こういう催しの案内状が来てもたいがいはスルーしてしまうのだが、今回、意を決して大阪まで参加したのには理由がある。
高野山という摩訶不思議な領域に飛び込んだ以上、自分がここにいるべきか引くべきかを判断する必要があるからだ。
どういう人間が集まっていて、どのような方向へ行こうとしているのか。
井の中の蛙というわけではないが、どっぷり弘法大師に心酔して、この世界になりきっている人が多いことは確かだ。
それでもこの集団の中でふつうの人が10人に1人くらいはいて、その中に私がいる・・・
ほとんど宇宙人の集まりで、個性豊かと言えば言えるが、そこはさすがに曼荼羅の世界だ。
自己紹介のときに各人の個性がはっきりしてくる。
遍路は一度だけ1週間経験したくらいではイロハのイにもなっていないと感じた。
遍路ガイドを専門にしている人もいれば、何周も回っている人もいる。
佛教大学を出て、ヨーロッパで教育分野の仕事をして、国立博物館で8年働いていたという女性には、「仏教を大学でやってからでないと大学院は無理ではないか」と言われてしまった。
それはあたっていない証拠に、活弁士(講談師)の若い男性は高卒だが大検で卒業資格をとって大学院に入ったといい、昨年ドイツ人の彼女と縁あったということで拍手。
国連のなんとかいう分野の人を連れて来年は高野山を案内するとか。
ひとり尼さんがいて、パンフレットをもらったのを見て思い出したのだが、大円院に宿泊したとき、「横笛の会」という案内があって、その本人だったのだ。
私は「横笛」というとすぐに龍笛などを連想してしまうのだが、こちらの横笛は楽器ではなく、平家物語に登場する女性の名前から来ている。
尼さんなのに遠くでも目立つピアスをしているのでびっくり。
経歴に福岡大、カンザス州の大学に交換留学、法政大学、とあったので、海外生活の名残なのだろうか。
すべてマニアックな人ばかりかというと、たまに私のような普通な人もいてほっとする。
もし私が彼らと同じようになった場合、おそらく今いる自分の社会では変人扱いされてだれも近寄って来なくなるだろう。
私には今ここにいる自分のほうが大切なので、彼らをヘンだヘンだと思い続けていたほうがよさそうだ。
あちらの世界にはまってしまわずに、現在の暮らしの中で少々のスパイスとして真言密教を味わうほうがいい。
今回、講演があって、タイトルが「高野山の梵字」についてだったので興味をもったのだが、それほどつっこんだ話はなかった。
ひとつ印象に残ったのは、奥之院の古絵図のスライドを見せて、御廟橋から結界内を入っていくと、中央に奥之院があり、左から時計回りにぐるっと反対側へ行くとお参りする堂のようなものがあり、さらに右へ回って正面に戻ってから、まっすぐ御廟橋のほうへ帰ってくる、というのがふつうの回り方であるところ、御廟橋まで行かないむかって左側のところにみろく石があるのでそこを参拝してから御廟橋へ行く。
そうすると大日如来のバンという文字の形になる、というもの。
写真からは不鮮明でわかりにくいでしょうが、なかなかこの部分はネットでも公開されていない図なので。
まずは御廟橋で一礼して奥之院(阿点を打って右横へ一直線の部分)へ進み、左から時計回り(仏教ではこの方式)に裏手にある本尊(バン字の上の点の部分にあたる)を拝み、また右手へ回って正面から御廟橋へ戻るところ、みろく石のほうへ丸く半円型に回るとバン字のふくらみの部分にあたる。
言われてみればたしかになるほど。
みろく石というのが何であるのかじつは知らない。
いつもみやげもので「みろく石」を買ってはくるのだが。
だから何回か奥之院へ参拝したけれど、みろく石を見たことはないのだ。
というわけでこれは新知識となった。
あと、御廟橋で結界を出るときに、振り返って一礼するとお大師様が見送ってくれる、という話もあった。
「余録」
大阪と東京と名古屋、それぞれ大都会なのだが、ずいぶん勝手が違う。
大阪は乗り換えで通過することがあるだけで、地上におりたのは初めてなのだが、目の前に阪急グランドビルらしいものが見えるのに出入り口がさっぱりわからない。
27階の「白楽天」という中華レストランが会場で、早々と到着してレストランの受付と少し会話したのだが、トイレの位置を聞いたところ、この階はレストランのみでトイレはありません、の一点ばり。
ないならないで、どこの階にあるか教えてくれればいいのに、とりつく島がなかったから、ビルを出て阪急デパート?の混雑した中をトイレ探し。
化粧品コーナーはすごい人で、客は中国人が多いのではないかと思った。
日本の化粧品は両側に立ち並び通り抜けるのも大変なほど混雑しているのに、つきあたって左へ曲がりトイレ入口手前にあるディオールなどの外国製化粧品のコーナーは閑散としている。
トイレはあとで聞いたところによると、28階にあったらしい。
つづくづ白楽天の受付男性は不親切だと思った。