怯えたようにへたり込む少女の姿だった。
最悪の状況を考えていなかったわけではないが、本物の死体に多少のショックを覚えつつ怯えた様子の少女に近づく。
歩み寄るさくらに少女、理緒はびくりと身を震わせた。

「あ……大丈夫だよ、ボクは君を傷つける気はない、何があったか聞かせて?」
「……は、はう~~~!」

警戒心を解いてもらえるように笑顔で手を差し伸べると、涙を浮かべて抱きつかれる。
ゆっくりと頭を撫でてあやし、落ち着いたところで再び問いかける。

「わ、私、怖くって、ここで隠れてたらあの人が来て元気づけてくれて……そしたら、突然……は、はう…………」
「ありがとう、もういいよ、怖かったんだね……」

泣きじゃくる理緒を慰めつつ、さくらは死体へと視線を移す。
初めて見る銃殺死体、思わず目を背けたくなるが、身を呈してこの少女を守った女性を放置しておくというのも気が引ける。
土葬や火葬などは流石に無理だが、せめて何かシーツのようなものでもかけてあげたい。
そう考えたところで、ようやく襲撃者はどこへ行ったのかということへ思考が回る。
隙だらけなこの状態に背筋を凍らせ、慌てて理緒の手を引き階段の陰へと滑り込む。

「もう一個だけ聞かせて、あの人を襲った人はどこに行ったの?」
「えっと、奥の扉の方に……私と同じぐらいの女の子でしたけど、変なハンマーみたいな物で突然……」
「……そっか」

自分が撲殺される姿を思い浮かべてしまい僅かに気が滅入るが少しだけ安心する、鈍器ならば銃などよりはずっと逃げきれる可能性が高いはずだ。

(あれ……?)

さくらの思考が一瞬違和感を覚えるも、その違和感の正体に気づく暇もなく奥で起こったガラスの割れる音に注意を引かれる。

「今の音は……」
「ガラス……あの女の子が逃げたのかもしれないですね」

自分にしがみ付きながらも冷静に判断する理緒を抱きしめながら、さくらは気を落ち着かせるため二、三度深呼吸をする。
飛び込んできた血の匂いに気分は悪くなってしまったが、込み上げてくる吐き気を無理やりに抑えつける。
この場所は一つの判断ミスが文字通り命取りとなりかねない、焦る状況ほど冷静に対応するべきだ。
今の音とて理緒を襲ったという少女が陽動のために出した音かもしれないし、別の人間が窓から城の中へ入ってきた音なのかもしれない。
自分だけならば多少危険でも様子を見に行くという選択肢もあった、いざとなれば桜の魔法で身を守ることも可能……だと思う。
だけれど理緒が共にいるのではそんなリスクの高い選択を選ぶわけにはいかない、何とか今ある情報だけで残るか退くかを選ばなくてはならないのだ。

(どうする……!?)
「……」

思案するさくらの姿を見上げ、理緒はゆっくりとその思考を回転させていた。
自分が殺し損ねた少女の使った不可思議な力、あのような力と真正面からぶつかるのはどう考えても得策ではないだろう。
誰かと共に行動し、ある程度人数が減るのを待った方が何かと有利になるはず。
そう考え一番最初にやってきた相手に取り入ったが、どうやらその相手としてはこれ以上ない当たりだったようだ。
自分を被害者だと信じ切り、更にはこの状況下でも感情に任せず思考を回す冷静さを持っている。
欲を言えば戦闘面でも頼れそうな相手だったならば尚よかったのだが、そこまで求めても仕方がない、最初にここに来るのが危険人物だった可能性も高かったのだから。

「あ、あの……」
「え?」
「私、竹内理緒って言います。お名前は……」
「あ、ボクは芳乃さくら、こんなところであれだけど……よろしくね」

今は、利用するための仕込みをするのみだ。





城の裏手で一人の少女が瞳に涙を溜めながら歩いていた。

「フェイトさん、エリオ君……」

家族と言うべき大切な人の名を呟き、少しでも恐怖を紛らわせようとするがそれは少女……キャロの思惑など無視して心を浸食していく。
先ほど銃声が聞こえた、ということは近くで誰かが争っているということだ、管理局員としてそんなことはすぐに止めなくてはならないはずだった。
だが、キャロに支給されたデイパックから出てきた物がその動きを恐怖という感情で縛りつけていた。

質量兵器、子供でも指一本動かすだけで人を殺せる恐ろしい武器。
それが自分に向けられたらどうなるのか、デバイスもない、自分とずっと共にいた竜もいない、愛する家族もいない、そんな状態の自分が果たして逃れられるのだろうか。

「無理だよ……フリード……!」

今の自分には何の力もない、相手の殺意を向けられたらなす術なく殺されてしまうだろう。
そう考えたら動くことができない、すぐ側で襲われているのがフェイトやエリオかもしれないというのに、駆け付けることさえできない。

「助けて、誰か……」

その直後、すぐ側のガラス窓が割られ一人の少女が飛び出してきた。
突然の遭遇に互いに向き合って硬直してしまい……先に我に返ったキャロが相手の顔に見覚えがあることに気づく。

「なのは、さん……?」
「え!?」

見知らぬ少女から自分の名前を呼ばれてなのはは目を丸くする。
キャロは以前に昔のなのは……今目の前にいるなのはを映像として見たことがあった。
だからこそ名前が自然と浮かんだのだが、現状を理解できているわけではない。
何故幼い頃のなのはが自分の前にいるのか、その答えを彼女は知らない、当然なのは自身もだ。
答えの出ない疑問からキャロは目を逸らし……気づいてしまう。
白を基点としたなのはのバリアジャケット、その色が多量の赤を占めていることに。

「え……それ、血……?」
「っ!? あ、こ、これ、違うの!」

キャロの怯えた表情を見て、なのははようやく自分の姿の異常さに気づく。
全身が文の血で塗れたこの姿はどう見ても危険人物だ、自分ならばまず近づかない。
慌てて弁護するが、多少の言葉程度で警戒心が解けるわけはない。
気だけが焦り怯えるキャロに近づこうとするが、その行動はキャロの心を追い詰めただけだった。

「こ、来ないで……ください」
「あ……」

銃口を突き付けられなのはは動きを止める。
それは構えているというよりはただ支えているだけといったようなものだが、逆にちょっとした拍子で引き金を引きかねないと感じられ、より恐怖を感じる。

「……っ」

更になのははその銃を見てつい先ほどの光景を思いだしてしまう。
胸を撃ち抜かれて倒れた女性。
ほんの一瞬で相手の命を奪う凶器、それが自分に向けられていると認識し体を硬直させる。

一方キャロの方も銃を突きつけた状態から動けない。
思わず構えてしまったが、このまま指一本動かすだけで目の前の少女は死んでしまう。

「やめ、て」

絞り出すように出たなのはの言葉に、キャロは自分が何をしているのか気づかされる。
一瞬で我に返り、慌てて銃口を下げる。
だが急に動いたのがまずかった、なのはは即座に高速移動魔法を発動させ、キャロが止める間もなく闇の中に消えてしまう。
しばらくなのはが消えた方向を見つめ、糸が切れたようにその場にへたり込む。

「私、何を……人を、殺そうと、した……?」


【F-6 城/1日目 深夜】
【芳乃さくら@D.C.Ⅱ】
【装備】:さくらのマント@D.C.
【所持品】:支給品一式、不明支給品0~2
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:理緒を守る。
 2:桜公園で魔法に関係するものがないか調べる
 3:義之を初めとした風見学園の生徒たちは必ず守る

【竹内理緒@スパイラル~推理の絆~】
【装備】:グロック17(10/17)、予備マガジン×2
【所持品】:支給品一式×2、日本刀、不明支給品1~4
【状態】:健康
【思考・行動】
 基本:清隆を生き返らせる
 1:会った者は隙を見つけて殺す
 2:しばらくはさくらに取り入り様子見
 3:他ブレードチルドレン及び鳴海歩に会った場合は……

【F-7 城/1日目 深夜】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's】
【装備】:バリアジャケット、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's
【所持品】:支給品一式、不明支給品0~2
【状態】:健康 、血まみれ、混乱
【思考・行動】
 基本:誰にも死んでほしくない
 1:少女から逃げる
 2:私のせいだ……!

