今年の夏の甲子園、
延長試合が多かったことと、印象に残る逆転試合が多数ありました。
大入り満員が連続で出たほどの観衆で盛り上がった今年の大会を、
試合ごとに振り返ってみましょう。
題して、独断と偏見に基づく、≪印象に残った試合ベスト5≫。
まずは、選には漏れてしまったけどいい試合だった~というのが、以下の3試合です。
聖光学院 5×-4 日南学園 (延長10回)
如水館 8-4 東大阪大柏原 (延長10回)
日大三 11-8 開星
初日から優勝候補の聖光学院を追い詰めた日南学園の果敢な攻撃と、それでも負けなかった候補・聖光のナイン、特にエース歳内に拍手を送ります。日南のリリーフエース・村田くんが1球1球に帽子を飛ばしながら気合いで投げ込む姿、良かったです。しかしながら、汚かったねえ、彼の帽子!
東大阪大柏原は、いい戦いをしましたね。9回2死満塁で、押せ押せのサヨナラ絶好機でしたが、その時に如水館のエース・浜田君が気合いで投げ込んだ内角の速球。忘れられません。
日大三と開星は、開星のほとばしる気迫が日大三をあわてさせた、面白い試合でした。着流し監督・野々村さんは本当にこれで最後なの?物議をかもした発言以外甲子園で注目を浴びることのなかった監督さんですが、異色の存在でしたね。
ということで、次は惜しくもベスト5入りを逃した2試合です。
普段の大会ならばベスト3に入ってもおかしくないような劇的な試合でしたが、今年は感動の試合が多すぎた~。
【次点①】 帝京 8-7 花巻東
【次点②】 八幡商 5-3 帝京
まずひとつめは、帝京と花巻東の対戦。花巻東のほとばしる気迫と鋭い攻撃。見事な試合っぷりで、帝京は完全にタジタジとなっていました。9回1死1塁から果敢に仕掛けられた盗塁。「成功か!」と思われた次の瞬間、捕手の送球を邪魔したとして、バッターが守備妨害でアウトになりランナーは一塁に戻されるという、【前代未聞の稚拙なジャッジ】で花巻東の反撃機はしぼんでしまいました。VTRで見ると、全く守備妨害になるようなプレーではありませんでしたけどね。
『ありえね~』ジャッジには、猛省を即したいとともに、『試合をつかさどる黒子』であることを忘れた審判には、辟易しました。(どのカテゴリーでもこういう”目立ちたがり・ジャッジしたがり”の審判っていますよね。)
ものすごいいい試合の、ものすごい盛り上がりに水を差された花巻東ナイン、捲土重来を期して来年戻ってきてくださいね。待っています。
そしてもう一つは、同じ帝京が今度は悲劇に見舞われた2回戦です。『突発的に起きた不運』なのか『ベテラン監督の采配ミス』なのか。外野では試合後かしましく議論が沸き起こっていましたが、とにもかくにも八幡商の最終回の大反撃は見事としか言いようがなかったですね。逆転満塁アーチの遠藤くん。ライト打ちであそこまで持っていくとは、恐れ入りました。普段あまり逆転で勝利を飾ることのない滋賀県勢として、『ど~じゃ~』という叫びが聞こえたかのようでした。
ということで長くなりましたが、ここからがベスト5です。
【第5位】 2回戦 智弁和歌山 8×-7 白樺学園 (延長10回)
第5位は、V候補の智弁和歌山に果敢に挑んでいった白樺学園の戦いぶりと、それを最後の最後ではねのけた”背中からにじみ出る闘魂”をまたも見せた智弁和歌山の対決です。
