超人日記・作文

日々の随筆の合間に、短歌や俳句も登場します。

<span itemprop="headline">ジョルジュ・ジョルジェスクの優雅なベト全</span>

2012-10-10 17:46:09 | 無題

インターネットで見て気になっていたジョルジュ・ジョルジェスク指揮エネスコ・フィルハーモニア管弦楽団のベートーヴェン交響曲全集を聞く。1961年、1962年の録音だがきれいなステレオ録音。
いささか調子外れのおっとりとしたテンポ設定には牧歌的なものを感じるが、七番や田園は溌剌としたテンポ設定。一番や二番はおっとりで、白黒映画の音響に合う。ジョルジェスクを掛けて部屋をうろうろしていると、何とも言えないゆったりとした贅沢な雰囲気を醸し出してとてもいい。
珈琲時光と小津に合う。流れが前時代的なのに弦楽器が凛として冴えている。これがなければ、このオケは成り立たないだろう。木管もひなびたいい感じ。触れ書きに田園はカルロス・クライバーだと書いてあったが私にはそんなモダンな印象はなかった。
全体的に音が瑞々しい。シューリヒトよりも私ならこちらに手が伸びてしまう。シューリヒト・パリ管のベートーヴェンをステレオで残せなかったEMIは不覚である。長くレコードファンの嘆きの素となろう。ジョルジェスクは息の深い四番もいいが、楷書のように点や画を正確に置く運命も今となっては貴重だ。ここでも弦楽器のトゥッティが光る。
第九の掛け合いも息を飲む美しさだ。これも楷書の美である。一音一音をゆるがせにしない名人の匠の技が聞ける。第九の音が立体的で瑞々しい。覇気がある。フルトヴェングラーと同時期の指揮者としては幸運な録音を残せた。バイロイトの第九もいいが薄靄がある。
ジョルジュ・ジョルジェスクの録音の特徴は洗濯されたような響きの明快な楷書の美である。フルトヴェングラーをこの音質で聞けたら申し分ないだろう。だが、我々に残されたのはルーマニアの隠れた巨匠の演奏美の粋を集めたこの録音である。
最初の一番の冒頭の調子外れのおっとり感にはいささかこけてしまい、これはダメかと一瞬思った。だが聞いてゆくうちにその瑞々しい凛とした音響に引き込まれ、いい時間を過ごせたと素直に思えるのである。張りつめた毎日の合間にジョルジュ・ジョルジェスクを聞く休日があっていい。最近大量廉価盤にばかり目が向いてしまうが、正規の値段で聞く優雅なベト全も、貴重な音盤体験である。

ルーマニアオーケストラの楷書の美洗練された音よみがえる



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