【キャロル=ルシエ@魔法少女リリカルなのはStS】
【装備】:CZ CZ100(14/14) 予備マガジン×2
【所持品】:支給品一式、不明支給品0~2
【状態】:健康
【思考・行動】
 基本:???
 1:???
コメント (1)

守るために捨てた物

2009-10-26 21:29:16 | 自分ロワ
明かり一つない夜の街に少女の荒い息遣いが響いている。
ざっくりと切れた右腕から血を流しながら走り、痛みと恐怖で潤んだ瞳を凝らして何度も後ろを確認する。
どれだけ走っていたのか、疲労から足が縺れ転んでしまう、堅い地面が短いスカートからこぼれている膝を削り、その痛みに小さく呻いた。

「っ……どうしてこんなこと、魅音さん……!」





「ほんと訳分かんないよねあの人、殺し合いだなんて絶対正気じゃないって」
「そうですよね……でも、この首輪ってその、爆発……するんですよね?」
「あんなの嘘に決まって……るとは言えないよねぇ、まさか本当に殺しなんてするとは思えないけどさ……」
「もし逆らったら、私たちもあの男の人みたいに……」
「え、演技でもないこと言わないでよ由夢ちゃん! 大丈夫、きっと何とかなるって!」

かけられた明るい言葉にも、由夢の表情は沈んだままだ。
由夢にとって、この島で初めて出会えたのが園崎魅音と名乗るこの少女だったことは幸いであった。
突然の殺し合いの宣告、首を飛ばされた男、パニックになるには十分すぎる状況で、彼女の明るさは何よりも救いとなっている。

「えっと、もう一度確認するね、由夢ちゃんの知り合いは朝倉純一さん、朝倉音夢さん、桜内義之君、芳乃さくらさん、天枷美夏ちゃん、白河ななかちゃん、杉並君、と」
「はい、同姓同名とかでなければですけど……さくらさんの名前、二つ書かれてますし」
「んー、確かにありえるよねぇ、純一さんと音夢さんてもうお年寄りなんでしょ? そんな人に殺し合いなんて……あー、いや、鬼婆とかならありえるか……」
「……? でも、殺し合いだなんて私たちだって無理ですよ、いきなり人を殺せだなんて」
「……ま、それもそうだよねー」

不自然な間に由夢が疑問を感じるより先に、明るい笑みを向け言葉を続ける。

「それじゃあ私の知り合いから探していいかな? みんな揃ってるってことは多分本人だと思うんだよね」
「はい、兄さん達がどこにいるかわからないですし……えっと、魅音さんの知り合いって」
「圭ちゃんにレナ、それに梨花ちゃんだね、みんな私の事は絶対裏切らない大切な仲間だよ」
「……この、園崎詩音さんっていう方は、魅音さんと関係ないんですか?」

一字違いのよく似た名前、姉妹か何かと思うのは当然の事だ。
もしそうだとしたら早く無事を確かめたいだろう、仮に自分の姉、音姫がいたとしたらそう思う。
云わば気を使っての言葉だったのだが、相手の表情が途端に強張ったのを見て失言だったことを悟る。

「あの、魅音さん……?」
「あ、ごめん……うん、詩音は私の双子の妹だよ、だけどあいつは信用できない、私の事を目の敵にしてるんだ」
「そんな……」

敵意を剥き出しにされ僅かに怯む。
姉妹で争うという感覚がいまいち由夢にはわからない、義之への音姫の溺愛っぷりにうんざりすることはあれど、憎むようなことはなかった。

「詩音、それに沙都子も、あの二人には近づかないほうがいいよ」

忠告……命令に近い口調で告げられ、由夢は目の前の相手に恐怖を抱く。
正気じゃない、この場で命の危機に曝されているのは詩音も魅音も同じはずなのだ。
だというのに自分の妹を信じられないなど、由夢にとっては狂気に駆られているようにしか見えなかった。

「信用できない、って顔だね」
「え? そ、そんなことは……」
「いいよ無理しなくても、おかしいもんね、こんな状況でも憎み合うなんてさ」

先ほどまでのなりを潜め、自嘲気味な笑みを浮かべて由夢に近づく。
そんな様子を見て、自分の反応が彼女を傷つけてしまったかと罪悪感を感じてしまう。

「あの、魅音さん……」
「あはは、気にしないでよ由夢ちゃん」

由夢の目の前で笑顔のままデイバックに手を入れる。
目当ての物をすぐに手に取り、何が起きてるのか悟られる前に一振り。

「私たちの味方になってくれないなら、殺すだけだから」
「え……? あ、うぁ……っ!?」

切りつけられた右腕から血が飛び散る。
一瞬遅れて知覚された激痛に腕を抑えながら混乱した顔を魅音へ向けた。

「み、魅音さん!?」
「ごめんね、別に普段なら殺すまではしないんだけどさ……この状況で詩音や沙都子に味方しそうな奴は邪魔でしかない」
「待ってください、何を考えて……!」
「私や圭ちゃんのために――死ね」

冷たい、由夢が今まで見たこともないほど冷えた瞳で告げられた宣告に由夢の体は弾かれた様に動き、相手を突き飛ばして一目散に駆け出す。
一秒でも早く、一歩でも遠くへと、初めて味わう殺意から離れようとただ駆ける。


園崎魅音は危険だと、彼女が敵対しているという園崎詩音を頼るために。


【B-3 市街地/1日目 深夜】
【朝倉由夢@D.C.Ⅱ】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式×1、不明支給品1~3
【状態】:右腕に切り傷
【思考・行動】
 1:園崎魅音、前原圭一、竜宮レナを警戒
 2:風見学園の知り合い・園崎詩音を探す



由夢に突き飛ばされ、地面に叩きつけられた痛みが引いてきた頃に彼女は立ち上がった。

「さて、上手く動いてくれればありがたいんですけど」

呟きながら一つに纏めていた髪留めを外す。
ぱさりと緑の髪が広がり、先ほどまでの活動的な印象から一転、大人しそうな雰囲気へと移り変わる。
彼女、園崎『詩音』は由夢が走り去った方向をしばらく見つめ、戻ってこないことを確認してから傍の民家へと足を向けた。



――沙都子を頼む。

沙都子の兄、北条悟史からの言葉を詩音は頑なに守り続けていた。
それは詩音が悟史に抱く想いが故、そしてもう一つ、自身の罪滅ぼしのため。

詩音は沙都子を憎んでいた、叔父叔母の虐待から悟史が沙都子を庇い、必要以上にその心と体を傷つけていたからだ。
いつでも悟史は沙都子の事を気遣っていた、自分も限界に近いというのに。
……沙都子さえいなければ悟史は助かるのに、そんな考えを詩音が抱くのに長い時間は必要なかった。
それからしばらくして悟史は行方不明となり、詩音は更に沙都子への憎しみを強くする。
自分の中の憎悪を抑えきれなくなったその瞬間、悟史から最後に言われた言葉を思い出したのだ。

悟史の望みは沙都子から解放されることじゃない、自分も沙都子も共に幸せに暮らすこと。
そのことに気付いた時、彼女は絶望と後悔に襲われた。
愛していた人の望みを聞き遂げるどころか、その守ろうとした者を消そうとした、もはや限界を超えた精神の中自分に託したというのに。

「もう迷わないよ……悟史君」

着ていた服を脱ぎ捨て、デイパックに入れていた自分の服に着替える。
自分に充てられた支給品の一つに魅音の普段着……二人が入れ替わる時の変装用の服が入っていたのを見た時、詩音は自分がどう行動するべきかを決めた。
すなわち、沙都子を守ること。
悟史が帰って来た時、沙都子と会わせてあげられるように、悟史の願いをちゃんと守り続けたと言えるように。
そのためならば全てを利用する、そう――