この試合、終盤を迎えるまでは、地力に勝る智弁和歌山の快勝ペースで進んでいて、淡々とした気分でワタシもテレビに目を向けていましたが、7回に入って試合の様相が一変しましたね。主砲・小林の信じられない満塁アーチで試合が振り出しに戻って、それからは”勝利の女神”はあっちに行ったりこっちに来たり。勝ち越した白樺学園が守りきるかと思いきや、智弁和歌山は途中出場のキャプテンが意地の同点打を放つ・・・・・・・・・・。9回裏は1死で3連打の智弁和歌山がサヨナラ寸前まで迫るも、白樺のエース川越が素晴らしい強気の攻めでサヨナラを許さず、直後の10回表には風に流されたヒットで白樺が勝ち越し。しかし『これで決まるわけがない』と思っていたワタシの予感通り、智弁和歌山の根性はまたも最後に白樺を飲み込み・・・・・と、8-7という『野球で最高に面白い』と言われるスコア以上に、どっちに転ぶかわからないこの対決を、最後まで楽しみました。
それにしても、白樺学園の最後までの粘りには、感嘆しました。新しい北海道野球を見せてもらった感じでしたね。
【第4位】 2回戦 関西 3×-2 九州国際大付 (延長12回)
この試合もまた、白熱した好ゲームでした。
特に現地観戦だったので、後半の一投一打には歓声やら溜息やら、いろいろなものがその都度球場を支配し、本当に面白い試合でした。
印象に残ったのは、とにかく関西の応援団の中でひときわ異彩を放っていた野球部のサブメンバーたち。最初から最後まで、3時間余りにわたって何しろチョ~元気。結局その元気がサヨナラ勝ちを呼び込んだのではないかと、ワタシは思っています。優勝候補の九州国際大付属は、最後の最後まで結局自分たちのペースで野球がさせてもらえませんでしたね。本当に力のあるチームだったので、残念な結果でした。しかし九国の猛打線を向こうに回して最後まで自分のスイングをさせず内角に強気の直球を投げ込んだ関西のエース・水原のピッチングは圧巻でした。夏に向けてようやく手にした背番号1の誇りが、彼のピッチングを支えていたのでしょう。
『ビビらず向かっていけ』強打線に対する投手によく言われる言葉ですが、この日の水原のピッチングはまさにその通り。強気の姿勢、光っていました。
【第3位】 3回戦 智弁学園 9-4 横浜
やっぱりこの試合を挙げないわけにはいきません。
あ然、ボー然。歓喜と落胆と。雄叫びを挙げる選手と地面にうずくまる選手。
何しろ見事なまでのコントラストを描く、大会史に残るであろう9回2死からの逆転劇でした。
力がないと言われながらきっちりとここまで勝ち上がってきた横浜は、この日の試合でも8回までは名将・渡辺監督が描いたシナリオを忠実に実行し、勝利をその手に手繰り寄せていました。
9回も反撃の目が出てくるとサッとこの夏の【守護神】相馬を投入。神奈川県大会からずっとこのチームを見続けてきたワタシにとっては、このリレーは全く意外でもなんでもなく、むしろ『渡辺監督、勝ちに入ったな』というぐらいの意識しかありませんでした。むろん、横浜の勝ちを疑うことは全くありませんでした。その勝利のシナリオは、1点返されてもまだ疑うことなく実行されているように感じましたが、場面が【夏の甲子園】だったことが、渡辺監督の誤算でしたね。『観客が異様な熱気になり、その熱気に乗せられてゾーンに入ったような選手が、思いもよらない力を発揮する』のが、夏の甲子園。春の甲子園では、絶対に起こり得ない光景です。
『何かが起きる』と思ったときはもう遅い。横浜はその波にのまれ、完膚なきまでに叩きのめされました。時間にしてわずか10分あまり。恐ろしいほど、『甲子園の魔物』が牙をむいた瞬間でしたね。
智弁は、最後の最後で超強力打線の看板が火を噴きました。その迫力、並じゃありませんでしたね。『天理がいなかったからかったと言われたくない』これが智弁ナインの思いでしたが、こんなド迫力の逆転劇、天理だってちょっとやそっとじゃできやしませんよ。見事としか言いようがありません。
しかしその智辯も、次の試合で信じられない9回逆転負け。