「ごめんなさいお姉、沙都子のために……死んでください」

――かつての仲間であろうとも。


【B-3 市街地/1日目 深夜】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:ハンティングナイフ
【所持品】:支給品一式×1、魅音の普段着、不明支給品0~1
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:沙都子を守り抜く。
コメント (1)

不屈の心

2009-08-28 21:54:37 | 自分ロワ
「解析魔法も通らないか、弱ったな」

D-2に位置する旅館。
そこで金髪の少年が首輪に手をかざしながら一人思考を巡らせる。
少年、ユーノ=スクライアは自分が置かれた状況を見つめ直して頭を抑える。

「いったいどうなってるんだ、これだけの人数を連れ去るなんて……並の魔道士じゃ到底できっこない」

殺し合い、あの女はそう言っていた。
恐らく何らかの儀式なのだろう、ただ殺し合わせるのを見て楽しむなんて目的でこんな大掛かりなことをするとは思えない。
自分やなのははそれでも一般人という位置づけだ、事前の用意さえあれば連れてくるのはそこまで難しいことではない。
だがクロノやフェイトは管理局の一員、下手な真似をすればすぐに嗅ぎ付けられてしまうはず、そんなリスクを冒してまで彼らを連れてきたのには何か理由があるはずだ。

「呪術的な要素があるとすれば、それを封じてしまえばこの殺し合いの意味はなくなるはず」

死と隣り合わせという状況になのはやフェイト、それにはやてなどは怯えているに違いない。
守護騎士はむしろ命投げ出してでもはやてを守ると普段から考えているようだし、クロノはあの性格、怯えるなどありえないだろう。
自分とて死線は何度か潜っている、発掘作業には危険がつきものだ、ジュエルシード事件の時だってなのはに出会えなければあのまま死んでいた。
今まで助けてもらってきた恩を返す時が来たのだ、なのは達を守り、この殺し合いを止める。それがこの場で自分のすべきこと。

「そうなると、まずやるべきことは……」
「おい! ルール―のこと忘れんなよ!?」

背後からまるで人形のような小人が思考に割りこんでくる。
彼女の名はアギト、ユーノの支給品らしく、先ほどまでその背中には簡単な説明書きがされた紙が貼られていた、しっかり首輪までつけられている。

ユニゾンデバイス、通常のデバイスとは違いマイスターと融合し内部から補助を行う古代ベルカ式のデバイスだ。
単独で独立した行動も可能であり、融合騎と同一の魔法・魔力運用を行うことでその威力や精度は倍加する非常に高性能なものである。
ただし融合騎と融合者の適正が必要なためその使い手はほとんどいない、下手をすれば意識をデバイスに乗っ取られてしまうことさえある、闇の書事件の時のリインフォースとはやての関係が丁度それにあたるだろう。

「大丈夫だよ、君のマイスターもきっと助けてみせるから」
「あ……いや、ルールーは私のマイスターってわけじゃ……ま、まあ忘れてないんなら私だって協力してやるよ」

少し寂しげに呟き、視線を外しながら言葉を続ける。

「旦那がいれば……」

消え入りそうな声で零れた言葉をユーノは聞き逃さない。
「旦那」と呼ばれる人物が彼女のマイスターなのだろう、ルールー……ルーテシアはその人物の知人といったところか。
アギトがあまり素性を語ってくれないのもあり、断片的にしかその人物像を描けないがルーテシアが悪い人間だとは思っていない。
アギトは多少荒っぽい気性ではあるが良識のある方だと思う、少なくともこのような殺し合いの場に置いて無差別に襲いかからない程度には。
そして彼女がルーテシアを心配する気持ちに嘘は感じられない、あの表情を演技で作れるとしたら逆に関心してしまう。

「ルーテシアが行きそうな場所って思い浮かばない?」

地図を広げながら尋ねてみるが、しばらく間を開けて返ってきた答えはノー。
それは仕方のないことだろう、自分とてなのはやフェイトがどこに向かうかなど分かりはしない。
だが逆ならばどうか? なのは達が自分がどこに向かうと予想する?

「なら、最初は大図書館を目指そう、川を飛び越えればここからそれほど離れてないし」
「そこに誰かいそうなのか?」
「うん、『僕』がいる」

は? と首を傾げるアギトを肩に乗せ、ユーノは荷物を纏めて旅館を出る。
この殺し合いを止めるにしても一人では限界がある、攻撃魔法が不得意な自分だけでは誰かに襲われた場合身を守るのにも限界がある。
誰か……できればクロノやなのはと合流したいところだ、この首輪についても対策を考えなければならない。

「それにしても、お前随分と冷静だよな……」
「まあ、危険なのには慣れてるから」

苦笑しながら答え、それでもこんな異常事態の中落ち着いて思考を巡らすことのできる自分に少しだけ感心する。

(誰かを守る、その想いだけで、こんなにも強い気持ちになれるんだね、なのは……)

【D-2 温泉旅館/1日目 深夜】
【ユーノ=スクライア@魔法少女リリカルなのはA's】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式×1、アギト@魔法少女リリカルなのはStS、不明支給品0~2
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:殺し合いを止める
 2:なのは、フェイト、はやて、ルーテシアの捜索
コメント (1)

意思を繋ぎとめるもの

2009-07-30 23:41:23 | 自分ロワ
「あっれ~? おっかしいなぁ、また同じ場所に戻ってきちゃったよ」

緑色のポニーテールを揺らし、一人の少女が一本の竹を見て頭を抱えていた。

E-3の竹林、そのエリアを園崎魅音はすでに何十分もぐるぐると回り続けている。
目印にハンカチを巻いておいた竹を見上げ、コンパスを取り出して頭を捻る。
方角を指し示すための道具は、中の磁石をカラカラと回し続けていてその役目を果たしていない。
思わずため息を吐く、ただでさえ状況がわからないというのに、いつまでもこの竹の中に埋もれていては何も始まらない。

「もー、壊れてる磁石なんて渡さないでよねー。やる気あるのかなー」

実のところ、コンパスが壊れているわけではない。
この竹林は幻想郷に存在する迷いの竹林に酷似している。
一度迷い込めば「人を幸せにする程度の能力」を持った兎にでも出会わない限り人の身では二度と出れないといわれている竹林、その力はあらゆる方向感覚を狂わせてしまう。
しかし逆にその状況が魅音の精神を落ち着かせることにもなっていた。
殺し合いという異常な場、本来怯えるだろうし、実際初めは恐怖を感じていた。
けれども遭難するかもしれないという、彼女にとっても十分理解できる目先の危機が現れたことによりそのことを一時保留とできたのだ。

「まいったなぁ、こんなところで行き倒れなんて洒落にならないよ」

頭を掻きながらぼやくが、その声を聞く者はいない。
どこからともなく吹いてきた風が魅音の頬を撫で、ぞくりと身を震わせる。
竹藪に遮られ月明かりは地表までほとんど届かない、数歩先すら闇に包まれているこの場は他に理由がなくともそれだけで怖い。

「ど、どうしよ……日が昇るまで大人しくしてた方がいいかな。けど、圭ちゃん達探したいし……」

自分が作った部活の仲間たち、皆もこの殺し合いとやらに連れてこられているのならば心配だ。
とはいえ、この竹林から出られなくてはどうしようもない、一度足を止めて何か手はないか考えだす。

「長いロープか何かあれば、結んで行けたんだけどなぁ……」

デイパックを開くが、食糧や水といった基本セット以外に入っていたのは結崎ひよのという人物による自作スタンガンと可愛らしい人形が一つずつ。
スタンガンは護身用の武器としては最適だが、ここから出るのには到底役に立ちそうにない。
人形の方は何故かその首にロープが縛り付けられていて、一瞬魅音を怯ませる。
すぐさま立ち直り、そのロープを解いてみるが50cm程度では魅音の望む用途には到底足りない。
この状況を打開できる物は見つからず、溜息を吐きながら人形をぐにぐにと弄り気を紛らわせてみる。

「……人形、か」

ふと思い出したのは、ほんの数日前の事。
親戚のおもちゃ屋で行ったゲーム大会の商品として、一体の人形が圭一へと渡された。
女の子向けのその人形の扱いに圭一は困り果て、最終的にレナへと手渡されることとなる。
……その時魅音は、その人形が欲しいとは一言も言えなかった。

「はぁ……馬鹿みたい、この状況で何考えてるんだろ私」

今はそんなことを思い出している場合ではない。
そう思いながら、何故かその人形をしまう気になれずぎゅっと抱きしめる。

「圭ちゃん、大丈夫だよね……レナも、沙都子も、梨花ちゃんも、詩音も……」

自分が言うのも何だが、みんな子供とは思えないほど度胸が据わっているし、頭も回る。
例え大の大人に襲われようとも逃げ延びるだろう、それだけの確信を持てる。
ただ心配なのは、逆にその仲間達が誰かを殺したりしないか、ということ。
勿論あんな女の言うとおり殺し合う人が自分たちの中にいるとは思わない、だけど正当防衛として勢いあまって殺してしまうという可能性は十分ありえるだろう。
もしそうなった場合、詩音は……正直わからないが、圭一や沙都子などは心に大きな傷を作ってしまうだろう。

「そんなこと、絶対させない」

歯を強く食いしばり、虚空へと向かってはっきりと宣言する。
仲間達は絶対に守る、それが自分の、園崎魅音の勤めだ。
人形をデイパックの中へと戻し、今度は慎重に一歩一歩深く踏み込みながら歩いて行く。
一歩進む毎に振りかえり自分の足跡とその方向を確認、時間はかかるがこれで確実に一方向へと進めるはずだ。

「待っててよね、圭ちゃん、レナ……」

力強い呟きと共に拳を握る。

その拳に込められた力はとても、


そう、とても……



弱々しい物だった。


【E-3 竹林/1日目 深夜】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式×1、ひよの特製スタンガン@スパイラル~推理の絆~、蓬莱人形@東方
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:竹林から脱出
 2:部活の仲間達を守る
コメント

夢が出会う時

2009-05-01 21:44:51 | 自分ロワ
走る。
暗闇に包まれた森の中を、俺はただ走り続ける。
どこに向かっているかだとか、どこに向かえばいいのかなんてわかりやしない。
ただ、とにかくがむしゃらに動いていないと頭がどうにかなりそうだった。

「さくらさん、由夢、ななか……美夏……!」

人が死んだ。
首が吹き飛んで、血がだらだらと流れ出て、一瞬にして命が消えていった。
殺し合いだとか、死んだ人間を甦らせるだとか、杉並のドッキリだっていうなら早くネタばらしをしてほしい、こんな状態が長く続いたら心が持たない。
なんだってこんなことになるんだよ、みんなが美夏の卒業式をやってくれて、あいつは、あいつは……っ!

ただ走り続けるにも限界がある、俺は疲れ果てて傍の木にもたれかかるように座り込んで頭を抱えた。
ありえない、人が死ぬだなんて、自分には関係ないことだと、TVの中のことだとずっと思ってた。
それが気づいたら殺し合えときた、由夢を、さくらさんを、美夏を殺さないと生き残れないと。

「ふざけんな! そんなこと、できるわけないだろう……!」

思わず吐き捨ててしまい、慌てて口を塞ぐ。
そっと、本当に軽く自分の首元に触れ「それ」が何の反応も示さないことを確認して深く息を吐いた。
首輪……ほとんど首との隙間がないというのに、思ってたより息苦しくはないが、だからといってこんなものがあって不快感を感じないわけがない。
迂闊なことを言って、あの女の機嫌を損ねてしまったらいつこれを爆発させられてもおかしくない、それを考えただけで頭がおかしくなりそうだ。
殺し合いなんて、誰も進んでやろうなんて思うわけがないだろう、だけど、この首輪がある以上俺達の命はあの女に掴まれたまま、言うことを聞かざるを得ない。
それでも、俺は嫌だ、美夏達を殺すなんて、そこまでして生き延びたいなんて思わない。思ってたまるか。
だけどどうしたらいい? さっきも言った通り俺達の命は今やあの女の気分一つで消えてしまう。

「杉並なら、何か思いつくかな……」

言って、自分に嫌気がさした。
あいつだって、あいつでさえ俺達と同じ状態なんだ、それなのに頼り切ってどうする。
確かに杉並だったら俺なんかじゃ思いつかないようなアイデアが浮かんでいるかもしれない、その可能性はある。
だけど、あいつは魔法もしらない一般人であることに変わりない。こんな状況で普段通りの自分を保てってほうが無理だ。
頼ってるだけじゃダメだ……俺だって魔法使いなんだ、できることは、きっとあるはず。
そうだ、とにかく今は動くしかない、俺にできるのなんて、それぐらい――

「うわっ……!?」

突然の音に思わず声をあげる。
これ……なんだ? 銃声って奴か……!?
映画とかで聞く、パン、パン、なんて音じゃない、もっと音が連続的に響いてる……マシンガンとか、そんな武器なのか!?
ようやく動き出そうとしていた体が震えて止まってしまう。冗談じゃない、そんなものに対抗できるわけがないだろう。
俺のデイパックに入っていた武器は所謂改造エアガンって奴だ、説明書によれば頭に5,6発も撃てば十分殺すことはできるなんて、恐ろしいことが書いてあった。
差があるにもほどがある、そりゃ俺がマシンガンなんて渡されても怖くて使う気になれないけど、エアガンなんかで太刀打ちできるわけがないだろう、何を考えてるんだあの女は!
その銃声は十秒以上かけてようやく収まった、それだけの間撃たれた相手がどうなったのか……想像したくもない。

「逃げ、ないと……」

もし狙われたら殺される。
そう分かってるっていうのに、足が動いてくれない。
震えてる暇があるなら一歩でも遠くに逃げないといけないんだ、そう頭で何度繰り返しても、俺の体は震えて固まったまま。

「ちく、しょう……!」

怖かった。
次の瞬間にも、そこの暗がりから銃を持った人間が俺を狙ってくるんじゃないかと考えてしまい竦み上がって動けない。

「―――さん……」
「え……?」

屈強な男が現れると思っていた俺は、聞こえてきた女の子の声に間の抜けた声を上げてしまった。
――いや、待て、そもそも今のは……!

「兄さん、どこぉ……!」
「由夢!?」

声の聞こえた方向へと走り出す。体の硬直は嘘のように消え去っていた。
さっきの銃声の主のことは頭に残っていない、思いだしたらまた動けなくなってしまいそうだ。
幸い声はすぐ近くから聞こえた、疲れ果てている体が悲鳴を上げる間もなく人影を見つけ、そちらへと歩み寄る。

「ゆ、め――!?」
「っ!?」

月明かりに照らされたその人がこちらを向き、同時に俺は動きを止めた。

「あ、あなた……誰……?」

由夢じゃ、ない。
とても似ている、制服も風見学園付属の物だし、何より空気が、纏っている雰囲気が由夢とそっくりだった。
だけど由夢じゃない、けれど俺はこの人を知っている。
正確には、直接会ったわけではないが……間違いなく、あの人だと自信を持って言える。

だって、何度も見せてもらったのだ。
さくらさんや純一さんに、『二人が学生だった時』のアルバムを。

「えと、あの、私……訳がわからなくって、突然大きな音がして、それで……」

間違いない、この人は――

「朝倉、音夢さん……?」

『50年前』の、由夢のお婆ちゃん……!