全く甲子園の女神ってやつあ、気まぐれなもんですなあ。
【第2位】 1回戦 如水館 3×-2 関商工 (延長13回)
2位は、如水館vs関商工。目の前で繰り広げられたこの素晴らしい戦い。やっぱり忘れることはできません。
実はこの日の甲子園観戦、ワタシは『4試合はきついので、第3試合で組まれているこの対戦をスルーして、喫茶店で休むか』なんて計画を立てていました。この日は第4試合に東大阪大柏原vs至学館という注目のカードが組まれていたので、これに向けて英気を養おうとしたのです。
しかし、虫の知らせというかなんというか・・・・・・、なんとなく『この試合はいい試合になりそうだ』という予感が走り、急きょ球場に居座ることを決断し、観戦しました。ワタシの長年の座右の銘でもある『甲子園は地味だと言われた対戦が一番面白くなるのさ』というのも、チラッと頭をかすめました。
ということで観戦となったこの試合。序盤は両チーム2点ずつ取り合って、互角のまま後半へ。そこから如水館が押し始めますが、そのこれでもかという押しをこらえ続けたのが、関商工のまさに【魂の守備】。ディフェンスとはこういうことを言うんだな、と意識させられた、好プレーに次ぐ好プレー。関商工がなぜ、秋の東海大会優勝校の大垣日大と、春の東海大会優勝の大垣商を相次いで破って甲子園に来たのかが、よくわかるような試合でした。
そして初出場を待ちわびてアルプスに詰めかけた4,000人に迫らんかという大観衆に、マウンドで集まった選手たちが人差し指を掲げて気合いを入れるしぐさ。それに答える大観衆・・・・・・・ワタシは鳥肌が立つような思いをして、試合を見つめていました。
【好ゲーム】というだけでは語れない、魂のこもったゲームでした。
この試合を見逃していたら、ワタシはず~っと後悔し続けただろうというぐらいの、素晴らしいゲームでした。
【第1位】 3回戦 如水館 3×-2 能代商 (延長12回)
やっぱりこの試合を第1位に挙げます。
ワタシがこの試合を見たのは、我が家のテレビの前。そして、何度叫び声をあげたことでしょうか。
第2位の関商工に【魂の野球】を見たワタシ。でも、同じ大会でそれ以上の【魂の野球】を見られるなんて、思いもしませんでした。
能代商の『あきらめない心』には、心ふるわせてもらいました。そして保坂投手の投球。『ピッチャーはこう投げればいいんだよ』という見本のような、いい投球でした。でも、最後の最後にミスが出て敗れてしまう・・・・・。ここがまた、甲子園のいいところ。東北の悲劇のヒーローがまたも、甲子園に爽やかな風を届けてくれました。
三沢の太田、磐城の田村、秋田経法大付の中川、仙台育英の大越・・・・・・。
幾多の東北の好投手たちが、涙にくれたあのマウンドで、今年もまた、秋田からやってきた『スーパー技巧派投手』が涙を呑んでしまいました。
しかし、彼らのあきらめない野球は、甲子園に吹いた一陣の風だったことは間違いありません。優勝した日大三の信じられない打球の速さを持った超大型打戦とは全く対極にある、『しぶとく、こつこつと…』を地で行く好チーム。こういうチームが出てきてくれてこそ、甲子園も盛り上がろうというものです。
9回の『ありえない』センターオーバーのヒットで2塁走者の生還を許さなかった中継プレー、そして10回のこれまたサヨナラを防いだライトの渾身のバックホーム。どれもが、すぐに頭に浮かんできます。
今年の甲子園で最も輝いたチーム、優勝の日大三とともに大会を彩ったチーム。それが能代商で、その能代商の最高の戦いが、この試合でした。
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