【F-5 森/1日目 深夜】

【桜井義之@D.C.Ⅱ】
【装備】:改造エアガン(10/10)@スパイラル~推理の絆~
【所持品】:支給品一式、予備マガジン×4、不明支給品0~2
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:どうして、音夢さんが……!?
 2:美夏達を探す、殺し合いなんてしたくはない

【朝倉音夢@D.C.】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品1~3
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:兄さん……どこ?
コメント (1)

揺らぎ

2009-03-15 15:30:16 | 自分ロワ
A-7、灯台のすぐ傍に一人の女性が立っていた。
雷のような金色の髪が、風になびいて夜天の空を舞う。

「……殺し合い、か」

その女性、フェイト=T=ハラオウンは小さく呟いた。
殺し合い、そんなもの、誰がすき好んでやるものか。
そう考える、そう考え、考え……本当にそれでいいのかと、心のどこかから問いかけられる。
死者の復活、昔失った母の命を蘇らせられるチャンスをふいにするのか。

「何を考えてるんだ、私は……!」

母を、プレシアを生き返らせてどうする。
そのために仲間達を殺さなくてはならないのでは、考えるまでもないだろう。
そうだ、こんなことを強要する犯罪者の言うことなどを聞くわけがない。聞いていいわけがないのだ。
自分は管理局員として、こんな殺し合いを止めないと……

――でも、もしもなのはやエリオ達が死んだら?

動き出そうとした足が止まる。
体が震えているのが自分でもわかった。
考えたくない、そんなこと、想像ができない。

もしも……もしもだ。
あの死者を一人だけ生き返らせるという言葉……その生き返らせるという方法に回数制限がなかったとしたら?
それなら、あの女性を倒しさえすればこの殺し合いの中で死んだ人達も生き返らせることができるのではないだろうか。
だとすれば……この島からの脱出を考えるより、あの女性を倒す方法を考えた方が現実的なのでは?
当然監視はされているだろう、そこで表面上は言うとおりにすれば向こうも油断するはず。
最後の一人となり、もう一度対面した瞬間に制圧すれば……

灯台の壁へと頭をぶつける。
自分は、先ほどからいったいどうしたというのだ。
後で生き返らせるから一度殺してしまう? そんなのまともな人間の思考ではない。
大体死者を蘇らせるなど、命というものへの冒涜だ、そもそもロストロギアでもそんな事が出来るとは思えない。

だけど、胸が痛む。
なのはが、エリオが、キャロが死んでしまう最悪の未来が浮かび、自分の意思とは関係なくその身が震えてしまう。

「やっと、やっとわかったよ、母さん……」

……自分はなのはやはやて達とは違う。
この心は、とても弱い、すぐに揺らぎ、傷ができる。
その傷を癒してくれる存在は傍にいない、故に小さな傷は、広がり続けていく。

「『手段』を見つけてしまうと、心はこんなにも簡単に揺らいで行くんだね……」

【A-7 灯台/1日目 深夜】
【フェイト=T=ハラオウン@魔法少女リリカルなのはStS】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式×1、不明支給品1~3
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:人を、生き返らせる……
コメント (1)

想いは届かず、すれ違う

2009-03-08 03:55:39 | 自分ロワ
「マッハキャリバー! なのはさん! ティア! ……ダメ、か」

青髪の少女が仲間達の名前を叫ぶ。
時空管理局機動六課所属、スターズ3・スバル=ナカジマ。
一通り念話が通じないかを試すが、それは無駄に終わり改めて現状の把握に努める。

「怪我が治ってる……あの人の魔法なの?」

スカリエッティによる管理局地上本部襲撃。
その際の戦闘において、スバルは動くことさえままならないほどのダメージを受けたはずだ。
スバルの体は普通とは違う、戦闘機人と呼ばれる、生体ベースの人造人間である。
そんな彼女の怪我を短時間でここまで治すには、管理局以上の知識が必要だ。

「もしかして、スカリエッティの一味……?」

しかし、そうだとしてもわざわざ殺し合いをさせる意味がわからない。
機動六課や縁の深い人間が大勢連れてこられてはいるが、逆にそれ以外の職員の名前がまったくないのも不可解だ。
しばらく考え込むが、答えは出ない。
それにここでじっとしているわけにもいかない、殺し合いとやらが行われているなら止めなくては。

荷物を探るが、相棒であるマッハキャリバーは見つからない。
デバイスがないことが少し不安で――わずかに安心する。
地上本部襲撃時、自分は感情に任せて戦い、マッハキャリバーを大破させてしまった。
それはしこりとなってスバルの心に残っている。
デバイスを見つけたところで、自分に使う資格があるのだろうか……
悩むスバルの耳に、少女の泣き声が届く。





「えーと、えーと……」

少女の泣き声をバックミュージックに、美鈴はひたすら思考を巡らせている。
何故こんな場所にいるのか、この少女は、自分は、紅魔館はいったいどうなったのか。
だがその答えは出ない。出るわけがない。先ほどまで寝ていたのだから。

「そうか、異変!?」

結局答えどころか問を見出した時点で自分を納得させ、別の方向へと頭を切り替える。
今がどうなっているのかわからないが、ともかくこの少女を放っておくわけにはいかないだろう。
もしかしたらこの子が何か異変について知っているかもしれない。
黒白や紅白辺りはもう動いているのだろうか? だとすれば数日も放っておけば元に戻ると思われる。

「でも、数日いなくなったことになるのかぁ……咲夜さん、怒るだろうなぁ……」

想像し、背筋を凍らせる。
いけない、せめて元に戻る努力はしていたというポーズだけでも取らなくては命が危険だ。
情報を求めて少女を見る。
ずっと泣き続けていて流石に疲れたか、ある程度落ち着いたようだが、今だに嗚咽を漏らしている。
その姿を見て、僅かに胸を痛めながら近づくが、その途端手にしていたナイフを向けられてしまう。

「来ないでぇ……!」
「お、落ち着いて? 別に傷つけたりしないから」

精一杯の笑顔を向けるが、少女から敵意は消えない。
これでは話を聞くどころの話ではない、困り果て、どうしたものかと辺りを見回したところで落ちていたデイパックを見つける。
少女の持ち物だろうかと考え、それを拾い上げて再度近づこうとするが、少女がそっくりのデイパックをすでに持っていることに気づいた。

「えっと……これ、あなたの?」

何故だか嫌な予感を感じつつ問いかける。
その問いかけに少女は一瞬きょとんとした表情になるも、すぐに怯えた様子に戻り首を振る。
当てがはずれた美鈴の方は、どうしたものかと考えながら空いている手でデイパックの中身を探っていた。
見た目よりずっと積載量が多いその中を適当に探っていると、こつんと硬いものが指に当たる。

「……何かしら、これ?」

そう呟きながら取り出されたのは一丁のリボルバー。
少女がそれを見て顔を青くするが、幸いなのか不幸なのか、美鈴にはそれが何であるか見当がつかない。
初めて見る拳銃に首を捻り、好奇心のままに銃口を覗き込んで別の意味で少女を怯えさせるが、結局どういう物なのか見当がつかず保留としておく。
他にも色々と入っているようだが、この暗闇の中あまり無警戒にしているわけにもいかない。どんな妖怪が少女を狙ってくるかわかったものではない。

「ねぇ、ここにいると危ないし、私と一緒に行こう?」
「っ……」

先ほどより一歩踏み込んで話しかけるが、その分離れられる。
少し傷つきながら、もう力づくで連れていってしまおうか等と考え始めた瞬間だった。

「ウイング、ロード!」
「へっ?」

間の抜けた声を上げる美鈴へと、蒼い魔力の道が迫りくる。
咄嗟に後ろへと飛んで回避するが、その道の上を走りながらやってきた青髪の少女――スバルは美鈴を逃すまいと拳を振るう。

「……っ!」

美鈴もそれを黙って受けはしない。
弾幕ごっこではかなり低いレベルの力しか持たないものの、接近戦に限っていえば武術を極めた彼女の実力は幻想郷の中でもトップクラスである。
スバルの拳を受け流し、背後の建造物へと激突させる。
見るからに強固そうなその建物の壁はスバルの拳によってあっさりと崩れてしまい、美鈴は自分の考えが正しいと確信する。

(この力、人間じゃない……やっぱり、あの子を狙ってきた妖怪か!)
「く、悪いけどあの子は渡さないわ!」

地面に降り立ちスバルへと叫ぶ。
別にそこまでして守るほど少女への義理はないが、食べられるのを分っておきながら見捨てるのも寝ざめが悪い。
それに幻想郷のスペルカードルールを無視するというのも感心できない。


銃をしまい構える美鈴を睨みつけながら、スバルも拳を構え攻めの姿勢を取る。

(間違いない、この人はあの子を殺そうとしてる……止めなくちゃ!)

泣き叫ぶ少女に銃を持って近づく女、咄嗟に攻撃をしかけてしまったが、それは間違ってはいなかったようだ。
先ほどの動きから格闘戦はかなりの実力があるようだ、銃を手放したのも余程素手での戦いに自信があるのだろう。
だが、こちらとて格闘には自信がある。
母と姉の二人に教え込まれたシューティングアーツはそう簡単に負けはしない。

「破っ!」
「たぁぁぁぁぁ!!」





B-6に存在する駅。
そこに停車している電車の中で竜宮レナは一枚の紙をじっと見つめていた。

「このダイヤ、不自然すぎる……」

それは電車の時刻表を書き写したものだ。
レナが疑問に感じているのは、その時刻が一日中、24時間一定だということ。
常識的に考え、そんなことはありえるはずがない。
客足の流れを考え、時間ごとに電車の本数は変化させていくはず。

「この島は、この殺し合いのためだけに用意されたってことなんだね」

殺し合い。オヤシロ様による自分への贖罪の場。
自分のせいで巻き込まれた仲間達は守らなくてはならない、例え一人だけしか帰れないとしても、その一人だけでもこの身に代えてでも守りぬく。

……少し、胸が痛んだ。
もしも最後、部活メンバーだけが生き残った場合の時のことを考えてしまったせいだ。
生き残れるのは一人だけ、だけど自分の仲間は自身を除いても5人。
最悪四人、殺さなくてはならない。
圭一や魅音達にその手を汚しては欲しくない、その時は自分が手をかけるしかないだろう。
仕方がない……自分のせいで皆は巻き込まれてしまった、ならば汚れ役はすでに汚れきっている自分が勤めるべきだ。
だけど、それでも仲間を殺すなど考えたくはなかった。

浮かんでしまったその瞬間の光景を追いだすように目を伏せ、それと同時に振動と共に電車が走り出す。
数瞬間をおいて、閉じたばかりの瞳を開けて外を見る。
仲間達を見逃すわけにはいかない、今この瞬間にも危険な目にあっているかもしれないのだ。





「がっ……!」

美鈴の双打掌がスバルの腹部に突き刺さる。
衝撃に耐えきれず吹き飛ばされ、すぐさま立ち上がろうとするが体に力が入らず身じろぎするのみに終わる。

(この人、強い……!)

自分のシューティングアーツが通用しない。
様々な武術が組み合わされた動きによってこちらの攻撃は流され、どんな体勢からでも反撃が飛んでくる。
接近戦では負けはしない、とまで自惚れるつもりはなかったが、これほどの差を見せつけられるのは流石につらい。
だが、だからこそここで退くわけにはいかない。
ここでこの女を逃せばあの少女も、それ以外の大勢の人たちが犠牲になってしまう。

「もうわかったでしょう? 諦めなさい」

女が近づいてくる。
銃はまだ出していない、動けない相手にも最後まで気を抜かないとは、場慣れもしているようだ。
自分よりもあらゆる面で上回っている。
このままどう足掻こうとも勝てるとは思えない、それほど実力差を感じてしまった。

「……っ」

それでも。
例え勝ち目がないとしても。

「諦める……もんかぁ!」

ここで黙っているわけには――いかない!

「まだ動ける!?」
「一撃、必倒!」

力を振り絞って立ち上がり、驚愕の表情になる美鈴へと向けて拳を構える。
拳の先へ魔力が集束し、咄嗟に受けの体勢を取った美鈴は顔を歪めた。
――自称「普通の魔法使い」が使うスペルに似た魔力の流れ、生身では受け切れない。
しかしこの体勢からでは回避は不可能、『気を操る程度の能力』によって自身の前面に気を集中させて少しでもダメージを軽減させようと試みる。

「ディバイン……バス――っ!?」

魔力を解き放とうとした瞬間、二人の足場が不自然に振動し同時に視線を向ける。
二人の足元にあったのは線路。スバルは辛うじて状況を理解したが、電車というものを知らない美鈴にはわからない。
線路の周りに柵など用意されていなかった、すぐさまスバルが線路の脇へと飛び、美鈴がきょとんとした直後、そこへ電車が走りこんで来た。

「ええええええっ!?」
「危ない!」

見たこともない巨大な無機物が高速で迫ってくる状態に思わず悲鳴をあげる。
スバルの警告が耳に届くが、それが自分に向けられているものでないことに気づき振り返り――自分の後方で震えている少女の姿が目に飛び込む。
自分達が戦っている隙に逃げようとしたのだろう、だが迫りくる恐怖に竦み上がってしまっている。

「マッハキャリ……! しまっ――」
「くっ!」

思わず傍にいない相棒の名を呼んでしまったスバルを尻目に、美鈴は少女へと駆け出し抱きかかえる。
すでに真後ろに電車は迫っている、少女を抱く腕に力を込め――飛び上がった。

「―――――っ!」

身体スレスレの部分を通過していくのを感じながら、何とか車体の上へと着地する。
途端にかかる風圧に慌てて重心を低くして耐える。
みるみる内にスバルの姿が遠ざかっていくのを見て一息吐き……背後の物音に振りかえる。

「沙都子ちゃん……?」

車内から上がってきた白い服と帽子の少女――レナが美鈴の腕に抱かれている少女の名を呟く。
この少女の知り合いらしい、美鈴は胸を撫で下ろそうとするが、そこで少女――沙都子が気絶しているのに気づいた。

「沙都子、ちゃん……」

まずい。
この状況は非常に危険な予感がする。

「よくも……」

早く弁明を……ああ、何か無駄なんだろうなぁ、聞く気なさそうだし。

「よくも沙都子ちゃんを! レヴァンティン、セットアップ!」

レナが懐からミニ八卦炉とレヴァンティンを取り出し叫ぶ。

――竜宮レナにデバイスを行使できるほどの魔力は存在しない。
それを可能としたのがミニ八卦炉、霧雨魔理沙の持ち物であるマジックアイテムだ。
魔力を溜め込み一気に放出する道具、元より溜め込まれていた魔力によって、魔力を持たないレナはレヴァンティンを起動させることに成功した。

レヴァンティンが待機モードから炎の魔剣となりレナの右手に収まる。
同時にレナの衣服がバリアジャケットへと変化し、美鈴はその光景に目を見開いた。

「……何でメイド服?」
「……あ、あれ?」

バリアジャケットは本人の思い描いたイメージによりその姿を変化させる。
レナが仲間達と行っていた部活……
その部活の最後に行われる罰ゲームによるコスプレ、それがイメージに強く残っていたのだろう。

「そっか……そうだよね。忘れられるはず、ないもんね」

小さく呟き――戻れない日々に胸を痛めながら、レナはレヴァンティンを振りかざし美鈴へと斬りかかる。
その攻撃を沙都子を抱えたまま半身をずらして回避する。炎を纏った剣は電車の屋根を焼き切り、その光景に冷や汗を垂らす。
この狭い車上では逃げ場がない、その上沙都子を抱えているせいでこちらは両手が使えない。
焦りながら後ずさるが、すぐに車両は途切れ追い詰められてしまう。

「待っててね沙都子ちゃん、すぐに、仇を取ってあげるから」
「ちょ、何だか物凄い誤解してませんか……?」

一応語りかけてはみるが、答えは返ってこない。
いっそ沙都子を渡してしまえばいいのだろうが、この風圧で気絶した人間がどうなるかなど考えるまでもない。

「くっ、背水の陣か!」
「一人で陣とは言わないんじゃないかな? ……ないかな?」

どこかずれた会話をしながら、レナは再びレヴァンティンを振り上げる。
美鈴の視線がその動きを追いかけ――顔面に衝撃が走った。

……レナ・フラッシュ・インパクト。
竜宮レナが放つパンチは、常人では攻撃されたことにすら気づかぬ間に倒されるほどの速度を誇る。
その拳は速度のみを追求され、威力自体はそこまで高いものではない。
だが――この揺れる車上でそんな高速パンチを受ければどうなるか。
例え妖怪だろうが、衝撃に耐えきれず落下する。

「な――っ」
「レヴァンティン! 飛竜一閃!」

沙都子を抱えたまま落ちた美鈴めがけレナは魔力砲撃を放つ。
当然ながらこの状態でかわすことなどできるはずがない。
動くことができない美鈴目掛け、魔力の奔流が迫り――

「光符「華光玉」!」

咄嗟にスペルを発動させ、魔力砲撃と弾幕を激突させる。
そのまま衝撃に煽られ地面に叩きつけられるが、すぐに立ち上がり沙都子を抱き直して街中へと逃げ出していく。


「……レヴァンティン、モードリリース」

美鈴を見送り、レナはバリアジャケットを解除する。
自分自身に魔力はない、できるだけ節約するべきだ。
そのまま車内へと戻り、胸を抑える。

「沙都子ちゃん……!」

甘かった。
ここが危険な場だと理解しながらも、心のどこかでみんなは無事だと思い込もうとしていた。
その結果がこれだ、あっという間に仲間の一人は殺され、自分はその仇すら取れないでいる。

「ダメだ、俯いてる場合じゃない……絶対に、守らなくちゃ……!」

落ち着け、元より救えるのは一人だけなのだ。
今すぐにでも沙都子を殺したあの女を追いかけたいが、圭一たちを探さなくてはいけない、目先の事に囚われてる間にみんなが殺されたら……自分は、壊れてしまう。

「守るから、みんなは絶対、守ってみせるから……」





「お、追ってこないわよね……?」

見たこともない建造物の合間を駆け抜ける。
酷い目にあった、今だに全身が痛む。
この沙都子という少女自体に怪我がないのが不幸中の幸いか。

「それにしても……」

流石におかしい。
異変にしたって何故こうもスペルカードルールが無視されるのか。
あのルールは言わば幻想郷における基礎だ、それを無視する妖怪がほこほこ出てきてはたまったものではない。
いや、この際それはどうでもいいだろう。
今最も知りたいこと、それは……

「紅魔館はどっちなのー!?」


【C-4 市街地/1日目 深夜】
【紅美鈴@東方】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品1~3
【状態】:全身にダメージ(小)
【思考・行動】
 1:いったい何が……

【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:スティンガー@魔法少女リリカルなのはStS
【所持品】:支給品一式、不明支給品1~2、スティンガー×4@魔法少女リリカルなのはStS
【状態】:健康、気絶、L3
【思考・行動】
 1:……

【C-4 駅/1日目 深夜】
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's、ミニ八卦炉@東方
【所持品】:支給品一式×1、不明支給品0~1
【状態】:健康、 雛見沢症候群発祥中(レベルは不明)
【思考・行動】
 1:殺し合いに乗り部活メンバー(前原圭一、園崎魅音、北条沙都子、古手梨花)を最低誰か一人でも日常に返す。
 2:そして本来独りで背負うべき罪の罪滅ぼしを。

【C-5 市街地/1日目 深夜】
【スバル=ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStS】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式×1、不明支給品1~3
【状態】:疲労(小)、腹部にダメージ(小)
【思考・行動】
 1:殺し合いを止める
 2:六課の仲間を探す

※電車について
次の駅までの走行時間は5分。駅での停車時間は10分。
B-6→C-4→B-2→C-4→E-3→C-4→B-6……と移動していく。
コメント (2)

運命が示す先

2009-02-27 01:22:48 | 自分ロワ


兄貴は――鳴海清隆は神と呼ばれる人間だった。
何をやろうとすべてが上手くいき、神に愛された天才だと人々を惹きつけた。
俺はそんな兄貴が大嫌いで、同時に、心の底から憧れていたんだ。
兄貴がやることに間違いはなかった。
仮にその途中にどれだけの「犠牲の羊」が倒れていようとも、最終的に兄貴は正しいと言われる位置に立ち続ける。
全ての運命は兄貴の味方をしている。
銃で撃たれようと、ナイフで切りかかられようと、兄貴は無傷で生き延びた。
そんな兄貴が……

「あんなあっさりと死ぬなんて……信じられるか?」
「う……美夏としては、どちらかというとそのお兄さんの話の方が信じられないが……」

違いない。と学生服を着た青年が自嘲気味に笑う。
そのどこか寂しげな表情を見ながら、牛柄の変わったキャップを被っている少女、天枷美夏はどう言葉をかけるべきか困り果てていた。



風見学園のみんなが自分のために行ってくれた、天枷美夏一人の卒業式。
自分は義之と共にその帰路についていたはずだ。
たとえ数日もたたないうちに永い眠りにつくことになるとしても、これ以上なく幸せな時間だった。
だというのに、その数瞬後、まさに悪夢とでも言うべき場所へと招かれることとなった。
混乱する頭を抑えながらデイパックの中身を確認してみれば、義之や由夢といった自分ととても親しい関係の人間も何人か連れて来られている。
その事実に肩を震わせ、考えが纏まるのも待てず我武者羅に走り出そうとし――近くに他の人間がいることに気づく。
緊張しながら様子を窺うが、どうにも様子がおかしい。
怯えているのとは違う、全身から力が抜け、覇気がない。
軽く押しただけでバラバラに壊れてしまいそうな、そんな危うさを感じ……美夏は警戒しながらもその青年へ声をかけた。

「お、おい……大丈夫か?」

まあ、大丈夫に見えないから声をかけたのだが。
そんな割とどうでもいいことを考えつつ青年の様子を窺う。
青年はゆっくりとした動きで美夏の方を向き、しばらく美夏のことを見ていたかと思うと、唐突に言葉を紡ぎ出す。
彼は淡々と、何かにとりつかれたように語りだした。

彼――鳴海歩が知っている、鳴海清隆に関することを。





「ストラーダ、セットアップ」

桃色のポニーテールの女性がそう呟くと同時に、その身が騎士甲冑に包まれる。

「主はやて……」

彼女の名はシグナム。
夜天の書の主である八神はやての守護騎士の一人、烈火の将。
そして今は管理局機動六課、ライトニング2として主の手助けをしている。
槍型アームドデバイス、ストラーダを手に想うのはやはり主はやてのこと。

「主の身だけは、何としても……守り抜く」

それこそが守護騎士の役目、生きる目的。
そのためならば、例え何を犠牲にしようとも……

「だが、それだけではいけない」

今の主は、はやては今までの主とは違う。
シグナム達を心から大切に想い、夜天の書のプログラムにすぎない自分たちを家族だと言ってくれた。
ただ守るだけではダメなのだ。あの笑顔をも守らなくては。

「主はやての未来を血で汚したくない……か、その通りだ、ヴィータ」

昔の自分だったのなら。
もしかしたら主の命を最優先とし、自分のみが汚れ役となって主以外の人間を殺したかもしれない。
だが、今は違う。
主の笑顔は自分たちだけでは守れない、かけがえのない友、仲間、部下……どれか一つでも欠けたのなら、主の心は悲しみに満ちるだろう。
ならば救うのみだ。
主の望みが他者を救うということならば、自分はその望みを叶えるだけ。

「行くぞ、ストラーダ」
『了解』





「お前……これからどうするんだ?」
「どうするって?」
「いや、今ってその……殺し合い、とか言ってただろう……?」

殺し合い。
改めて口にすることで、美夏は自分が震えていることに気づいた。
義之や由夢、学園長がそんなことをするとはとても思えない。
だが、他の人はどうかわからない……他人を殺してでも生き延びたいと思う、その思考はそれほど不思議なことではないのではないか?
そうだ、例えば……

「お兄さんを、生き返らせたいとか……」

言いながら、まだどこかで現実を見れてないのかもしれない、と思う。
こんなことを言って、歩が自分に銃か何かを向けてきたら、それに抵抗する術はない。

「……ねーさんの事を考えたら、そうするべきなのかもしれないけどな」
「っ……」
「だが、そんなこと不可能だ。人が生き返るわけはないし、そもそも俺がラザフォード達と殺し合いをして勝てる可能性なんてありはしない」

全てを諦めきった顔で、歩はデイパックから一丁の拳銃を取り出す。
美夏が表情を強張らせているのには構わず、その銃口を、

自らのこめかみへと、当てた。

「お、い……?」
「兄貴なら、こんな状況でも何とかしてみせたんだろうけどな……」

美夏が止める間もなく、歩は引き金を――

『sonic move』

閃光が走り、次の瞬間には歩の手から拳銃は消失していた。
二人とも何が起こったのかわからず、慌てて周囲を見渡し、少し離れた場所に一人の女の姿を確認する。
その女――シグナムはわずかに顔を歪めながら、ストラーダと歩が持っていたはずの拳銃を手に二人へと歩み寄る。

「事情がわからないが、止めさせてもらった……この場で死者が出ることを、主は望まないだろうからな」
「え、と……あ! そ、そうだぞ! いきなり何をするんだお前は!?」
「……」

歩は唖然とした表情でシグナムを見ていたが、俯き口を開く。

「……この殺し合いとやらは、よくできているよ」
「何?」
「どうやってここに連れてこられたか、俺はまったくわからない。それは例え逃げたところで、いつまた同じように捕まるかわからないってことだ。
 その上この首輪、いつでも遠隔操作で爆破できるというのなら、逃げる手立てを探そうと動くことさえできない……逃げようとしていると感づかれた時点で殺される。
 これは推測でしかないが、恐らくここに連れて来られている人は知り合い……それも縁の深い人間が少なからずいるはずだ。
 そうなると、自分は死んでもいいがこの人だけは守りたい、そのために殺す、なんて思う奴も出てくるだろうな。
 本当に、見事に作られた箱庭だよ」

饒舌に語る歩に、シグナムと美夏は呆気にとられる。
この殺し合いにただ絶望しているだけかと思っていたが、自分たち以上に今の状況を理解できている。

「それだけ回る頭脳を持ちながら、抗おうとはしないのか」
「……今言っただろう、付け入る隙なんざどこにもない。生き残ろうたって、あんたみたいな奴に勝てるとはとても思えない」
「だ、だからといって自殺なんて!」
「苦しむよりマシさ」

一向に覇気を見せない歩に対し、シグナムは軽く溜息を吐いて銃を返した。

「お、おい?」
「悪いが、私は主やテスタロッサ達ほど優しくない……守らなくてはならない主がいる以上、あまりここに止まっているわけにはいかない」

立ち去ろうとするシグナムに美夏は泣きそうな顔になる。
「見捨てるのか!?」とでも言われているようで少し躊躇するが、彼女にとってはやてより優先するものなどありはしない。
そのまま黙って去ろうとするが、ふと、一つあることを思い出す。

「……そうだ、どちらか鳴海歩という人を知らないか? 渡す物がある」
「え?」
「鳴海歩なら俺だが……いったい、何だ?」

唐突に出てきた自分の名前に反応する。
顔すら知らなかった、初対面の人間が何を渡すというのか。
戸惑う歩に、シグナムはデイパックから一枚の封筒を取り出し手渡した。

「手紙……?」
「私の荷物に入っていた、鳴海清隆という人物からだそうだ」
「兄貴から!?」

シグナムの言葉に歩は慌てて中を確認する。
ライトをつけるのは少し躊躇ったようだが、この暗闇では仕方ない。
その内容が気になり、美夏もこっそり手紙を見ようとするが、その前に歩が手紙をぐしゃりと握りつぶしてしまう。

「わわっ、す、すまん!」

思わず謝る美夏には構わず、歩はデイパックを手にして歩きだす。

「あのクソ兄貴……!」
「あ、おい!?」

咄嗟に呼びかけるが、振り返りすらしない。
そのまま去っていこうとする歩を見ながら、美夏はシグナムへと視線を向ける。

「な、なあ、いったい何が書かれていたんだ? 内容は読んでいないのか?」
「いや、読んだ……だが、死のうとしている考えを改めるほどの内容では……」

彼女も歩の変化に困惑しているようだ。
歩は一時の衝動のみで自殺を図った訳ではない。
論理的に考え、隙の一つも見出すことができなかった上での絶望によるものだ。
それを言葉だけで止めることなど、そう簡単なことではない。

「むむ……鳴海にとって、それだけお兄さんの存在が大きいってことなのか?」
「なるほど、主はやての言葉と考えれば納得がいく」
「……美夏にはよくわからない世界だ……」

自分にとっての義之や杏のような存在なのだろうか?
いや、それでもあんな簡単に立ち直る自信はない。
美夏が悩んでいる間にもシグナムは歩が向かった方向へと歩みだそうとしていた。

「お、おい!? 貴様も行くのか!?」
「自ら死へ向かおうとするのならともかく、そうでないのなら危うい者を放っておくわけにもいかない。お前はどうする?」
「み、美夏も行く! 義之や由夢を守らないと!」

美夏の返事に満足気に笑みを浮かべ、再び歩を進める。
背後から美夏が駆け寄ってくる気配を感じながら、シグナムは思考を巡らせる。
歩にはああ言ったが、この殺し合いを破壊する方法など自分とて思い浮かばない。

主はやてのために。

その想いだけが先にあったものの、ただ守るだけでは何も解決しない。
殺し合いを止め、首輪をはずし、再び同じように拉致されないようあの女を討つ。
……これがどれだけ途方も無いことか、シグナムにも理解できている。
それでもあえてその道を行こうとするのは、やはりはやてのためだ。

だが、もしも。

もしもはやての身に何かあれば。

(その時は、テスタロッサ、モンディアル……お前たちは、私を軽蔑するだろうな……)

自分は、仲間でさえも手にかけるだろう。


【E-6 森/一日目・深夜】
【シグナム@魔法少女リリカルなのはStS】
【状態】健康
【装備】ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStS
【道具】支給品一式、不明支給品0~1
【思考・状況】
1:はやてを守る
2:歩に同行。首輪の解除及び殺し合いの打開方法の捜索
3:はやてに何かあった場合は――


【天枷美夏@D.C.Ⅱ】
【状態】健康、バナナミン残り時間約23時間
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考・状況】
1:シグナム・歩に同行
2:風見学園の人間を探したい


歩はひたすらに足を動かす。
どこを目指しているのか……それは歩自身にさえわからない。

(だが、兄貴が何か企んでるのなら、必ず何かにぶち当たるはずだ)

手紙、清隆からのメッセージは短く、単純なものだった。

『すまん歩。頼むぞ』

「ねーさんの事をほっといて、言うことはそれだけかよ……!」

普通に考えるのならば、この手紙は殺し合いと無関係のものだろう。
鳴海清隆は殺し合いが始まるより前に捕らわれの身となり、殺されているのだから。
だが、歩にはそうと思えなかった。
清隆はこの場において、自分に何かをさせようとしている。
論理的に考えてそれはありえない、それでも歩はそう考える。
このメッセージが開始後すぐに自分の手に渡ったことさえ、清隆の思い通りなのだと、彼は信じて疑わない。
現実逃避をしているわけではない。彼にとって鳴海清隆という男はその程度のこと、鼻歌まじりにやってのけてもおかしくない人物なのだ。

「兄貴がそう望むなら、俺がどう足掻いたところで逃げられやしない」

少年は螺旋の運命に囚われている。
その運命に幾度も抗い破れ、抵抗する力も気力も奪われてしまった。
故に彼は抵抗しない。例え向かい来るのが死であろうとも、存在しない道を自ら作り出そうとはしない。
故に彼は抵抗しない。誰かが道を指し示せば、彼はその道をただ歩む。

その先に何が待つのか、彼には関係がない。


【E-6 森/一日目・深夜】
【鳴海歩@スパイラル~推理の絆~】
【状態】健康
【装備】スタームルガーP85(15/15)
【道具】支給品一式、清隆の手紙、予備マガジン×2、不明支給品0~2
【思考・状況】
1:清隆が自分に何を頼んだのかを知る。
コメント (2)